第七十四章「突入」
街の中心部に地下へと続く隠し通路がある。
それが本拠地への入り口であった。
三人は十分に警戒しながら中へと入る。
施設内は静寂に包まれていて、三人の足音がよく響く。
「なんで誰もいないんだ?」
時雨の問いに神矢は答えられない。
自分が飛ばされた後の事は何も分からないのだ。
三人は隠れるのをやめ、堂々と進む事にする。
それでも人が出てくる気配はなかった。
「様子が変だな」
狐が辺りを見回しながら言う。
二人も同じことを考えていた。
「気味悪いな」
「ああ」
時雨はなんとなく近くの扉を開けた。
「なんだ、これ」
中では研究員と思われる人が何人か倒れていた。
部屋には煙が充満している。
「教え子!早く閉めろ!」
狐が急いで扉を閉める。
その行為で煙がなんであるかを察した神矢は状況を把握した。
「成る程、戦闘員以外は眠らされているわけか・・・」
「どうりで静かなわけだ」
「なんだったんだ?」
一人ついて行けない時雨に神矢が説明する。
「今のは睡眠ガスだ。多分、彼らは使えないと判断されたんだろう」
「じゃあ、足止めがいないってことか?」
「いや、眠らされているのは研究員だけだ。
手強いのは皆残ってるはず」
神矢は渋い顔をする。
誰が残っているかは予測できた。
その誰か、は全員自分が苦手である人物だということも。
「何人くらいいるんだ?」
「多分・・・、五人くらいだ」
「なんだ、思ったより少ないんだな」
時雨の言葉に神矢は溜息を漏らす。
人数の問題ではない。
本当に手強い五人が残っているはずなのだ。
時間もないと考えると十分に辛い状況だ。
「そろそろ相手もこちらの侵入に気付いているはず」
「そのようだな」
狐は足を止めて言った。
その視線の先には、一人の女性が立っている。
「こんにちわ」
「島木莉子、面倒な奴が出てきたな」
「神矢研二君。お友達を連れてどこに行くのかしら」
莉子は笑顔で近く。
時雨と神矢は後ずさったが、狐は動かない。
「悪いけど、先には行かせられないわ」
「それは困るな」
狐は即答する。
「ここは私が引き受けよう。二人は先に行け」
「いや、全員の方が安全だ」
狐は刀を作り莉子に斬りかかる。
莉子も刀を持ち防御した。
「早く行け。私は集団は好まぬ」
「でも・・・!」
助けようとした時雨を神矢が引っ張る。
「なっ」
「彼女なら平気だろう、先を急ごう」
時雨は渋々先へ進んだ。
残された二人は距離を取り、互いに睨み合う。
「まあ、いいわ。私以外にもいるし、貴方を倒してから後を追えばいいものね」
「そうはさせんさ」
互いに刀を構える。
「随分と自信があるのね」
「貴様もな」
女同士の戦いが始まった。




