第六十章「バランス」
結局、影の真髄に触れる事は出来ないまま
僕は卒業の日を迎える事になった。
卒業式は、流石に出た。
ここは普通の学校とは違い成績関係なく卒業が出来る。
「ひろと、来ないと思ったよ」
「卒業だけしようなんて図々しい奴だな」
夕先ととび君は本当に同じクラスだった。
驚いた事に慎也も同じクラスで、何故か僕の知り合いは一箇所に集中してる。
「慎也!君も同じクラスだったんだね」
「全然気づかなかったね」
「へえ、ひろと他にも友達いたんだ」
「それは皮肉かい?」
「あたり」
ここの卒業式はあっさりと終わる。
一人一人呼ばれることもない。
終わった後四人で写真を撮ったが、思い出も特にない気がする。
「皆研究機関に行くんだね」
「慎也は行かないの?」
「僕は、無理だよ。普通に生きて行こうと思う」
「そっか、時々会いに行くからね」
「うん、ひろとも頑張ってね」
これで、僕の学生生活は幕を閉じた。
卒業しても今までと生活は変わらないだろうし、僕は死ぬまで
こんな感じで生きていくんだなと思っていた。
研究機関に入った僕の生活はやっぱり変わらなかった。
部屋に篭って本を読み漁り謎の薬ばかりを生成している。
その薬を前に僕は頭を抱えていた。
「黒いね」
「うん」
影であるヒロトに血液は存在しない。
だからこう、なんて言っていいか分からないが影の成分を採取し
それを使って薬を作っているのだが、試す相手がいない。
初めのうちは自分で試していたが、徐々にヤバイものになっていると
直感的に分かっていた。
故に、今薬と向き合ったまま固まっている。
「流石にこれは・・・」
「僕もやめておいた方がいいと思う」
「だよね」
ちなみに、少し前に作った薬を試した時は卒倒した。
「被験体は別に死体でもいいと思うんだよね」
「死体なんてどこで手に入れるんだよ」
「うーん、病院?」
「無理だよ、もっとこう、罪人とかじゃないと」
そもそも死体に試すなんてあまりしたくない。
親族とかの問題もあるだろうし。
「まぁ、いいや」
僕はノートを取り出し今日の結果を書き記す。
「それ、日記?」
「日誌。研究成果を書いてるんだ」
「へぇ、字は綺麗だね」
「字はって言ったね」
確かに僕の絵は壊滅的だけど。
微かに笑っているのが分かる。
「見ないでよ、なんか恥ずかしい」
「いや、まぁその絵は置いといて、君そんなこともしてたの?」
そのページには能力者の力について書かれている。
「うん、力を工夫して色々出来ないかなと思って」
「それ、あまり人に見せない方がいいよ。何があるか分からないからね」
「見せる気はないけど気をつけるよ」
この研究そのものが社会的にダメなもののような気もする。
そもそも僕はヒロトの目的をよく知らない。
影を作り出して何をしようというのか。
「気になる?」
「何が」
「僕のしようとしてる事」
声に出したつもりはないのだけれど、僕は頷いた。
「バランスだよ。今はまだ何人か影が残っているけれど
このままだといつか絶滅してしまう。僕も含めてね。
今の内に対策をしておかないと僕らが絶滅して世界のバランスは崩れる。
負の感情を浄化しきれなくなって世界そのものが影になる」
「それは大変だね」
声に感情がこもっていなかったが、本当に大変だとは思っている。
いきなり世界の荷を背負わされた気分だ。
「世界が変わるか、影を増やすか。その二択さ」
世界が変わる事は多分出来ない。
人の心には闇があるし、それを閉じ込めておく事も出来ない。
でも、人口は増え続けるし人の闇は減りはしない。
「まぁ、僕なりに頑張るよ」
「よろしくね」
随分と重荷を課せられてしまった。
プロット不足の関係で矛盾がでてしまい
申し訳ないです。
これからはちゃんとプロットを立てて
書いていこうと思います。




