25話
ミチヨ視点に戻ります。
国立家訪問編(?)あと2話です。
よろしくどうぞ。
「僕は、ミッキーが、好き……だったんだ」
好き……だった?
過去形?
なつき君にミッキーの事を話した時、無意識に過去の感情にした。
瞬間、心の隅に違和感をおぼえた。
そして今、なつき君とくちづけを交わして理解できた。
そっか……
なつき君の事、好きだったからだ。
「ぷぷっ!」
唇を離すと、思わず吹き出してしまった。
無意識とはいえ、僕は悪い性格だな。
あんなに落ち込んだりしてたくせに、なつき君を意識してたんだ。
ちゃっかりしてる。
「ミチヨ?」
なつき君、じゃなかった……なつきが不安げに見詰めている。
数ヵ月前までは、無口で、ニヒルで、苦手で、避けてた人なのに。
こんな表情するなんて想像もしなかった。
「もう、親友だって言ったそばから。
なつきのエッチ~」
「えーーーーっ!」
だからちょっとだけ、いじわるしたくなってしまう。
「だって、その、今のって、ほら、その、あの」
「えーーい」
僕は勢い良く抱きついて、なつきとベッドに横倒しになった。
「襲うやつは、襲われる覚悟を持つべきだ」
「アラベスク兄さん!?」
なつきも天馬の名台詞が分かってきたね。
弟と言えども手加減はせぬぞお。
「ぐぬぬっ」
押さえ込もうとするのだけど、さすが元バスケ部。びくともしない。
「あはは、ミチヨ、何がしたいんだよ」
「押さえ付けて、さっきのお返しすんの!」
「ええっ、それは大変だ」
「ぐぬぬっ」
やっぱりダメだっ、細身のくせにっ、どこに筋肉、ついてんだっ?
「では、反撃だよっ」
「わわわわわ」
いとも簡単に、ぐるりん、と逆に押さえ込まれる。
「お、おのれ、離せえええ」
「そんな力で、撥ね除けられるとでも?」
僕の両手は押さえ付けられ、お腹から下はなつきの体が覆い被さっている。
顔と顔が、すごく、近い……
この状況って、なんか、僕、な、なされるが、まま?
「どうしたの? 観念した?」
「うん……観念、した」
「!!」
なつきもこの状況に気付いたみたい。
いつもの彼なら「わ、ごめん」とか言ってすぐに跳び退いたはず。
でも今のなつきは、そのままじっと僕を見詰めている。
そしてゆっくり、手首から手を離し、そっと掌を合わせてきた。
僕もその手を握り返す。
また、なつきの美しい少女の様な顔が近づいてくる。
なつきも好きな幼馴染みがいると言っていた。
ミッキーの様に、その子を思い浮かべているかもしれない。
でも、もういい。
僕はなつきが好きなんだ。
今はその事を一番大切にしたい。
たとえ変な親友の関係だって、ちょっと恋人気分でいちゃつく関係だって。
僕はもう、失いたくない。
歪な形の親友として、ずっと彼の側に居られたら、それだけでいい。
「ミチヨ……」
「なつき……」
ピンポーン!
「「!!」」
ピンポ、ピンポ、ピンポ、ピンポーン
呼び鈴、しかも連射。
ああ、帰って来たのか。
外の声がここまで聞こえる。
(おい! 急げ! 早くこっち来て鍵空けろ!)
(ハイハイハイハイ)
(早く早く早く早く!)
(だいたい鍵持ってるのに、なんで呼び鈴鳴らすのよ)
(牽制だ! 今男が襲い掛かる所だったらどうする!)
なるほど、僕が心配で急いで帰って来たんだ。
お父さんの牽制とやらはコウカテキメンでしたっ。
ドカドカドカドカ……ガチャッ!
「ただいま、帰ったぞ、おや、お客さんかウワッ!」
失礼だな、なつき見てウワッて。
「お、お邪魔してます」
やはりなつきは緊張気味。
おどおどした感じは人の保護欲をくすぐる。
「お、お、お嬢さんだったのか……」
また失礼な事を。
「もう、パパ! なつき君は男の子よ」
「えーーーーーーーっ!」
「もう、いい加減にしてよ! なつきに失礼過ぎるでしょ!」
「ううん、大丈夫、慣れてるから」
優しくしなくていいよ、つけあがるから。
「い、いやあ、悪かったねえ。
あの、その、君があまりに綺麗なもんだから」
何顔を赤らめているんだよっ。
いい年したおじさんが危ないだろっ。
「ミチヨに変な事されなかったかい?」
変な事されたのは僕の方だ! と、突っ込もうとして慌てて口を閉じる。
「いえ、そんな、ミチヨはそんな事……」
なつきも顔が真っ赤だ。
こっちの方は見てる3人の胸がキュンってなるくらい可愛い。
「とにかく、ここは狭いから座敷に寝なさい。
母さん、客用のいいやつあったろ、羽毛のやつ」
「はいはい。
ミッチョンはお茶淹れて。
ケーキ買ってきたから食べましょ」
まあ、なつきが座敷に寝るのは仕方ないよね。
「それと!」
お母さんは思い出した様に戻って来て、顔を寄せ小声で聞いた。
(あんた達、なんで名前呼び捨てなのか、詳しくおしえてねー)
「こ、これは親友になって……」
「後で聞くから、あんたはお茶」
「んもう!
なつき手伝う?」
「うん!」
なんか一気に賑やかになっちゃった。
これはこれで、楽しいかもね。
「おーい! お父さんをのけ者にしないでくれー」
ネコさんは、今で言うと腐女子です。
ミャコちゃんと2人であーだこーだ妄想しまくってた様です。
案外ミチヨとミッキーは仕組まれてたのかも……
読んでいただきまして、ありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




