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写ガール 〜神谷結衣の純愛恋写  作者: 瀬賀 王詞
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第5章 2 誕生! 結衣監督!

 監督代行就任式は、翌々日、結衣のユニフォームが仕上がるのを待って行われた。理事長、校長も列席した。野球部四十七名は、一糸乱れず入場行進し、監督と結衣の前に整列した。

「先にも言うたように、わしは病でアメリカには行けなくなった。そこで、先日理事長、校長に相談をし、監督代行を置くことになった。諸君らの目の前にいる、神谷結衣さんが、監督代行を務める。よいか!」

「はい!」声をきれいに揃えて返事が返った。

「もし、この決定に不満、不服がある者は、今すぐこのグラウンドから、去れ!」

 沈黙が訪れた。サッカー部や、テニス部の練習する声だけが聞こえる。

「出る者はいないのか? 大丸!」

「はい!」主将の大丸が前に出た。

「神谷監督代行を補佐し、全員一丸となって、内村昇平を倒してこい。わかったかあ!」

「はい!」

「わしからはそれだけじゃ。神谷監督代行からあいさつがある」

 野球部員は、神谷監督代行に向き直った。

「こんにちは、みなさん。今、ちょっと緊張してるので、長い話はしません。なんで、こんなやつがって、思っている人がいたら、ごめんなさい。どうか、わたしに、ついてきてください」

「ついて行きますっ!」誰かが大きな声で言った。

 笑い声が起こった。

「アメリカ遠征は、神谷監督代行の発案だと聞いてます。僕たちの恩人ですから、僕たち、ついていきます」と大丸が言った。

「ありがとう。アメリカには、十名しか連れて行けないけど、心は、みんなひとつにしてほしい」

「はい!」

「試合を五試合組みましたが、最終戦は、内村昇平と戦います。わたしたちの目標は、内村昇平を打って、勝つことです。内村昇平に憧れている人もいると聞いてますが、そんな気持ちは、捨ててください」

 部員の表情が引き締まった。

「全力で戦って、勝って、内村昇平に、『このチームでプレーしたい』って、思わせてください。いいですか?」

「はい!」部員の声が一段と高く響いた。

 監督は、しきりに肯いていた。

「結衣ちゃん、もうあいつらの心をつかんどる。うまいもんじゃ」

「あの子は、不思議な子じゃよ。確かに……」理事長も目を細めた。

 就任式を終え、練習が始まった。

「監督代行、わしはもう帰る。あとは、よろしくな……」

「監督、手術、がんばってくださいね」結衣は、いたわり声で言った。

 グラウンドを出る監督に、部員が声をかけた。

「ばかやろう! 練習に集中せい!」と監督は怒鳴った。

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