6話
ふたりっきりのビデオ鑑賞です。
いやいやいやいや、親友同士ですから。
幼馴染みが居間で一緒に映画観ているだけですから。
ほんとにそれだけ?
……まあ、おたのしみ下さい。
それは悲しい恋の物語……
結ばれぬ、けして叶う事のない、愛の物語。
悲劇をもたらす、そう分かっているのに、どうして出逢ってしまったの……
「ど、どぼじでえ……でばっでぢばっだ、ううう……」
「な、ティッシュ持ってきて正解だったろ?」
ミッキーに手渡された紙を当て「うん、うん」した後、
「ヴィーン」と大きく鼻をかんだ。
ミッキーのうちの居間で行ったビデオ上映会。
大恋愛ののち、寄り添い眠る様な2人の最期に、僕の涙腺は崩壊した。
さすがにミッキーは耐えたようで、しかし目を真っ赤にしている。
僕の前でも、恥ずかしいのかな?
なんか、ちょっと嬉しい。
「すっごく良かったあ」
「ああ! また今度、何か借りてこようぜ」
ミッキーもご満悦だ。
「それにしても、ミッキーが恋愛物なんて意外だね」
「ん? ああ、ちょっと勉強にだな……」
「勉強?」
変な事を言う。
僕が疑問符を顔に浮かべて見詰めると、少し照れた表情をして頬を指で掻いた。
「俺さ、演劇部に入ろうと思ってるんだ」
「えんげきぶう!?」
この男からは、まず出て来るはずのない言葉に驚いた。
「どういう事?」
ミッキーは中学の時やっていたバレーボールか。
甲子園めざす、とか言い出して野球をまた始めるのか。
部活やるなら運動系、なんて勝手に僕は思っていた。
少年野球で彼は、サードで4番だったのだ。
ミッキー、カッコ良かったなあ……
「ヤエの奴がな……」
ともかちゃんっ!?
そうだった!
今日ここへ来た目的はソコだった!
映画を観に来たんじゃない……良かったケド。
「うんうん」
「あいつは1組で、俺は3組」
「そ、そうなんだ」
やだ、今一瞬ホッとした……
「それでな、燐光寺の奴も、1組だった」
「え? そんな……」
今感じた罪悪感に、さらに不安感が交ざる。
「それでな、1組になったバレー部仲間の話によると」
「うんうん」
「2人は初日に仲良くなって、来週から一緒に演劇部に入るらしい」
「えーーーーーっ!」
どうしよう? どうなんだ? いいのか? どっちなんだ?
本当に燐光寺君が悪い奴なら、ミッキーが側にいた方がいいけど……
2人が普通に仲直りして、いや、仲良くなっていたら?
ミッキー、側で見ていられる?
その2人が恋愛に発展したら、割って入って行けるの?
「それにしてもあいつ、何で逐一俺にヤエの情報言ってくんだ?
ま、助かるけどさ」
ダメだーーーーーっ!
このニブチンじゃダメだ!
勝てない。
勝てる訳がない。
他人の方が、あんたの気持ちに気付いてんだよう。
こりゃ完全に負けたあと、本当の気持ちに気付いた……ってパターンだ。
別マでやってろ!
「ミッキー!」
「おお?」
「特訓だよ!」
「特訓?」
「うん。
演劇部に入るんなら、演技の予習をしよう」
「はあ?」
僕はミッキーがやっぱり好きだ。
ともかちゃんと付き合ってしまうのは、正直辛い。
でも蚊帳の外のまま、燐光寺君にともかちゃんを取られて、後悔や嫉妬や失望のミッキーを見たくない!
せめて、せめて三角関係位には持ち込みたい。
「折角ビデオ観たんだからさ、さっきのやってみない?」
「さっきの?」
「あのラストのところ」
「ラストって、2人面と向かって喋って……」
そこ、見詰め合って愛を囁くだろ。
「キスするんだろ」
「バカ! そこまでする訳ないだろ!」
「ああ、びっくりしたあ。そうだよな」
こっちがビックリだよ。
……僕は、それでもいいんだけど。
「当たり前だろ!
2人で愛を囁いて、キスする手前でストップ」
「えー、こっ恥ずかしいなあ」
「だから練習するんだろ!」
「ああ! そうだな、その通りだ」
よし、この特訓で形だけでも、恋愛に慣れさせよう。
まあ、僕も経験ないから自信ないけどね。
ビデオ鑑賞を口実に、彼女を部屋に連れ込み易くなるのはもう少し先の事でしょう。
この頃は家族団欒のアイテムでもありましたね。
読んでいただいて、ありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。