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俺と先生のフリースクール  作者: 影峰 柚李
過去編
71/87

第七十章「前進」

研究室に入って、僕は固まった。

僕が病院に行ってからこの部屋には入っていない。

鍵も閉めていたからこの部屋には入れないはずだ。

一人を除いては。

当人は平然と自分が持ち込んだであろうものを見た。

「そんなに驚く?」

「だって、これ・・・」

多少焦げていたためぱっと見では分かりにくかったが

それが人間の死体であると認識するには十分原型を留めていた。

「まさかあの事故の時の?」

「そうだよ」

暫く思考が停止していたが、我に返りその死体を見て

なんとか言葉を絞り出す。

「ダメだろ」

「どうして?」

「どうしてって・・・、身元がわかる死体はちゃんと遺族の元で

正式な処理を行うべきじゃ無いか」

この場合、時雨君という遺族がきちんといるわけだから

彼の元でお葬式とかをあげるべきである。

「どうやって持ち出したか知らないけど、返した方がいいよ」

「今更?もう死んでるし、遺族が遺体を探してるわけでもないのに。

死体は燃えてなくなりました、はい終わり」

淡々というヒロトに怒りと恐怖を覚えた。

でも言ってる事も分からなくもない気がする。

そう思ってしまう自分も怖い。

「これで薬の被験体が出来たじゃん」

「別に鳥でも猫でも構わないのに・・・」

その言葉がヒロトの気に障ったらしい。

「どうして?鳥も猫も人間も同じ命だ。きっと家族も友達もいる生き物だ。

今君は人間は高等な生物だと他の命を見下したね?」

「別にそういうわけじゃ・・・、確かに今の言い方は良くなかったと思うけど」

「人間の命なんて軽いものだよ、動物達なんかよりずっとね。

世界には何十億という人がいるのに対して

動物達はどんどん絶滅していくばかりだ。

それなのに、犠牲にするなら動物の方がいいって?」

「ちょっと待って」

話が逸れてきたのと聞いていられないのとでヒロトの話を止めた。

ヒロトは人間じゃない。

だから平然とそんな事が言えるのだ。

同族の死は他の種族よりも重いと僕は思っただけで

他の種族の命を軽んじた訳ではない。

「分かったから、この話はやめよう」

「・・・そうだね、だいぶ話が逸れたみたいだ」

僕はジャケットを脱いで白衣に着替える。

薬を幾つか取り出し死体の横に置いた。

焼死ではないようだ。

一人は腹部を鋭い何かで貫かれもう一人は溶けたガラスが心臓を刺していた。

男性と女性なあたりやはり時雨君の両親なのだろう。

「一番新しいのはまだ試してないから、こっちから使ってみようか」

薬を注射器に取り男性の方に挿した。

被験体は黒くなり形を保ったまま影らしくなる。

ヒロトと二人で見守っていると、それは動き出した。

その動きには意志があり、何故だかこちらを見たときに目が合った気がした。

「・・・あ、あああぁぁあぁ!」

それは叫ぶと暴れ出し、机の上をめちゃくちゃにした挙句逃げ出そうとした。

驚いて行動が遅れたが、急いでそれの後を追う。

「嘉也君、非常にまずいよ」

「分かってるよそんな事!」

それは廊下へ出ると外を目指して走り出す。

その後を追う。

「ヒロト、何とかして!」

「そんな無茶な」

嫌な事は重なるもので、それの走る先に大牙の姿を見た。

一番いてほしくなかった人物だ。

「な、なんだ!?」

それは大牙に襲いかかる。

「仕方ない、殺そうか」

ヒロトは銃を取り出してそれに向けた。

大牙は何故か襟元を掴まれている。

最悪二人とも死んでもいいから早くなんとかしなければ。

「しゃがんで!」

その声にしゃがむと、頭上を銃弾が通過した。

弾は見事にそれに当たり大牙は解放される。

駆け寄って心配なんてしない。

寧ろ走って逃げた。

「待てっ!!」

勿論大牙は追ってくる。

「今のはなんだ!?何故お前が影を!!?」

「君には関係ない!追ってこないでくれ!」

部屋に駆け込み鍵を閉める。

入れない大牙は扉を何度か叩いたが、諦めて去っていった。

「はぁ、疲れた」

「なんで逃げ出したんだろうね」

ヒロトが薬を見ながら言った。

「分からない」

「いきなりの変化についていけなかったのかもね。

もう一人はちょっとずつ薬を投与したら?」

「・・・そうするよ」

こうして研究は少しずつ前進した。


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