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52話

ミチとミッキーの別行動は続きます。

合コンの途中で2人だけ抜け出す、みたいな色っぽさは皆無です。

まずは見てのお楽しみ~。


 レストラン「ロイヤル」の脇から入る道の先には、寺と寺の坂を登った所に駐車場があるくらい。

 それとは反対に、店の向かい側から延びる間道は3、400メートル程の距離を、色々な店や民家が並びながら大通りに抜ける。

 そしてこの大通りの両サイドにも様々な店舗が並び、賑やかな商店街になっていた。

 こちらの商店街の方が老舗なんかが多く、たぶん古くから栄えている通りなんだろう。

 因みにロイヤル向かいから大通りに出、左折して直ぐにあるのが「ひよこ饅頭(まんじゅう)」の本店。

 この饅頭が最近、東京でもかなり人気があるらしい。

 どうやら人気があり過ぎて、東京の名物だと勘違いした人が結構いるみたい。


「東京にはこんな可愛いお菓子があるんだよ~。

 とか言って、兄ちゃんのお嫁さんの両親が土産(みやげ)に買ってきた」


 と、友達が笑って話していた。


 そのひよこ饅頭の前を通り、真っ直ぐ500メートルも進めばイイヅカバスセンターの前に着く。

 アーケード商店街から大通りに出てバスセンターへと行くのが一般的な通り道だ。

 その大通りとアーケード、2つの道は並走しているので、繋がっているどこの横道(よこみち)を通ってもまず問題はない。

 ただひとつの小路(こみち)を除いては、だが……


 先程のロイヤル正面から大通りに続く道より、まだずっとバスセンターに近い方の脇道。

 その小さな通りに、最近出来たひとつの遊戯施設がある。

 ゲームセンター「チャンピオン」だ。


 敷地は、イイヅカ駅前の大和(やまと)よりちょっと広い。

 だけどゲームの台数はほぼ同じくらいか。

 大体の台は50円で、新作だけが100円。

 それも少し待っていれば次の新作が入って、直ぐに50円へと下げてくれる。

 まあ、この辺りのサービスは大和でも(おんな)じだ。

 しかしこの二大ゲーセン、全く違う点がある。


 それは、店内の明るさ。


 イイヅカ駅前の食品市場ビル内にある「ゲームセンター大和」は、正面入り口をくぐった一室だけがまだ部屋の形をしている。

 つきあたり、扉を外した吹き抜けの仕切りを抜けると、ビル内部はほとんど壁が無くいろんな店が雑多にひしめき合っていた。


 通路のような空間を(また)いで、薄板で魚屋と乾物屋の間を囲ったスペースに、ゲーム機が十数台並べてある。

 通路を右に数メートル行った左手にも空いたスペースがあって、そこには5、6台置いてあった。

 そんな環境だから照明も、人の賑わいで店の雰囲気も随分明るかった。


 それに対してアーケード商店街の外れにあるゲーセン「チャンピオン」はというと……


 暗い。

 とにかく照明が暗い。

 晴れた日だと、外から中の様子が全く見えない。

 そんなだから、店内の空気は大和よりずっと大人だ。


 というより、ちょっと怖い。

 なにせ客層が全く違うのだ。


 大和は小学生からサラリーマンまで幅の広い世代だが、チャンピオンはほぼヤンキー。

 僕の主観がかなり入っているが、不良しかいなかった気がする。

 僕もなつきもゲームセンターにそう興味は無いが、クラスの友達との付き合いってモノもある。


「ちゃんぽん行こうぜ」って聞き間違えた僕は、ついノコノコとついて行ってしまった。

 薄暗い店内は大変混んでいたが、賑やかさとは無縁な空間だった。

 時々下卑た笑い声が聞こえたりもしたが、これも僕のフィルターを通したからだろうか。

 そうだな、一緒に来た友達だって不良じゃないんだし……

 でも、大和より格段に柄が悪いのは事実である。



「ねえ、ダイヤ先輩には一声掛けた方がいいんじゃない?」


 アーケードからチャンピオンに向かう小路の手前でミッキーに聞いてみる。


「いや、稲高の事でこれ以上台矢さん達に迷惑をかけたくない。

 ミチにはかけて悪いけど……」


「僕は迷惑なんて思わないよ」


 思わないけど不安ではある。

 ミッキーはダイヤ先輩達を振り切った今、

稲月高校の生徒に見つかりやすい場所に移動したいと言い出した。

 わざと絡まれて、正体をばらしてから懲らしめるというのだ。


 自分が怒っている事を校内に広めれば、事態は沈静化するかもしれないと。

 もちろん、明日学校でも、仲間に呼び掛けるつもりだと。

 暴力は嫌だと言う僕に、必ず話し合いで解決するとは約束してくれたが……


(もと)を正せば原因は俺なんだ」 


 この男は不良になったくせに、正義感は昔のまんま。

 そういうミッキーは……嫌いじゃないけど。


 小声で話している僕らをチラと見ながら、時折何人かがこの間道に入って行った。

 心なしか悪人に見える。

 いや、ヤンキーだ!

 絶対あいつらヤンキーだ!

 ほんとに話し合いで決着つくの?


「よし。行くぞ」


 ミッキーは僕の手を掴むと躊躇無く、チャンピオン目指して歩き出す。


 うううう、嫌だ。

 やっぱり怖いよう。

 

 僕はぎゅううっと、ミッキーの左腕にしがみついた。

 

     



福岡筑豊はお菓子が強いみたい。

田川のチロルチョコ。

直方の餅吉(西日本ではサラダ一番も有名)

そして我が飯塚はひよこ、千鳥屋、さかえ屋の本店があります。

千鳥屋はチロリアンと千鳥饅頭が、さかえ屋はすくのかめと南蛮往来が有名です。

さかえ屋は他県では知られてないかもですが、シャトレーゼの傘下に入ってからは、関東でも南蛮往来が食べられる事もありますよ。(最近置いてないので寂しい)


読んでいただきまして、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いいたします。

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