5話
はい。
やっと高校生のミチヨ君です。
ここから本編のはじまりみたいなもんです。
どうぞ、おたのしみ下さいませ。
僕、国立満世はどうしようもなく、平川美紀男が好きなのだ。
この事を受け入れよう。
これは仕方のない、変える事の出来ない事実……
ともかちゃんの事も、友人としては本当に好きだ。
だけど、御大層な文句を言っても、間近で2人の距離が縮まる所は見たくない。
かと言って、大好きな2人の邪魔なんかしたくないし、
そんな発想を浮かべてしまったら、僕は立ち直れないと思う。
だから初めから側にいない。
間接的になら応援するかもしれないけれど、近くにはいない。
いられない……
だから僕は嘉望東に行く!
ひとりで行く!
ミッキーの事だもの、必ず稲月に行くだろう。
あの頑固者は言い出したら、人の意見なんて聞かないんだから。
僕らはそれぞれに自分の道を選ぶんだ。
そうして直ぐに、入試は過ぎ……
僕らは高校生になったんだ。
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「ミッキー、上がるよー」
返事が無いので一言断ってから、平川家におじゃまする。
新1年生最初の日曜日。
学校の事は詳しくは分かんないだろうけど、雰囲気くらいは知りたいと遊びに来たのだ。
2階のミッキーの部屋に直行しようと思ったら、居間でガチャガチャ物音がする。
庭に車が2台とも無かったので、おいちゃんもおばちゃんもいないはず。
僕はそっと居間の扉を開いた。
「ミッキー、こっちなの?」
扉から上半身だけ入った様な状態で、中にいたミッキーと目が合った。
ミッキーはビデオテープを片手に、デッキをいじっているところだった。
半袖シャツにトランクスの格好で、小脇にティッシュを抱えていた。
「ミャッ、ミッキー! ご、ごめん、僕、何も見てない……よ」
「おおっ! ミチか! びっくりしたぞ。
ん? どうかしたのか?」
「え? どうって……
ミッキーこそ何て格好」
「ああ、今からビデオ観ようと思って用意してたんだ。
そうだ! お前も一緒に観ようぜ」
「ええええーーーっ! 僕、そんな、ええ? 嘘? 一緒にい?」
「お前どうしたんだ?」
つい僕の視線はティッシュに向かう。
「……あ、バカ! このティッシュは涙拭く為だよ!」
「え?」
「お前なに想像してんだよ!
これ、恋愛物だよ、泣けるやつ!」
「ええええーーーっ!」
「あははははははははは」
ツボにはまったのか、ミッキーは腹を抱えて笑いだした。
「嫌だあああ、恥ずかしすぎるううう」
僕は本当に顔から火が出るのかと思った。
実際、覆った手も顔も凄い熱さだった。
もうやだ!
もう帰る!
「悪りい、すまん。
な、一緒に観ようぜ」
ひとしきり笑った後、残った笑顔をそのまま僕に向けそう言った。
卑怯者め。
そんな顔されたら帰れないじゃないか。
「………いいよ」
仕方ないなあ。
一緒に観てあげる。
最近ミッキーのうちでもビデオデッキを買ったのだ。
我が家でもそろそろと考えている……と思う。
であってほしい。
入学祝いに、部屋に14インチのテレビを買ってもらった。
あれをやめて、居間にビデオ付けてって頼むべきだったか……
でも値段が倍以上なんだよなあ。
いいなあ、ミッキー。
高校違っても、ちょくちょく遊びに来ようかなあ。
……べ、別に、他意はないよ? もう、吹っ切れてんだから!
「いいだろ、ビデオ。ちょくちょく遊びに来いよ」
デッキにテープを入れ、画面を見ながらミッキーはそう言った。
「……うん。ありがと」
ほんと、僕の心を読むのだけは、昔から得意なんだから……
当時ビデオデッキは高価で、10万円以上しました。
一般家庭の手取りの給料1ヶ月分くらいかなあ。
生テープ(懐かしい響き)でも千円近くしてた。
でも、数年で一気に本体もテープも値段が下がっていきましたね。
それだけ急速に普及したんですね。
読んでいただいて、ありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。