2話
挿絵は八重洲ともかちゃん。
中学の美術部で、ミチヨくん画。
「昨日、ともかちゃんと会ったよ」
「えっ?」
言ってしまってから、余計な話題を振ってしまった事を後悔した。
朝の会話一発目にあまりに迂闊すぎた。
昨日部活の帰り道、あんなに会話が弾んでしまったのだ。
ミッキーだって彼女の話が出てくれば、気になるに決まっているもの。
長引けば、告白された所まで行くかもしれない。
かといって、今更話をそらすのは不自然だし……
「ヤエとは何話したんだ?」
あまり話が広がらないように。
「色々話したけど、主に進路かな」
この辺りだと、無難に収まるだろうか。
「ヤエは何処の高校に行くんだって?」
「うん、稲月高校をうけるんだって」
「そ、そうか……」
「僕らと違う高校だね」
僕とミッキーは嘉望東高校。
地域で2番目の進学校。
ちょっと僕にはギリギリだけど、ミッキーがいるので頑張れる。
稲月高校は3番手。
ちょっとガラの悪い生徒もいるが、自由な校風で人気も高い。
ただ、進学校として選ぶにはちょっと、という感じ。
此処だったら僕の学力でもまず受かるとは思うが、すこし背伸びをする事にした。
ミッキーが嘉望東志望なのと、毎日一緒に勉強を見てくれると言ったからだ。
「僕達も稲月にする?」
「……いや、そんな事で高校を決めるもんじゃない」
「そ、そうだよね……」
その時は自分の進路の決定理由に、気まずさを感じて分からなかった。
ミッキーが一瞬言い淀んだ事に。
いや、その事自体には気付いていた。
その時、彼の胸の内まで気を回せていたら……
でもそれはそれで、僕はまた思い悩んでいた事だろう。
夕刻、部活から帰るとミッキーは、すぐに部屋に来てくれた。
彼は成績が良く、内容まで理解しているからか、教え方も上手い。
本来なら、稲月も危ない程度の僕の脳みそを、3年掛けて強化してくれた。
そんなにいい頭を持っているのに、どーしょーもないニブチン。
いやいや、僕の気持ちが分かる分からないとかそう言うんじゃなくて、恋愛全般が苦手らしい。
まあ、僕も得意じゃないけど……
「取り敢えず、先に宿題片しちまうか」
数学の宿題をまず、それぞれやってから受験勉強になる。
「ねえミッキー、ここんとこ、意味分かんない」
「意味?」
「意味!」
「なんだよそれ……どれどれ」
僕は時々変な質問をする。
すると決まって彼は僕の右横に、細かく教えてやろうとピッタリくっついてくれる。
僕の顔のすぐ脇に、一生懸命説明しているミッキーの横顔。
僕の頭には、ちっとも入って来てやしないのに。
「分かったか?」
「う~ん、よく分かんな~い」
「ああん? 仕方ねえなあ、いいか」
「ありがとね」
微かに漂う、彼の髪の匂いを感じながら、この幸せな時間が少しでも長く続いてほしい。
その時僕は、そんな事しか考えられずにいたんだ……
あの時こうしとけばというターニングポイントに戻れるとしたら君ならどうする? ただし性別変わるけど。
が、完結しましたので、こちらの話もぼちぼち進めようかと。
もとは本編で平川国立コンビの話が出ないので、補完するつもりで書こうと思ったのですが、逸れちゃいました。
世界も、ともかが過去に戻ってない女ともかの高校時代ですし。
全く別物ではないですが、ちょっと違う話として、読んで下さいませ。
よろしくお願いいたします。