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俺と先生のフリースクール  作者: 影峰 柚李
過去編
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第六十三章「烏の群れ」

僕が十八歳になった時、慎也から結婚の報告が届いた。

手紙からは幸せだという事がひしひしと伝わってくる。

年上の女性と結婚したらしいが、あの慎也が結婚とは

彼も成長したって事か。

「十八で結婚かぁ」

今度お祝いに行ってあげないと。

それにしても、知り合いが幸せそうだと何故か焦りを感じる。

僕はこのまま死んでいくのだろうか。

「死にたくないなぁ・・・」

「急だね、死ぬ予定でも出来たの?」

ヒロトが僕の顔を覗き込んだ。

ヒロトは悩みがなさそうで羨ましい。

「悩み多き人生だよ」

「あっはは、悩んでばかりいたら禿げるよー」

人の悩みでさえ、彼にとってはどうでもいい事なのだ。

相談相手には向いていない。

だが、ヒロトは手紙を見て何かを察したらしい。

「まぁ、結婚だけが人生じゃないよね」

「別にそれはどうでもいいんだけど、なんかこの先僕はどうなるんだろうって」

「確かに、君ももう大人だしこのまま研究に繋ぎとめておくのも

なんだか申し訳ないかも。君が嫌なら辞めてもいいよ?」

「もし辞めたら、どうするの?」

ヒロトは少し悩んで「新しい人を探すかな」と言った。

それでは次の人が報われない気もする。

僕としては別にこの生活が嫌なわけではないから辞めようとも思わない。

「辞めないよ、ここまできて」

「そう言ってくれると思った」

ヒロトはにやにやと笑った。


時が経ち、僕はやっとそれらしい物の生成に成功した。

とは言ってもまだ未完成である事に変わりはないけれど。

「何かが足りないんだよね」

「人が作り出したものに自我を持たせるのは簡単には行かないよ」

「うーん・・・」

僕は立ち上がりジャケットを羽織る。

「どこか行くの?」

「気晴らしに散歩でも行こうと思って」

鞄を手に外へ出る。

ヒロトも猫になって着いてきた。

季節は秋。

もう少し着込んでくれば良かったと後悔する。

ジャケット一枚では少し肌寒い。

「もう秋なんだね」

あまり外には出ないから、季節の移り変わりを実感する事はない。

窓は付いてはいるが、窓の前に棚があるのであまり意味を成していない。

研究機関は街の中にあるビルの一つを使っていて、明るい雰囲気はあるが

中にいる人は暗い人ばかりだ。

歩きながらそんなどうでもいい事を考えていると、カラスの群れを見つけた。

カラスの集う場所にはゴミか死骸が落ちていると相場は決まっている。

僕が近づくとカラスは一斉に飛び立ち、その場所には彼らの餌が取り残された。

それは、まだあまり食べられた後のない猫の死骸だった。

「可哀想に・・・」

ヒロトはひょいっと猫の死骸を持ち上げた。

「食べるの?」

「食べないよ、僕をなんだと思ってるの」

ヒロトがいつも何を食べているかは知らないけど、

食べそうな勢いだったので聞いただけだ。

「これ、被験体にしたら?」

「え、ちょっと気が進まないなあ」

「そう?もう死んじゃってるし、別に良いんじゃない?」

「百歩譲って被験体にするのは良いとして、それを持って行くのはちょっと・・・」

猫の死骸を持ち歩くなんてとんだサイコパスだ。

「大丈夫、僕が持って行くから」

そう言うと、ヒロトは猫の死骸を体に取り込んだ。

彼の体はどうなっているのだろう。

四次元?

「じゃあ、先に帰ってるね」

ヒロトは走って行ってしまった。

残された僕は少しの間そこに立ち尽くす。

一人で呆然と立っていると急に怖くなった。

理由は特にないけれど、なぜか取り残された気分だ。

「帰ろう・・・」

このままここに居たら、本当に一人になってしまう気がした。

それは死よりも怖い事だ。



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