第八十三章「影を伸ばして」
遠藤と時雨の戦いは遠藤のほうが優勢であった。
時雨の攻撃は一向に当たらないのに対し、傷は増えていくばかり。
それを見ていた二人はなんとか助けられないものかと
いろいろ試していたが、壁を壊すことはできない。
「神矢さん、このままじゃ・・・!」
「分かってる」
弘崎は武器を創って壁を殴るが、ビクともしない。
そんな二人の影からゆらりと出てくる影が一つ。
「ねえ」
その言葉に二人は振り向く。
「お前は、影!一体どこに・・・」
「君の影の中にちょっとお邪魔してるよ」
ヒロトは壁に触ると、ふむ、と声を漏らした。
「今、P2が出ないようにこの部屋には光線が張り巡らされてる。
そのせいで僕は影から出れないんだ。
でも、影を向こうまで伸ばしてくれればこの中に入れる」
それを聞いた神矢は意味を理解し、走り出した。
「神矢さん、どこに!?」
「ライトを取ってくる!」
その言葉で弘崎も意味を理解する。
「なんでもっと早くに言ってくれなかったんだ」
「あのね、これでも辛いんだよ?一応僕も影だしさ」
それだけ言うとヒロトは影に入っていった。
そんなことをしている間にも時雨は苦しめられていく。
「あいつ、シールドでも張ってんのかよ・・・」
「当たらないのは君の技量がたりないだけじゃなーい?」
スピードでは時雨が優っている。
何度も後ろを取るが必ず避けられてしまう。
今回も後ろを取って照準を合わせたものの、避けられ逆に蹴り飛ばされた。
遠藤はうずくまる時雨に近付き腕を掴んだ。
「時雨君、骨折ってした事ある?」
「何を・・・!!」
次の瞬間、遠藤は時雨の腕をあらぬ方向へと曲げた。
「ああああああぁぁぁぁ!!?」
「あはは、君の大声初めて聞いた」
「弘崎!」
時雨の悲鳴を聞いた神矢がライトを持って大急ぎで戻ってきた。
「神矢さん!」
ライトで弘崎を照らす。
すると、弘崎の影は遠藤の後方まで伸びた。
影からヒロトが姿を現わす。
そして遠藤に乗り移る。
「な、なんだ・・・!?」
「・・・?」
遠藤の髪が黒くなり、頭を抱えて苦しみだす。
「うわっ、やめろ!やめろ!!」
暫くすると遠藤は倒れた。
倒れた遠藤からヒロトが出てくる。
「し、死んだのか・・・?」
折れた腕を抱えながら時雨が聞く。
急いで時雨の影に入ったヒロトは腕を見ながら答える。
「死んではいないよ、聴覚と視覚を奪ったんだ」
「・・・そうか」
ヒロトは時雨の腕を掴むと、逆に曲げた。
「あああぁぁああぁっ!!なにっ、すんだよ!!」
「まあ、落ち着いて」
「痛いって!離せよっ!!」
暴れる時雨を押さえつけながら包帯を巻いていくヒロト。
終わると、腕の痛みは消えていた。
「痛みは無くなっても折れてることに変わりはないから動かさないでね」
「あ、ありがとう・・・」
治療が終わると、壁が消えた。
その頃上では、大変なことになっていた。




