METEORA
『LIBERTY』のメンバー全員の変装も無事に済ませ『神域』の屋敷から街道に戻っても太陽も高い昼過ぎ、屋敷で何時間も経っていたのに少ししか時間が進んでいなかったのをメンバー一同が驚き周りを見回し騒ぎ出す。
幌馬車の御者席台にBOSS/ニュクティーモスの隣で手綱を握るサンチョが、
「あの〰️!BOSS、これは……?」
他のメンバーを代表して訊ねる。
「俺の支配した空間『神域』の時の流れと外とでは違う理由……か?」
「俺の気分とか願いで変わってくるからな〰️!」
BOSSと呼ばれサンチョの右隣に座った濃褐色の瞳に口髭の濃い男がニヒルに応える。
声色まで低く落ち着いたものになったが頭を掻き困った仕草は間違いなくニュクティーモス、『神域』という単語を聞き逃さず!
「えっえっえっ?BOSS、否、貴方は……神様なの〰️!?」
サンチョが驚きの声を上げる!
「お・お・俺は神様なんかじゃねぇ〰️!」
誤解を解こうと御者台の上から立ち上がり、
「大事な家族も愛した女も救えなかった……俺は神なんかじゃねぇ〰️!!」
途中で頭を抱えて泣き出すBOSSに、
“この人……やっぱり……良い人だったんだ〰️!!”
サンチョが無意識に念話でメンバーへ伝えたのは、
“BOSS、神様なのに……俺達、悪人にも……絶望しない……神様だったんだ〰️!!”
メンバー殆どが獄中に繋がれるのが当たり前のなか、拾ってくれたBOSSに感銘して大の男達がエグエグ泣き出す。
――“えっ!俺も……【星乙女】を信じたのに……180度裏切られた!”――
嘗ての心の傷を抉られる!
声も出せずにニュクティーモスが御者台へ腰を落とす。
“な〰️んか?辛い過去を思い出させちまった!?”
何かをBOSSの態度に感じ取り、
「しみったれてんじゃね〰️!」
「さっ!BOSS、泣かないで〰️!?」
サンチョがメンバーを落ち着かせメンバー一行に先を急がせた。
街道を外れた道幅も馬車1台が辛うじて通れる【廃都】への古道を、幌馬車を真ん中に前後を騎乗したアルフレードが前、後ろをアンセルモが警戒しながら走り抜けていく。
アルフレードの“遠見の魔法”『鷹の目』を行使して【廃都】が見えると、右手を上げ幌馬車の御者を務めるサンチョへ制止の合図を送り、馬の手綱を引き脚を止めさせた。
「BOSS!此処から先は丘の上にある【廃都】の見張りにも此方を見られ兼ねない距離です!!」
向こうにも『鷹の目』の「技能保持者」を見張りに立てせている可能性も高い。
「あっ〰️!奴らもバカじゃない……筈だ?」
「作戦のオサライでもするか!」
アンセルモは妲己に見立ててもらったディシュダーシャがお気に入りで今だに、
“似合ってる〰️♡”
妲己の褒め言葉が頭に反復したままで“ソワソワ♡ドキドキ♡”していたので幌馬車へぶつかりそうになるのを馬が急に止まり鞍から落ちそうになっていた。
アルフレードの声も届いていない!
灌木の林に幌馬車を隠し潜入前のミーティングをサンチョが提案する。
今まで俯き沈黙していたBOSSが緩んだメンバーの気を引き締めんと、すくっと立ち上がったBOSS/ニュクティーモスの右手には、『LIBERTY』メンバーの全員の予想を裏切り!
【光波動剣】『月光』を握り“光刃”ではなく雷鎚が迸る!?
“Zz-jaowwww-znn-znnn!!”
空気がイオン化し焦げた異臭が漂い始め。
“Clap!Clap!Clap!”
BOSS/ニュクティーモスの体が宙へ高く浮かび上がり紫電を放ち纏い始める!!
予てから双刃刀/雷霆杵『ヴァジュラ』の柄に似通っていた形が正に……【ZEUS】の【雷霆】と化していた!?
『幻夢境』の凍える荒野で【ZEUS】の『虚ろ』=“荒御魂”『ジュピター』から『希少職能』/【捕食者】で『全知全能』の【権能】を奪い取り、手中しなから敵へ用いるのを自ら禁じていた【雷霆】を遠慮せず奮い神々から見捨てられた【廃都】へ叩き墜とす?
――“あっ・あんたまで結局……【廃都】を?”――
サンチョの魂の記憶が疼く!
堕落した人間だろうと躊躇いなく大量殺戮を行おうとしている!と絶望したメンバーへのメッセージか?左手は【廃都】の遥か南西の雲の向こう。
――真昼に輝く星?――
空に一点だけ眩い光源を指差した。
右手を大きく振りかぶり投槍を投擲する構えを取り、悪魔ダンタリオンの施した幻影が揺らぎ本来の顔をチラつかせ、左眼は紅く瞬き【雷霆】を放つ!!
“Shiny!”
その一点の光源を射貫く一閃の光条が天空を駆けぬけた。
“KAAA-BOOOOOM!!”
“ゴォゴォォォ―!”
眩い閃光が当たり一辺を照らし出した後から陰にしていた灌木も幌馬車まで揺るがし大気圏外まで届いたであろう光の矢が何物かを貫き破壊した衝撃波がメンバーの頬を撫でた。
力を使い果たし『空中浮揚』の魔法も解けたニュクティーモスが墜ちる寸前、
“シルフィ!マシニッサ!……後は頼む!!”
それだけ思考転写で呟くと一迅の風が吹きニュクティーモスの落下を和らげた。
さっきまで無言で空気であったマシニッサも幌馬車から飛び降り『俊足』を発動させニュクティーモスの落下点へ追いつき、
“グワッシィ!”
長い両腕で広げ受け止めた。
――何者かが【METEORA】、小天体を操る禁忌魔法を行使して【廃都】を灰燼に帰そうと目論んだのをニュクティーモスが【雷霆】で阻止した形となる。――
2mはある上背のマシニッサの両腕から降ろされ地に足を付くのも覚束ないニュクティーモスをすぐにサンチョとマシニッサが両腕を持って左右から支える。
「あっ!あれは人間に出来ることじゃありやせん!?」
右腕を持ち支えるサンチョが感想を述べる。
「星を落とすなんて魔術……研究した奴も聞いたことがない?」
馬に跨り追いついた『魔導師』としてアンセルモも意見を宣う。
“この地球を傷付けるような禁忌魔法を平気で行使するのは……【外なる神】側の存在だけだ!”
“現世の旧約聖書のソドムとゴモラを滅ぼした生或る者全ての支配者、『ΑにしてΩ』を僭称する唯なる存在さえ、その一度行使したのみ!”
“それだけ危険な禁忌魔法【METEORA】を……誰かがやりやがった?
口を動かす気力もないBOSS/ニュクティーモスからの思考転写で告げられた回答にメンバーが敵の巨大さに脅威した。
幌馬車の御者台に座っていたニュクティーモスもいきなり『名もなき神々の王』から体に憑依され『名もなき神々の王』の内に眠っていた【ZEUS】の残滓が命ずるままに天空神ウラノスⅡ世、時の神クロノスと決して手を結ばぬ者達が一丸となってニュクティーモスへ手を貸す。
それでも時間を稼ぐためニュクティーモスも【異能】/【加速】を発動させた。
【加速】しての一連の行動となったので『LIBERTY』のメンバー達には、BOSS/ニュクティーモスの一連の行動は【雷霆】を突然、【廃都】へ向け放ったようにしか見えなかった。
【雷霆】を起動させる魔力の補填を自らの【原力】で【魔素】を充てれば亜剌比亜半島中の【魔素】も枯渇し尽くした完全な死の大地になる!
その魔力を補う策を咄嗟にニュクティーモスの魔法鞄にあった高純度の【魔素】の塊、『一角竜』の長の先々代の魔核を『全知全能』で思い出し、【雷霆】の起動に充てなければ……どうなっていたか?
【雷霆】を起動させニュクティーモスが【廃都】へ衝突する軌道だった小天体ごと撃ち砕かなければ、至高存在『名もなき神々の王』でも……その存在を脅かされる手痛い傷痕、甚大な被害を『地球』自体に被っていた。
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