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16話

もうしばらく、1年前の話が続きます。




「今日、この後用事ある?」


 4時限目の授業が終わった後、なつき君が聞いてきた。

 今日は土曜日で半ドン。

 なのでお昼を買って、夕方まで油絵の下書きをするつもりだった。


「どうしたの? 部活くらいだよ」


「あ、そうだよね……

 いや、いいんだ、ゴメン」


 もう!

 まったく、なつき君はそうやって。


「コラ! 僕に遠慮しないでよっ」


 ポカッ!


 軽く頭にチョップする。


「え? あははは。

 うん、ゴメンね」


「てい! 謝るな。

 用件を言え!」


 もう一度チョップする。


「うふふふ、分かったよ。

 ミチヨ君、ありがとう。

 あのね……」


 なつき君ははにかみながら口をひらいた。


 なつき君が言うには、昨日部室でダイヤ先輩に貰った衣装。

 その衣装の出来がいいのは分かる。

 何か素敵な感じはする。

 それに、僕……ミチヨ君が羨ましがっていたのも気になる。

 自分の思っている以上の物が、ここにあるような気がする。

 そこで、


「その漫画を、僕も読んでみたいんだ」


 との事だった。


「何だ、そんな事?」


「え?」


「じゃあさ、今日僕んちに来なよ」


「え? え?」


「僕んちで読みなよ、『フェイントだ!天馬』」


「あ! ミチヨ君、持ってるんだ」


「最新まで、全巻!」


 僕は郭座ますみ先生の大ファン。

 通称「マスミスト」という。

 前作「氷場(リンク)に立てよ!」も全巻持っている。


「えーーっ! 凄ーーい。

 じゃあ、お邪魔していい?」


「もっちろーん」


 こうして急遽なつき君が、うちに遊びに来ることになった。




 美術室にちょっと顔を出して、先輩方に挨拶だけはする。


「えー、帰っちゃうのー」


「2人でお出かけ?」


 先輩2人は机に各々(おのおの)の部活道具を広げて歓談中だった。

 もちろん(おおやけ)の部活道具は、油絵の具はおろか木炭1本も出していない。


「いえ、2人で出かけるという訳では」


「そうだね。

 なつき君は出かけるけど、僕は引きこもるからね」


「「??」」


「いえ、なつき君が僕の部屋に来るから、そうなるなと」


「「部屋っっ!!」」


 バーーンと、先輩2人が、両手を机に突いて立ち上がった。


「え、ええ……」


「ミチヨ君に本を読ませて貰おうかと……」


「「2人だけでっ?」」


「そ、うだよ、ね?」


「うん。

 あ、今日両親、週末デートだから、母も多分いないや」


「「何ですとーーーっ!」」


 ダイヤ先輩の鼻からまた血が出てきた。


 ああ、そういう事か。

 僕の部屋になつき君が来て、2人っきりになるシチュエーションに興奮してるのか。


「く、国立くん……わ、わたしも……」


「だめ! だめよ、ダイヤちゃん」


「ううっ、カヨちゃん」


「まだ知り合ってふた月経ってないのよ。

 先輩が自分の部屋にズカズカ乗り込んだら、どう思う?」


「ふぐううう。

 たしかに……」


「がまんよ。耐えて」


「わ、わかった……耐える。

 血の涙を流してっっ!」


「「わーーーーーーん」」


 2人ひしと抱き合う。

 仲が良いというか何というか。

 去年はずっと2人で、こんな事やってたのだろうか……


「行こうか、なつき君」


 僕は心配気な顔をして見ている、優しい少年の手を引いて美術室を後にした。


最初なつき君は、古本屋さんに着いてきてほしかった様です。

当時の漫画喫茶は、今の漫喫とは違って、漫画が沢山ある喫茶店でした。

普通の喫茶店より高めのコーヒーを注文して漫画を読むのです。

高校生には敷居が高くて入れませんでしたねえ。


読んで頂いて、ありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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