プロローグ
コメディ要素が少ないです。
暫しのご猶予を。
挿絵は中学の美術部で描いたミチヨくんの自画像です。
って事で。
僕は変なのかもしれない……
ちっちゃい頃のはなし。
投げ捨てた、川面に浮かぶ空き缶を標的にして、石を投げる友人たち。
僕は中に入って行けず、ただその光景を眺めていた。
いたぶられ、沈められていく空き缶が憐れで、涙が流れてくるのをそっと隠した。
僕は変なのかもしれない……
駄菓子屋の表に貼られた、鉄板製のカレーのポスター。
錆びて少し変形したその中で、割烹着姿の女性が微笑んでいた。
いつも笑顔で見送る彼女に、朝、行ってきますと心の中で挨拶する。
僕は変なのかもしれない……
ある日戯れで友達が、自分の髪どめを着けてみろと手渡した。
渋々とめてみると、彼女らに高評価。
鏡の中の自分を、可愛いと思ってしまった。
やっぱり、僕は変なのかもしれない……
そうとう、変なのかもしれない。
だって、おかしいもん。
だって……
男の子を好きになるなんて。
僕は国立満世16才。
名前と顔の女っぽさからよく間違われるけど、一応男子高校生。
性格も気弱だから、いついじめられても不思議じゃなかった。
でも、そうならなかった理由は彼。
平川美紀男。
幼馴染みで親友。
そして僕の、片想いの相手……
小学校の頃、児童は集団登校するようになっていた。
彼と僕のうちは他の子達よりもっと遠く、
朝彼を迎えに行って、駄菓子屋の先までの15分くらいは二人きり。
帰りも時間が合えばその逆で。
……なるべく、合わせるんだけど。
彼は正義感の塊みたいな子で、
4年の頃はともかちゃんをいじめから助けたみたい。
ともかちゃんは共通の友達で、小6ですごく仲良くなったけど、
中学で別の部活に入ってからあまり会わなくなっちゃった子。
すごく元気な女の子だったけど、それも彼の助けがあったからだって。
その小6の時、帰りにいつものように心の中で、
駄菓子屋の看板にただいまって言おうとした。
無かったーー
微笑む女性のカレーの看板から、
真新しい紙のポスターに張り替えられていた。
仕方なかった。
時間の問題だったもの。
今時、鉄板のポスターなんて……
でも、あの微笑んでいた女の人が可哀想で。
今まで優しい笑顔で見守ってくれていたのに。
心の中で、サヨナラとアリガトウを言いたかったな……
そんな事を思いながら俯いて歩いていたのだろう、
「ミチ、危ないぞ」
彼が声をかける。
「ありがとうミッキー」
「気持ちは分かるけど、気をつけろよ」
「え?」
「あの女の人、残念だったな」
「!!」
「俺もガッカリだよ。
優しく見守ってくれてるみたいなさ。
俺らだけの、緑のおばさんみたいだったのに……」
「うん……」
「俺らだけでサヨナラって言おうぜ、空に向かってさ」
「うん……」
人気のない田舎の山道で二人叫んだ。
「「アリガトウ! サヨナラッ!」」
僕は泣き崩れて立てなかった。
彼は横に座って、黙って肩を抱いてくれた。
まだ肌寒い春の日に、彼の優しさが温かかった。
僕は変なのかもしれない。
そうとう変なのかもしれない。
でも、男の子が好きなんじゃない。
平川ミッキーを好きになってしまったんだ……
別作品のBLカップルの話です。
スピンオフってやつですよ。
てへ♪
ゆっくり書きますので、どうかよろしくお願いします。