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27話

2年生の春。

ダイヤ先輩の所信表明の翌日からスタートです。

よろしくどうぞ~。


 2年生になって最初の部活で発表された、体育祭でのコスプレ行進。

 次の日になっても、今後のスケジュールを考える手前で僕は頭が痛くなる。


 僕、国立満世は今期から、美術部運営という役職に就けられてしまった。

 主に何をやるのかというとーー


 1 活動計画に基づくスケジュールの立案。

 2 それらを生徒会に提出及び調整。

 3 スケジュールの進行管理及び調整。


 てな感じだ。

 要は、部長、副部長がやりたい事やるんで、帳尻合わせしろって事だ。

 

 嘉望(かもう)東高校の体育祭は、たしか9月の終わり頃。

 台矢(ダイヤ)明美、中山田加代子両先輩にとっては、高校生活最後の体育祭。

 出来ることなら、先輩方の望みを叶えてあげたい。


 だが、その為にはいろいろと片付けなければならない問題がある。

 そのまずひとつ目。

 これはそもそも論なのだが……

 クラブ紹介を兼ねた、クラブ対抗リレー前の行進。


 なんで美術部がコスプレすんの?


 という事である


 そりゃあ僕だって、コスプレ大好き少年だ。

 なつきとメッセの夏コミでやった、Wアンドゥトロワのコスプレは大盛況だった。

 やれるというのなら、もっとやってみたいのだ。






 去年美術室で先輩に、なつきが天馬を気に入ったとの報告をした時の事。

 僕はブラックアンドゥトロワの衣装づくりの手伝いをダイヤ先輩にお願いした。

 そしてなつきのアンドゥトロワと一緒にコミケ会場でコスプレしたいと言ってみたのだ。

 5月に国際センターで大きいのをやったばかりなので、8月の夏コミでやる事になった。

 せっかくだからと、ダイヤ先輩がムーン様、カヨ先輩がその弟子の見習い舞闘士(マインド)キッキをやった。


「なんで私がサルなのよ!」


「仕方あるまい、登場時期が近いのはこの2人くらいだろう?」


「それならウーロンの舞龍でもいいじゃない」


「いやいや、先輩、髪型だけだから」


「そうだぞカヨちゃん!

 そんなちっちゃくて可愛いブリューいるわけない」


「「あはははははは」」


「ぐぬぬぬぬぬぬぬ」


「もう、2人共やめなよ、んプッ」


「お前ら百遍殺す(くらす)!!」




 でも当日、蓋を開けてみるとモンキーのキッキが可愛いと大人気。

 お菓子やらあめ玉やらを貰っていて、まんざらでもないカヨ先輩。

 調子にのってダイヤ先輩が、コソコソしている僕となつきを前に押しやり、


「この2人は、本当に男の子なんですよ」


 なんて言うもんだから周囲の女子達大喜び!


「し、写真一緒にお願いします」

「あ、私も」

「私も!」

「「「わたしも!!」」」


 元々引っ込み思案のなつきは、


「み、ミチヨ~」


 と、僕の脇に寄ってきてピトッと腕にくっついたりしたもんだから大騒ぎ。


「や~~~~ん!」「ほ、本物よ……」「リアル、リアルやおい」

「あああああ、淳さまあああ」「や、やだ、わたし、死ぬ、死ぬかも」


 女子達、大悶絶。


「おーい、トイレ行きたいから交代して~」


 混乱我関せず。

 ひとりブースで売り子をしていた植野(うえの)先輩がてけてけやって来た。

 植野先輩は演劇部で衣装班のチーフをやっている、ダイヤ先輩のコスプレ仲間。

 コミケではいつも一緒にサークルとして活動しているとの事。

 コスプレはせず、作るのが好きらしい。

 漫画も描かないのでお手伝い専門なのだが、こういう活動自体が楽しいようだ。


「はい! 僕たち入ります」


 コスプレのまま売り子をして、夏コミ本を20冊位一気に売った。


「な、コスプレはこういう販促にもってこいなのだよ」


 ダイヤ先輩がしたり顔で言った。


「僕たち、アンドゥトロワのお話、恥ずかしいけど見て下さい」

「見て下さい」


 カヨ先輩の謀略で、無理矢理僕たちはそんな宣伝をさせられる。


 同人誌は順調に減っていく。




「見よ! 我が軍は圧倒的ではないか!」


 開場から4時間位経った。

 売上はこの時点で既に過去最高との事。

 夏コミ本に過去本が2冊、カヨ先輩のやおい本と、机の上にある計4冊はどれも残りあとわずか。


「うえ~ん、ありがとう!」


 特にカヨ先輩は初の個人誌が30部売れて残りあと5部。


「ありがとね、2人のおかげだよ、ありがとね」


 みんなに1部ずつあげたいから、私は完売。と、泣きながら喜んでいた。


「今日はさすがに我々の勝ちであろう!」


 ダイヤ先輩は勝利を確信している様だが……


「先輩、今度は何と戦っていたんですか?」


「ミチヨ君、分かりきった事は口に出して聞くもんじゃない」


「「???」」


 聞いてもいないものは、僕もなつきも分かりません!


「あれだっ!!」


 ビシイッ! と決めポーズの様に右斜め前を指差して動かないダイヤ先輩。


 その指の先にあるブースに座っていた女性がこちらに気づいた。

 向こうの女性は両手で机をバーンと叩いて立ち上がり、腕組みをしてこっちを睨む。


 先輩、失礼な……? と思ったら、あっちも決めポーズみたいで動かない。


「大野ちゃ~ん、どうだった~」


 植野先輩がてけてけと向こうの女性のもとに駆けてった。


「お知り合いなんですか?」


 なつきがカヨ先輩に聞いてみる。


「うん、私たち4人、同じ中学の友達なのよ」


「フン! あいつは敵だ!」


「もう、ダイヤちゃんったら」


 ダイヤ先輩はやっとポーズを解いたかと思ったら、今度は大野さんの様に腕組みすると、


「あいつ……いや、あいつら」


 まだじっと、向こうのブースを睨んでいる。

 そして次に出た言葉に、僕となつきは驚いたのだった。


「稲月高校演劇部の連中め!」


「「えーーーーーー!!」」

福岡では人を殴る事を、「くらす」と言います。

語源はおそらく「くらわす」です。

でも感情をのせた言い方だと、

作中でカヨ先輩の「コロス」の方がしっくりくると思います。

使わなくてもいい言葉でした。


読んでいただきまして、ありがとうございます。

次話もどうか、よろしくお願いいたします。

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