第五十七章「偏見」
僕たち能力者と一般の人の間にはちょっとした壁があった。
向こうから見れば僕らは変わっているのだ。
もしかしたら存在すら知らないのかもしれない。
何も知らない人の前で力を使ったら、なんと思うだろうか。
その答えが出たのは彼に会った時だ。
学校から少し離れたところにある空き地。
そこには子供が集まって遊んでいる。
たまたま通りかかった僕が見たのはそんな楽しい光景ではなく
数人で一人をいじめている光景だった。
「気持ち悪い」
「悪魔だ」
そんな言葉を投げ掛けながら殴ったり蹴ったり。
勿論僕は止めに入る。
「やめなよ」なんて言わない。
暴力を振るう相手には暴力が一番だ。
何も言わず近付き、集団を殴り倒す。
すると、怖がってそいつらは逃げて行った。
目線を苛められていた方に移す。
彼はすくっと立ち上がると僕を睨んだ。
「彼奴らは、死ぬべきだ。何故手加減をした!」
まさかそんな事を言われるとは思っていなかったから驚く。
「別に手加減なんてしてないよ」
笑顔で返す僕を見て彼は舌打ちをした。
「お前、ヒロトだな。夕先とかと仲の良い」
「あれ、僕って有名人?って事は君もあの学校の生徒?」
「俺は大牙魁斗だ、覚えておけ」
それだけ言うと彼は行ってしまった。
「無愛想な奴」
暫くして、僕の研究も進み得体の知れない薬がいくつも出来上がった頃
大牙君が僕の前に姿を見せた。
「おい」
相変わらずの仏頂面で僕の行く手を阻む。
「何か用かい?」
「俺と勝負しろ」
「え?」
何の説明もせずに大牙君は刃物を作り出し僕に襲いかかってきた。
が、返り討ちにした。
現在僕の足元で伸びている。
「ちょっと、やりすぎたかな」
いや、正当防衛だよね。
「大牙君ー?生きてるー?」
死んでたら僕が殺人罪になるから意地でも生きてて欲しい。
ぺちぺちと頬を数回叩くと微かに反応した。
「うぅ・・・」
「良かった、生きてて」
大牙君はよろよろと立ち上がるとまた、僕を睨んだ。
随分と嫌われてしまったなぁ。
「お前は、どうして力があるのに何もしない。
俺に力があれば、彼奴らに思い知らせてやるのに・・・」
「え、そんなくだらない事考えてたの?」
「くだらなくないだろ!昔は俺ら能力者が彼奴らを守っていたのに
彼奴らのせいで全ての均衡が崩れて関係がなくなったら俺らをゲテモノ扱い。
おかしいだろ!?」
「昔の事だし、どうでも良いんじゃない?」
「お前の頭は平和ボケしている」
そう言い捨てると僕の前を去った。
「なんなんだよ、もう」
僕が何をしたって・・・。
「ひろとー!」
立ち尽くしていると、夕先ととび君が走ってきた。
「見たよ!さっき大牙先輩と喧嘩してたでしょ?」
「え、先輩なの」
「知らなかったの?まぁ、成績の低いヤンキーだって聞いてるから
どうせ返り討ちにしたんでしょ」
確かに、勝負を挑んできた割には弱かったなぁ。
この間も苛められてたし。
「どうせ火種はヒロトだろ」
「えぇ、そんな事ないよ。なんか急に襲われたからつい」
「ついねぇ」
「ヒロトさぁ、あまり目立った事はしないほうが良いと思うよ。
先輩とか普通に強い人とかいるしさ」
「気をつけるよ」
別に生き方を変えるつもりは無いけど。




