22話 えとうなつきのおはなし2
なつき君視点のおはなしです。
よろしくどうぞ~。
「ねえ、なつき君」
ミチヨ君が微笑みながら声を掛けてきた。
「うん?」
僕は返事をする。
さっきは思い詰めた顔をして、ミチヨ君が泣き出したので凄く心配した。
綺麗だとか僕が言ったから、キスしようとした事を思い出したのかな?
一瞬そう考えた。
いや、どうやら違うらしい。
何やら事情がある様だったのに、話の腰をうっかり僕が折ってしまったようだ。
また上目遣いされて可愛さにドキドキしたが、何故か笑顔になってくれて助かった。
「今日、泊まっていかない?」
「ーーーーーーーっ!!」
危うく声に出して驚くとこだった……
お、女の子に言われた訳ではないんだよ。
このドキッは、さっきの影響が残ってたんだからね、うん。
そう、仲良しの友達の家に泊まるかどうかの話だよ。
そ、そう、仲の良い、友達の……
そうさ、あの時とは違うはず。
そうだよ、僕だって少しは変われているはず。
「ごめんね、やっぱりつらい?」
「!?
……ううん、そんな事ないよ」
ミチヨ君は僕の昔話を聞いて気遣ってくれている。
そうか、それでも僕にいてほしいのは、やっぱりさっきの話を聞いてほしいんだ。
泊まってって事は、きっと寝る前に電気消して、横になってから相談したいんだよ。
雪姉の「花ゆめ」のマンガにそんなシーンがあった。
マンガだと、相談というのが好きな子がいるとか。
で、それは自分も好きな子でショックとか。
まあ、どちらも無いだろう。
「いいよ。じゃあ、今日は泊めてもらうね」
「ありがとう」
ニッコリ満面の笑み。
ああ良かった。
僕は、ミチヨ君の力になりたいと思う。
この美しい、繊細な心の持ち主の支えになる事が出来たら……
その時は僕もひとつ、何かを乗り越えられる様な気がする。
「じゃあ、晩ご飯まで天馬読む?」
「うん、そうだよ、読まなきゃ。
何しに来たのって笑わないでね」
「「あははははは」」
ーーーーーーーーーーーーー
かれこれ3時間程経っただろうか。
あっという間に、10冊を読み終えた。
これは確かに面白い。
ミチヨ君や先輩達が夢中になるのも頷ける。
でも、僕が面白いと感じる方向と先輩方のとは、向きが違ってる気がする。
ミチヨ君は僕と同じで、純粋に楽しんでると思う。
でも、先輩方のイヤラシイ感じの理由も知ってるんだと思う。
そこまで踏み込むべきか……
「なつき君、面白いでしょ?」
ミチヨ君が聞いてきた。
さりげなく教えてもらおうかな。
「うん! 面白いよ。
みんなが夢中になるのがわかるよ」
「そう?
嬉しいなっ」
ぱあっとミチヨ君が笑顔の花を咲かせる。
本当に嬉しそうだ。
マンガもいいけど、ずっと君を見ていたい気もする。
「なつき君はどのキャラが好き」
ミチヨ君は目をキラキラさせて聞いてくる。
グッと顔を寄せて来て、って近い近い近い!
「ぼ、僕は衣装貰ったせいかな、アンドゥトロワ淳がやっぱり気になるな」
「そうだよねえ、淳だよね」
んん?
ちょっとだけミチヨ君から先輩らの香りを感じる。
「僕も好きだけど、やっぱりなつき君がイメージぴったりだよ」
「そう?」
「優しくて、思い遣りがあって、実は強くて。
でもなんといっても、すごく綺麗」
またキラキラしてる。
「そんな、ミチヨ君の方がピッタリだよ……」
「えーっ、じゃあさ、色違いでコスプレやる?」
「あはは、ブラックアンドゥトロワ?」
「そう! 分かってるねえ」
そうだ、この感じ。
好きな事だけ見詰め過ぎて、ちょっと周りが見えていない感じ。
ミチヨ君はそれ程ではないけれど、これをレベルアップさせた先が先輩達なのかな。
楽しそうなのは分かる。
でも染まってしまいそうで、ちょっと怖い気もする。
「もちろん、僕はブラックの方ね」
ニッコリ、キラキラ、屈託無く笑う君を可愛いと思ってしまう。
ミチヨ君と一緒なら、染まっちゃうのも悪くないな。
「そうだね、衣装は僕が貰ったんだからね~」
「そうだよ、うらやましいっ」
「「あははははは」」
そう何も迷う事ないよ。
僕はこの笑顔を守ってあげたい。
その気持ちが優先だと思っているから。
この頃、ちらほらと「オタク」という言葉が世間で耳にする様になりました。
オタクな人達のちょっと上がり気味のテンションに、一般人はかなり引いてましたね。
あの頃の「オタク」は今よりずっと差別用語でしたね。
されてる方だったから、余計にそう感じてたのかな?
読んで頂いてありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。




