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49話

新しい展開ですね。

生徒会からの依頼なんて、美術部も偉くなったもんだ。

どうぞ、お楽しみ下さいませ。


「おおおおお!

 いい! やっぱりいいっ!」


 ダイヤ先輩は鼻血垂れ流し叫んでいる。

 いつもなら注意しているカヨ先輩の目も、興奮をまるで隠していない。


 生徒会長山本さとじ君の依頼を引き受けた、我ら嘉東美術部。

 その翌日、ケーセン駅から歩いて10分とかからないダイヤ邸に全員集合。

 今日は日曜日だが、意図的に嘉東生を狙っている事がわかる様、制服を着る事にした。

 稲高生がちょっかい出している事実を、両校に突き付ける必要があるからだ。

 その為、なつきと僕はダイヤ先輩から制服をお借りする事になっていた。

 

 せっかくなので集合場所もここになり、先輩んちの座敷でみんなも準備をする事に。


 今日一緒に行動する、会長さとじ君は学生服(ガクラン)を。

 両先輩は可愛らしい私服と大人っぽい私服。

 そして……仕方ないというか、やっぱり僕らはセーラー服。

 前に福岡のコミケ会場から着て帰ったのは、他校のブレザータイプの学生服。

 うちの女子の制服は、いまだに古い型のセーラー服なのだ。


「やはりセーラー服だよ!

 真の女子高生はセーラー服に限るっ!」 


 まだダイヤ先輩は叫んでいる。

 その横でカヨ先輩はウンウン頷いている。

 だいたい僕ら、真には男子高校生ですからっ。


「先輩、何で僕らなんですか?

 先輩の合気道だか古武術だかでやっつければいいじゃないですか」


 僕は昨日から思っていることを素直に口にした。


「あ、うん、その、なんだ……

 顔が割れてる場合があるんでな」


「「顔?」」


 先輩は口ごもるが、なつきと僕には意味がわからない。


「台矢さんは中学の時、結構有名だったんだよ。

 ケーセンの死神姫ってな」


 教えてくれたのは以外にも、今日飛び入りで加わったもうひとりの奴だった。

 こいつは「俺はボディーガードだ」なんぞと言って無理矢理ここにくっついて来た。

 制服ではなく、地味目の上着にジーパン姿。

 マスクをして太い黒ぶち眼鏡を掛けている。

 髪の毛は染めたように真っ黒だ。

 てか染め直した。

 まるで三流ドラマで有名人がやる変装みたい。

 誰から聞いたのか、平川美紀男、ミッキーが家からずっとついて来たのだ。


「ひ、平川君っ!

 そのふたつ名だけは勘弁してくれ」


「あ、すみません、先輩」


 ダイヤ先輩に注意されて、慌ててミッキーは謝った。

 何か知らない方がいい過去がチラッと見えてしまった様な。


「ププッ、違うのよ。

 噂に尾ひれがついて独り歩きしちゃってるのよ」


「「噂?」」


 気まずそうにしてた僕らに、カヨ先輩が話してくれる。


「そう。

 ダイヤちゃんの幼馴染みが中学でヤンキーになっちゃってね。

 かなり喧嘩が強いから、変な奴がダイヤちゃんを人質にしようとしたの」


 どっかで聞いたような手口だなっ。

 筑豊の不良はどうかしているよ。


「バカな奴だ。私を彼女と勘違いしおって。

 あいつに勝てない奴が、私に(かな)う訳があるまいに」


「ほら、ダイヤちゃん、黙っていれば美少女でしょう?」


 やめろよカヨちゃん、美少女なんて。

 と、こっちもちょっと勘違いしている。


「それでね、襲って来た3人の不良を病院送りにしちゃったの」


「「「えええええーーーーっ!」」」


 全然噂なんかじゃないじゃん!


「3人相手に、さすがです」

「うん、さすが台矢さん」


 何ミッキーとさとじ君、感心してんの。


「いやあ、奴等が油断していたのだよ。

 初撃でひとり潰せば2対1だ。動揺している残……」


 ほら、調子にのってベラベラ喋りだした。 


「カヨ先輩、その後報復とか無かったんですか?」


 なつきも先日の事を気にしているのだろう。

 僕もそこがすごく知りたい。


「うん、ダイヤちゃんち金持ちでしょ。

 襲った3人にえげつない手を使ったの。

 あんたらと家族、福岡居れなくなるぞって」


 どんな手っ?


「そんな事やってたら、死神姫なんて呼ばれてんのよ」


「カヨちゃん! 脅しただけだぞっ。

 それに治療費だって出してやったんだからな」


 なんか逆に、その不良達が可哀想になってきた。


「ずいぶん前の話だけど、不良相手だと憶えてる人がいるかもでしょ?

 桂川(ケーセン)中学出身の不良かもしれないし」


 確かに、ない話じゃない。


「そうですね。仕方ないですね」


「それなんですけど、さとじ君と一緒に歩くのは僕にやらせて下さい」


 なつきが強い口調で主張してきた。


「ミチヨは先輩達と一緒に近くで見てて。

 疲れたら代わってもらうから」


 いや、なつきは絶対代わる気がない。


「じゃあ、1時間でキッチリ交替しよう。

 さとじ君が関わらなきゃいけないから、休憩挟みながら」


「そうだね……さとじ君が大変だね」


「じゃあ、さとじ君となつき君ペアで商店街デートしてもらう。

 その間、ミチヨ平川君ペアは喫茶店で待機。

 私とダイヤちゃんは少し離れて観……フォローするから」


「そっか、ペアで交替するんですね」


「そう。

 何かあったら私が呼びに来るから。

 あなた達が絡まれたら、さとじ君が来るまで時間稼いで」


 なるほど、その方が負担は軽いな。

 でもそうなると……


「先輩は大変じゃないですか?」


「ははは、気にするな。

 何も気にせず、イチャついてかまわんぞ!」

「そうよ! デートなんだからね!」


 あ、そういう事ね。

 先輩方からすれば、ご褒美みたいなもんか。

 

 少し不安があるけど、みんなと一緒なら何とかなるでしょ。

 準備を整えて、僕らはイイヅカ商店街に向かったのだった。

       

筑豊はちょっと荒くれ者ばかりだと思われそうですが、フィクションですから。

あくまで大げさに書いてますので、今ではおとなしい地域ですよ。今では。


読んでいただいて、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いいたします。

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