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21話


 なつき君は話し終えると瞳を閉じた。


 つぅーー


 ひとすじの涙が頬を伝う。


 美しくも冷たい、氷の彫像の様に感じていた中学時代の彼。

 でも最近は気さくな笑顔を見せてくれる。

 よく先輩を心配そうに見、呆れた様に見。

 彼を近くに感じて、親しくなれて。

 でも……

 こんな悲しい顔は、見なくて済むのならその方がいい。


「ミチヨ君。

 泣いてくれてるの?」


 そう、僕も涙を溢していた。

 なつき君に貰い泣きしたのもあるが、それ以上に他人事じゃなかった。

 僕自信、身につまされる。


 なつき君は悔いている。

 守ってもらったのに。

 助けてもらったのに。

 たった一度の過ちを……

 発作的な、愛情の暴発の様な過ちを許せなかった。


 似ていた。

 いや、同じだった。


 僕はどれだけ、ミッキーに助けられていたのだろう。

 僕の知らない所で、ミッキーはどれだけ守ってくれていたのだろう。

 僕の失敗を、おそらく物凄い量の失敗を、ミッキーはどれだけ許してくれていたのだろう。


 それを僕はたった一回で……


 ピピピピピピピピピピ


 ジャーから炊き上がりを知らせるアラームが鳴る。


「あ! ミチヨ君、炊けたんじゃない?」


 勤めて明るくなつき君は振る舞う。

 本当に優しいなあ。

 そんなに気を遣わなくていいのに。


「うん! 食べよっか」


 冷めていた豚の生姜焼きを温め直し、もう晩ごはんに近いおひるをなつき君と食べる。


「わあ~!

 定食屋さんで食べたのより美味しい」


 なつき君は喜んでくれている。

 ちょっと甘めにしたのと、すり下ろした生姜を入れたのがポイント。

 でもやっぱり肉が少し固くなってしまった。

 なつき君には一番美味しいのを食べてもらいたかったな。




 食後に熱いお茶を淹れた。

 ひと心地ついた所で、

「さっきはごめんね」

 と、なつき君は謝ってきた。

 たぶん前の時みたく、友情を失うのが怖いのかもしれない。

 

「ううん、気にしてないよ」


 それに……


「ホントは僕の方が、ドキドキしちゃってたよ。

 だって、なつき君、凄く綺麗なんだもん」


 ちょっと考えれば気の毒なのはM君の方だ。

 湯上がりの無防備美少女、じゃなかった美少年が部屋にいて、麦茶を飲んでいたら。

 上気した頬から汗が「こくんこくん」と揺れるたび、つうーっと首から胸元へ落ちていたら。

 一瞬理性は何処かへ飛んで行くだろう。

 僕はM君を責める気にはなれない。


「何言ってるんだよ。

 ミチヨ君を見たから、僕はポーっとなっちゃったんだよ」


「え?」


「特に俯いた所からの上目遣い」


 あ……


『お前、上目遣いって、きたねえぞ』


 そういえば、ミッキーも言ってた。


「ミチヨ君こそ、凄く綺麗だったよ」


『あ、ああ、きれいだ……』

『好きだ。愛してるよ……』


 そうだった。

 ミッキーも言ってくれていた。

 

 ミッキー……


「ミ、ミチヨ君、大丈夫?」


 僕はいつの間にか、ポロポロポロポロ泣いていた。


「ごめんね、なつき君。

 今度は僕の話、聞いてくれる?」




 ーーーーーーーーー


 少し気持ちが落ち着いてから、僕はぬるくなったお茶をひと口飲んで話し始めた。


「僕には同い年で幼馴染みの親友が……」

「ああ、平川君?」


「……………」


「ああ! ごめん」


 は、恥ずかしい……

 恥ずかしすぎるっっ!

 顔が熱い。

 たぶん真っ赤だ。

 僕も「M君」みたいに、名前を伏せて話を聞いて貰いたかったのに……


 話し始めて5秒でバレた。


「あ、ああ、そう、幼馴染みの子、なんでしょ?」


 コクン。


 僕は顔を上げられず、俯いたまま頷いた。


「じゃあ、ミチヨ君もM君にしなよ。

 ほら、丁度ミッキーって呼んで……んプッ」


「もう! そこで笑うかなあ」


「ごめん、わざとじゃないよ」


「もおおおおおお……」


「そ、その上目遣いだよ」


 なつき君まで、真っ赤になってしまった。


「プッ」


「あはは」


 何だか心が軽くなったな。

 なつき君の優しさが僕には心地良い。

 痛みを味わった者の持つ、ちょっと悲哀の混じった優しさが。

 同じ様な悲しみと後悔を、経験したからかもしれない。


「ねえ、なつき君」


「うん?」


「今日、泊まっていかない?」

 

 

カヨコ「ちょっと! いつまで1年前やってんの!」

KUZ「すみません」

ダイヤ「早くコスプレ大会やりたいんですけどっっ」

KUZ「申し訳ない」

カヨコ「一体何がやりたいの?」

KUZ「ここ書かないと、なつきの稲高に対する感情がだねえ」

ダイヤ「まあこんなでも作者は作者だ、考えがあるのだろう。が……」

カヨコ「遅すぎんのよ! チンタラチンタラし過ぎんの!」

KUZ「お前ら、ひでえなあ」

ダイヤ「我々は兎に角出番がほしいのだっっ」

カヨコ「サクサクッと先に進めんのよ!」

KUZ「それであとがきにまで出やがって……

    しゃーねーなあ、じゃあ次話はお泊まり無しにすっか?」

ダ&カ「「お泊まり!!」」

KUZ「お前らの好きにしていいぞ」

ダイヤ「カヨちゃん! 私、お泊まりが、見たい……」

カヨコ「ダメよ、ダイヤちゃん! ここで妥協したらこの男クセになる!」

KUZ「本当に口悪ぃなあ」

ダイヤ「お、お、お泊まりで、お願いします」

カヨコ「ダイヤちゃん」

ダイヤ「ごめんね、カヨちゃん」

カヨコ「いいの、いいのよ」

ダ&カ「「うえーーーーーん」」

KUZ「お前ら、期待しすぎんなよ」


読んでいただいてありがとうございます。

こんな所まで騒がしくなり、失礼致しました。

次話もどうかよろしくお願いいたします。

お見捨てなきよう。

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