37話
本当なら、2人のコスプレ風景をここに入れる予定でした。
3日ほど更新せずに描いたのですが……
酷いものでした。
近いうちリベンジします。
本編だけ、お楽しみ下さい。
「ああ、それは銀河乙女伝説のアテナとデイジーね」
中山田加代子先輩が、コスプレする作品の正確なタイトルとキャラの名前を教えてくれた。
僕らが更衣室を逃げる様に飛び出すと、外でカヨ先輩は待っていてくれた。
とりあえず、近くにある客席のひとつに荷物を置く。
ここスターレイのイベントホールは、普段プロレスの興業等によく使われている。
だからなのか、会場の回りぐるりが客席になっている。
他のコスプレイヤーの荷物も近くに結構置いてあった。
「急いで作ったにしちゃあ上出来じゃない?
ダイヤちゃん、お金に物を言わせて、有り物に手を加えたのね」
確かにベースはどこぞのブレザータイプの学生服。
そこにレザーアーマーが付いているのと、マントが付いているもの。
「先輩、今ひとつ世界観が掴めないんですけど」
「僕も観たことないんですけど、いつやってます?」
何か今期注目みたいな感じでアニメージョに載ってたような。
アニメ誌はジアニメ、マイアニメがちょっと前廃刊になったので、
今はネオタイプ、アニメイデア、アニメージョの3誌。
僕はメージョ派だ。
「テレビではやってないのよ」
「「え?」」
「これはOVAだけで毎週1話ずつ販売するんだって。
2500円だったかしら。スゴイよね」
「「スゴーイ!」」
うちでも年末、ついにビデオデッキを買った。
もうテレビだけじゃなく、ビデオで毎週アニメを観る。
そんな時代になってきたんだ。
そりゃあ評判になるよ。
「人気の小説で、宇宙を二分した学園の戦いらしいわよ。
帝国女学院と自由が丘女子高校」
「何か壮大なのか身近なのか」
「ねえミチヨ、今度古本屋で探してみようよ」
「う、うん」
なつきは興味をそそられたらしい。
休日、僕はなつきに誘われて、よく古本屋めぐりをするのだ。
なんでも本の面白さをやっと最近覚えたとの事。
中学ではバスケと勉強で手一杯だったから、読書どころじゃなかったらしい。
「ほらほら、2人とも」
カヨ先輩が手をパンパンと2回叩いた。
「着替えたのならアピールして、いっぱい写真、撮ってもらいなさい」
「「はい!」」
先輩方曰く、これからコスプレ可のコミケにはなるべく参加。
会場の人達と、横の繋がりを強化する。
いい意味で顔を覚えられ、名前まで知ってもらえれば。
さらに欲を言えば、固定のファンでもついてくれれば。
ただ漫然とやるのではなく、来るべき冬コミに向けて少しでも実績を重ねなくては。
その日僕らは男女に限らず、沢山の人達のカメラに収まった。
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「な、無い! 僕らのバッグが無い!」
さあ着替えようと、荷物を取りに行ったなつきが慌てて戻ってきた。
更衣室近くの客席に置いていた、2人の服をしまったバッグが見当たらないと言う。
僕と先輩も急ぎ荷物を置いた客席へ。
椅子のうしろや床の辺りも隈無く探したが見つからない。
会場スタッフに言って、取り違えた人がいないかアナウンスしてもらう。
しかし、コミケ終了を待たずに、周囲の客席から全ての荷物が持ち主の手に。
これでバッグを間違えて持って帰った可能性は消えた。
おそらく故意に運ばれた。まあ、盗まれたのだ。
なんて悠長に構えてられない!
貴重品はカヨ先輩に預けておいたからいいものの、僕らには着る物がないのだ。
さすがにコスプレしたまま、博多から家まで帰るのは恥ずかし過ぎる。
近くのお店で服を一式買うのには、僕の財布の中身じゃとても……
なつきもカヨ先輩も、帰りの電車賃程度しかないとの事。
「肝心な時に、あの金蔓はいないんだから!」
カヨ先輩は酷い事を言いながら、ポーチをゴソゴソ探りだした。
そして中からがま口財布の様な形をした、小さい小物入れを取り出した。
「少し、じっとしてなさい」
なつきにそう言うと、先輩は小物入れから小型のハサミを出して、それ以外を僕に手渡した。
小物入れは裁縫道具だった。
先輩は慣れた手つきで、衣装のレザーアーマーを縫い付けてある糸を切っていく。
「これで帰るなら、この変なの取れば普通の制服でしょ」
なるほど。
さすがカヨ先輩。
そうですね、それが最善の手です。
でも……
「僕ら、女装したまま帰るんですね」
「贅沢言ってんじゃないの!」
怒られてしまった。
この頃、OVAの勢いが凄かったのです。
パトレイバーや銀英伝みたいに、テレビアニメのような作品が続出でした。
僕はロードス全巻、予約購入しましたよ。
宝物です!
もうデッキ無くて観れないけど……
読んでいただいて、ありがとうございます。
次話もどうか、よろしくお願いいたします。




