1話
コメディー要素は、まだないと思われます。
期待薄く読んで下さいね。
人はなぜ、男と女に別れて生まれてくるのだろう。
人っていう性別ひとつだけなら、僕は何も悩む事はないのだろうに。
男はなぜ、女に惹かれるのだろう。
女はなぜ、男を求めるのだろう。
欲することもなく、奪われることもない僕は、
生物として、無駄な存在なのかもしれない。
人はなぜ、男と女に別れて生まれてきてしまうのだろう。
どうして、あの人は男に生まれて来てしまったのだろう。
どうして、僕は男に生まれて来てしまったのだろう。
どうして、僕は女に生まれて来なかったのだろう。
そうか……
僕は女に生まれて来たかったんだ。
僕は女に生まれて、あの人を好きになり、あの人と惹かれ合い、
あの人と求め合い、あの人と結ばれたかった……
あの人、平川美紀男と結ばれれば、それだけでよかった。
ミッキーとは幼馴染みで親友。
でも、僕にはそれ以上の存在。
彼がすべて。
彼なしの世界は考えられない。
ミッキーにとって、僕は幼馴染みで親友。
それ以上でもないし、それ以下でもない。
僕が女だったら、あなたは好きになってくれたの?
いいえ、そんな問いは何の意味もない。
いいえ、そうなっていたとしても何の意味もない。
だってもう既に、彼の心は、ひとりの人に奪われていたから。
八重洲ともかちゃん。
彼のともだち。
僕のともだち。
僕の仲のいい異性のともだち。
彼の心を奪った異性のともだち。
でも僕は、彼女を嫌いになれない。
本当なら、嫉妬に見苦しく、彼女を憎んでしまったのかもしれない。
でも彼女を、憎む事なんてできない。
彼女は大切なともだち。
それに……
僕は、ともかちゃんに……
告白されてしまったのだから。
中学3年の夏休み。
美術部で、僕はめずらしく帰りが遅くなり、水泳部の終わりと重なった。
水泳部で渡邉さんと楽しそうにしている彼女を、
ときどき遠くから見ることはあった。
部活も違えば、1組の彼女と5組の僕、ミッキーはクラスも遠い。
ずっと疎遠になっていた彼女と、たまたま2人で帰る事になった。
久し振りの会話に華が咲いた。
いろんな話をした。
小6の楽しかった共通の思い出。
中学に上がってからの、知らなかったお互いの出来事。
高校を何処にするかなどの、これからの事。
楽しくて、名残惜しくて、
彼女を途中まで送るため、足をのばす。
もうそろそろ引き返そうかな、という所で。
「ミチちゃん!」
急に立ち止まって、真剣な顔をして。
「私、ずっと、ミチちゃんが好き!」
そう言うと彼女は、ダッと走って、去って行ってしまった。
僕は言われた意味が最初は分からず、
ただ、ぼうっと彼女のうしろ姿をみつめていた。
彼女の姿が見えなくなって、だんだんと事の中身が理解できてきた。
「どうしよう……」
途方に暮れるという言葉がうかんできて、ああ、こういう意味か、と知った。
次の日、ミッキーと朝顔を合わせても、その事を口にできなかった。
そのとき彼の心を知っていたら、僕はその事を言えただろうか。
いいえ、彼がともかちゃんを好きだと知っていようがいまいが変わらない。
どのみち僕は何も言えず、ひとり胸を重くすることに変わりはなかったのだから。
有難う御座います。
拙い作品ですが、よろしくお願い致します。
ともかちゃんメインの方の作品の合間に書いてますので、
かなりの遅筆です……
どうか見捨てないで下さいね。