第六十七章「変わらない願い」
ヒロトの機嫌はなかなか良くならなかった。
最近あまり口をきいてくれない。
狐は何故かここに居座ってるし、僕はもうどうしていいか分からない。
二十代にもにもなってこんな状況に置かれてる僕はやっぱり不憫だ。
「そういえば」
ヒロトが突然話しかけてきた。
「君の髪は僕の影響で黒くなってるだけだから安心して。
そのうち元に戻るよ」
「そうだったんだ」
それだけ言うと黙ってしまった。
そんなに怒らなくてもと思うが、それ程のことだったのだろう。
機嫌が直るまでそっとしておくしかない。
「嘉也君、いざという時は他人より自分を守るべきだ」
「え?」
「それがもし、狐ちゃんであっても、僕であっても」
「どういう事?」
ヒロトは立ち上がって僕の目の前に立った。
「ちょっと大人気なかったね。ごめん。
でも、本当に無理をしないで欲しいんだ」
「うん、ごめん・・・」
何故そこまでヒロトが僕の身を心配してくれるのかは分からないけれど
これからは気をつけないと。
一週間も経てば、体は全快した。
夕先やとび君に心配をかけたかなと思ったら彼らは僕が一ヶ月寝込んでいた
という事にすら気がついていなかったので、ちょっと落ち込む。
少しは心配して欲しかったのだ。
「だって、ひろと、一ヶ月会わないとか前からじゃない?」
そう言われたら返す言葉もないけれど、
事実を知った今くらい心配してくれてもいいんじゃなかろうか。
「なんやかんや死ぬ事はなさそうだからな、お前」
「いやいや、心配してよ」
「全然辛そうに見えないからねえ」
どこまでいっても心配はしてくれなさそうなので諦める。
今度倒れたらゾンビ精神でこいつらに付きまとってやると決めて。
「でも、髪染めたのは驚きかな」
「これは、ちょっとね。すぐ戻すよ」
「ひろと存在は薄いのに自己主張激しい見た目してるよな」
「そんなに存在感ない?」
二人は同時に頷いた。
世間に溶け込もうとなんてしていないから別に困りはしない。
けれど面と向かって言われると少し傷付く。
「君らは正直だね」
「今更お世辞も何もないだろ」
「それもそうか」
そういえば出会った時から彼らとはこんな仲だった気がする。
「夕先ととび君がもし裏切って僕の敵になったら躊躇せず殺すよ」
「ええ、せめて説得くらいして欲しいな」
「てか無いって、俺らお前に敵わないこと知ってるし」
夕先もとび君も結構実力はある。
でも何故かインドア派の僕の方が強い。
前に喧嘩した時は夕先が止めに入らなかったら大変なことになってた
って夕先が言っていた。
あれでも手加減はしていたのだけれど、センスの問題なんだろうなあ。
「もう二度とお前とは喧嘩しない」
「僕も二人とやり合うのは嫌だなあ」
でも、と僕は続けた。
「二人が道から逸れたりしたら絶対の僕が矯正してあげるからね」
「あはは、ひろと怖い」
「真面目に生きないと殺されるな、これ」
僕は二人を友達だと信じている。
だからこそ僕は言うのだ。
変わらないでくれと。




