異世界ヘレナス
なぜ?殺された!?
そう、死者だからこそ、変化も魂の有り様のまま、変えても……痛みなどない!
これが、受肉した……現世でだったら、変化の際の激痛は、骨がきしみ、肉が裂けて、女性だけに分かるように言えば、出産の苦しみに匹敵する!!
その所為もあり、俺が最初に生を受けた時は、男女問わずに戦う戦士である男と無から有を生み出す女は、互いに尊敬しあう関係だった。
まあ、個体の思考転写で群れ、群体の意識共有もある程度為していた世代だったからか?
例えば、妊婦が産みの苦しみを直接、夫たる配偶者へ思考転写できる種族だったから?
バベルの塔に落雷が落ちる前の世代で一言語だっただけの話……『黄金の種族』の直系だったから余計にそうかも?
“痛み”が無くなってしまったが故に俺は、一時、ハイになりすぎていた。
「そうなんだけど……。」
と呟く、ゲーに抱きかかえれる俺は、今更、……太古の昔に西の世界でやっちまった事を後悔も反省もする気はゼロだった。
言っとくけど、イザナミ様にしても、ゲー様にしても大地母神の系列なので長身のふくよかな体系の巨神なので、確かに俺が巨犬✗✗✗✗とか、言われていても、ちょっと大きい犬レベルの対比になっている。
頭を2人の女神に撫でられながらも、俺自身も、現在になって、あいつに復讐される理由……嫌がらせで、いずれも、人生、これからという時ばかりに事故死…あいつの干渉だから殺人だったかもしれないが生死を何度も繰り返してきたのに
――大型ハドロン衝突型加速器を暴走させてまで――
……別の世界線にでも魂魄ごと飛ばす気だったのか?それとも、消滅させる気だったのか!?あいつにしても、おかしすぎた?
ここで、2人と一匹は、この疑問に暫し沈黙していると……、
「あのー、私、わかっちゃったんですけど!?」
と場違いな若い?女性の声に驚かされた。
このふた昔前の中谷“Bleep!”紀のドラマのセリフを吐く、若い?女性に向かって
「お前なーっ、その著作権って、知っていての発言かっ?」
と突っ込みを入れる前に、
“ゴツん!”
とゲー姉ちゃんに拳固を喰らわされた。
そこに、現れたのは、ゲー姉ちゃんに比べれば、いくらか貧しい胸のギリシャ風の服キトンに身を包んだ女性が、バツ悪そうに立っていた。
「ニケちゃんが、遣いに出されるのって……?」
ゲーは、
「オリンポスに何があったの?」
と俺の口を塞ぎつつ、アテナ神の使徒でもあるニケの手を取りながら、そばに侍らせた。
ここ、3女神の語らいで、西の世界で起こっている……大変革?を知らされることとなる。
西でも“封神”が強行されていた!?
三千年前に東の世界、極東まで巻き込んで、当時の神仙、半神とも神と呼ぶべき存在達の魂魄を礎として、新たな異世界の創世を強行した“封神の儀”が強行されていた!?
俺から言わせれば、
「関係なくね?」
と内心、思いながらも、続けて聞かされた
西のそれに伴う事象の変化に驚きつつも……渡辺徹なみのパチモンの関西弁で、
「なんでやねんっ!?」
とニケの肩に足元の踵を揃え90度に曲げ手の甲で突っ込みを入れてしまった。
流石に白州で会話する内容ではなく、奥の殿へ通されて、事の真相を聞かされた。
いずれの床材も木目が隼人の盾のS字ような紋様が自然にならぶ間に草を編んだ敷物があるだけの質素な空間に東西の女神が対座して下手に流石に巨犬の姿のままだと話しづらいので一番、常識的な格好なのに場違い?なスーツ姿の中年サラリーマンに戻った俺……が胡坐座でいる。
まず、ニケが言うには、俺を大型ハドロン衝突型加速器を暴走させてまで……殺した理由は、
“あなたの痕跡をこの世界から完全に消し去るため!”
その言に続けるかのように、
“バサっ!バサっ!”
と舞い降りる羽音がするやいなやイザナミ様の顎を引くだけの合図で黒く染められた巫女装束の女性がその袖先に現れた。
そそくさと近寄るやイザナミ様の耳元でいくつか囁き、納得の表情を読み取ると部屋角の闇に同化して消えた。
イザナミ様が現世へ遣いに出していた密偵らしく……その結果!?
ヘルメースは、俺の存在、そのものを【宇宙書庫】にまで手を出して、その痕跡を消しやがった!
今生の親族から、友人、知り合い全部から俺の記憶、遺品になるであろう物まで綺麗さっぱり消されていた!
昔と同じで人の記憶から、俺を消すことで存在、そのものを消しやがった!!
どおりで、ミーちゃんしか、来れなかったわけだよ!?
「私は、覚えている!忘れない!!この地で生まれ……死んでいった命を決して忘れない!! 」
とのイザナミ様の言葉に幾ばくか、救われた。
そこまでしなければならない理由は、地中海文明を崩壊させた3,600年前のティーラ島、サントリーニ火山噴火、西暦79年のポンペイの滅亡……etc
ハーデス様、大忙しの時期にその大量の死者の魂を冥府から盗み出し、異界の核を構築、その後、天災、幾多も起きた疫病、戦まで利用して……唯一神のもとに逝く筈の魂まで奪い取り、眞に神々が創世させた世界。
それが、異世界、“ヘレナス”の創造であった。
“世界は鉄の時代となり、人々が神々を信仰すらしなく、世界が荒んでいくばかりと神々が嘆くなか”
人類を見捨てて、新異世界“ヘレネス”への神々の移住計画!
そもそも、核になるべき、神を信仰する者がいなければ!
――“神”も存在できない?――
物理現象的な意味での神?
創造神≒破壊神の力を借りずに新世界の創造?
この矛盾を解くカギは、ありえた世界、平行または、並行する世界
――人類が誕生するはずだったのにしなかった並行世界――
”別の世界線の地球への神を信仰する者達の数多の魂の移住!”
とニケに説明されて、ここで疑問?
”ゲー姉様に気付かれずにそんなこと出来んの!? ”
と突っ込むとゲーこと大地母神ガイアからの回答……
「私って、さあ、アポローンに化身の大蛇を射殺されたり、神殿を奪われたり、その【権能】も……デメテルちゃんに譲っちゃったから……!」
最後は涙目になって、
「もうお祖母様は、黙っててくださいって、ヘーラーがね!……」
嫁姑の戦いって、万国?共通だったんだと変な方向から納得された。
これにイザナミ様も涙目で「わかる!わかる‼……」と言葉にならない共感が伝わってくる。
つまりは、【巨人大戦】以来……、
――“めっきり、ゲー義母ちゃんは、発言権も神力も封じられちゃってたのね!”――
と妙に納得していると、
“育ての母、なめんなよ!”
と鋭いメンチを切られた。
”ねっ?俺は悪くないんじゃない!? ”
ここでまたまた素朴な疑問?
「俺を殺す理由って……そもそも、何!?」
とツッコメば!!
ニケが不思議そうな顔をして、
「あなただけでしょっ!“神々さえ焼き焦がすもの”【紅い天狼】!!」
「あなただけが唯一、神々の魂まで破壊できる【半神】であることまで忘れちゃったの?」
“忌み名”を叫んでしまった後になって、自身が起こしてしまったモノに震えだす……ニケ。
“プチン!”と鳴るはずのない音がしたかのように空間に幻聴を響かせた!!
「ニケ、アテナ……殺す!」
と俺の意識に靄がかかり深層意識がそうさせるのか?
ふいに立ち上がり、只ならぬ雰囲気から逃げ出そうと背を向けるニケへ近寄ると馴れない正座であたふたしたままながらも立って逃げ出す前に立ち塞がるとゼロ距離からのフランケンシュタイナーを噛ましてニケの両肩に両足をかけ、頭頂部から頑丈そうな床へパイルドライバー、ニケは固い床をヤバイ音を響かせて突き破り、そのまま首まで突き刺さった。
それから起きた悲劇は、“根の国中の秘”として決して語られることのない…
ギリシャ喜劇だった。
プロレスでも男女対抗戦でもあろうべからずの極め技……“恥ずかし固め”が極まってしまった!
ニケは不幸にも意識を取り戻してしまう。
「このままでは、犯される!!イーヤー!?」
「数千年も操を守ってきたのに……こんな、ところで奪われるなんてー!?」
と泣きじゃくる。
そこへ、依頼に来る際に、この前まで生きていた俺の地元で名物の餃子をつい買い食いしてしまい……お腹に……。
“逆にあろうことか?”
下着がはだけてしまい……眼前に現れたニケの……※履いてなかったのか?……向うの女性ってさ……ブラジリアンワックスで……説明したくない!!不意に深層心理から説明を求められてもこれはモロでどうすんだよ!!と意識が無理やり戻されていた。
※当時の女性もビキニのような水着で入浴していたタイル画が古代羅馬貴族の遺跡で発見!されているのから見ても…予想外なんだけどね?
女の子が人前ではやってはいけない!
“Guff!”
と音が鳴り響き……俺の鼻腔から脳まで達し襲う異臭に手足の力も抜けて意識が刈られてしまい気を失ってしまった。
東西の大地母神二神に延々と『女の子がしては、いけないこと……男の子がしてはいけないこと』をイイ年して、こってり説教を受ける男女。
事の次第は、三千年前にさかのぼる。当時、ゼウスとヘルメースの一行をもてなしたのに不敬をはたらいたと父、母、家族、国ごと雷で焼き払われた俺は、曾祖母にあたるゲー祖母ちゃんに養子として引きとられ育てられていた。
そんなときに生理的に狼の姿になっている時期に、
「おばあちゃん、遊びに来たよ〰!」
と訪れたアテナとニケの少女、2人に犬と勘違いされて、芸を仕込まれるのは、まだ、……いいが、
「犬のTn.Tn.って、こうなんだ〰!?」
と散々、……弄ばれた!!
「この恨み!晴らさぜ、おくものか!!」
俺の深層意識の心的外傷が疼き【紅い天狼】の言葉で前々世の記憶の封印が解かれしまった!
……と、この茶番の後も……何事もなかったように俺からのツッコミも消え、スムーズに説明がすすんだ。
新世界『ヘレナス』では、オリュンポス12神達の統治のもと、永く平和が続く筈が……想像し得なかった事象が起きた。
神々から、その神という個体の存在から世界の理として、
――世界、そのものに取り込まれてしまう!――
者が出はじめた。
個体としての意識も消えはじめて、神としては、より高次元の宇宙に旅立つか?
そのまま、世界の理になっていくのも自然な流れだそうだ。
だが……、ここで問題が『虚ろ』ともよぶべき、魂の抜け殻が神の【権能】と姿を保ったままに神を演じはじめた!
ニケは、頬をひきつかせながら……、
「実は、その神ゾンビ……じゃない『虚ろ』の手先があのヘルメースなのよ」
と苦労のほどを滲ませた。
「アテナとか?その他の神々はどうなんだ!?」
と問いただすと、
「12神のほとんどは、前者の世界の理になるか?高次元の宇宙に飛び立とうとしているんだけど……!」
と言葉が詰まり、『虚ろ』たちが『ヘレナス』で暴れているんで12神の総意である『名もなき神々の王』を名乗る至高存在から、
「我たちの『虚ろ』を始末して欲しい!」
と俺に依頼に来る途中で……ヘルメースの妨害か?
「要は、心を失ったエゴのみで生きる“神ゾンビ”たちをぶっ殺せるのが……俺ってこと!?」
ニケの話では、
「望みは何でも叶えよう!」
というらしいけど……俺も12神のやつらと同じ顔、容姿の「神ゾンビ」をぶっ殺すのはやぶさかではないが……。
無言で左目から放った“紅い眼光”がその返答だった。
その周囲、一面に燃え上がった炎が、
『この世界に干渉してくるな!』とのニケへの警告!!
ゲーは、
――創造したものどうしの“争い”が永劫に続くのか?――
と瞳に写る炎を凝視しながら、俺の肩をきつくだきよせ、
「そのための英雄神がいるでしょ!」
「12神には彼がいるんだから」
と半神ながら、【巨神大戦】、【巨人大戦】と神々を勝利に導いた英雄神『ヘラクレース』の名をあげつともちらつかせた。
「彼には事情が……。」
と言葉を詰まらせながらも、ニケは、
“「ヘレナス」にも人間が生きているんです。彼ら人類には、『虚ろ』に抗う術も力もない!”
それに誰も自身を殺すことはできない!
……ましては“神”自身がその哲を破ってはいけない!と力説するが……。
俺への依頼は、ひとまず、イザナミ様が預かる体裁をとってくれた。
……と恰好つけたは良いのだが、すぐさま、床に着火した炎をゲーは砂を顕在化させ、俺は、オオカミに獣化して『火防せの権能』を全開にして……やっと鎮火できた。
「あー、あぶなかった」
とゲー姉ちゃんと両手をとって、一緒に安堵したのも、束の間。
「あんたらっ!親子して、何してくれてんの!?」
「私が火傷で死んだの知っての狼藉!!それに床に大穴まであけてくれて……!」
とイザナミ様が激怒するのも当たり前で親子、2人して正座させられて大説教を翌朝までくらうはめにあった。
ニケは、“我かんぜず!”巻き込まれまいと、どこぞかへ逃亡!
イザナミ様から「こんな物騒な奴を現世に出せるか」との御触れのもと俺は、根の国から“常世”と呼ばれる現世とあの世とのニュートラルな幽世でしばらく死者のままでいることになった。
それが、異世界、“ヘレネス”の創造であった。封神演義の封神の儀が西で強行されたら?
感想・レビュー、評価、ブクマのいずれか?いいね!でも作者のやる気に繋がりますのでよろしくお願いいたします‼️m(__)m