第五十六章「先生の先生」
白峯さんの話を聞き終え、僕たちは外へ出た。
狐の子は掃除が終わったのか姿は無い。
「さっきの子って、お孫さんか何かですか」
「そんなところじゃな」
「へぇ・・・」
似てないな。
いや、反抗期なだけかもしれない。
「もう帰るのか?」
「うーん、別に用事は無いけど帰るかな」
「なら、しばらくここに泊まっていきなさい。
嘉也君といったかな、君、戦闘技術はどのくらいあるのかね」
どのくらいと聞かれると困ってしまう。
ヒロトに教えてもらって、色々創ったりする事は得意だが
武術はそんなにでもない。
「普通、かな」
「あの子に剣を習うといい。刀の扱いは達人級だからの」
「え、あの狐の子に?」
嫌だなぁ、とは口に出さないけど嫌だな。
「確かに、鍛えた方がいいかもね」
ヒロトも賛同した。
という事は、多分逃げられないだろう。
「嫌だけど」
予想通り、というか何というか。
狐の元に行ってお願いしたらそんな言葉が返ってきた。
普通にお願いしてもダメだと分かっていたし、普通にお願いする気もない。
「やっぱりそうだよねぇ、だって君弱そうだもん」
「はぁ?」
「女の子だし、僕に教えるなんて無理だよね」
「何、差別してるの?」
狐は二本、竹刀のようなものを創り出すと一本をこちらに投げた。
「そういう事は私を負かしてから言いなさい」
「望むところさ」
やっぱり、挑発には乗るタイプだった。
滅茶苦茶怒っている。
多分、本気でくるな。
勿論僕は剣術の経験なんてないので、非常にまずいわけだが。
「いいよ、どっからでも掛かって来なよ」
僕は竹刀を握りしめて足に力を入れた。
よく分からないけど、切り掛かっておけばなんとかなるかもしれない。
と思っていた僕が甘かった。
僕の攻撃は見事に全て避けられて、カウンターを食らった。
「うっ・・・」
「はぁ、口程にもない」
「はは、実は握るのも初めてなんだ」
「・・・教えてあげるけど手加減はしないからね」
こうして僕と狐の特訓が始まった。
滞在期間は二、三週間程度だったが、一日中稽古をつけられていたため
僕の腕はかなり上がった。
剣術だけでなく、武術も教えてもらったため機動力は上がっただろう。
全身傷だらけだが、良しとする。
「色々お世話になりました」
「君は本当にセンスがある。よく頑張ったのう」
「私の教えが良かったのよ」
「そうだね、ありがとう」
狐は照れたのかそっぽを向いてしまった。
「じゃあ、生きてたらまた来るよ。白峯」
「近いうちに来ておくれよ」
白峯さんとヒロトが別れを言っている間に僕は狐の側へ行く。
「ねえ、君名前は?」
「教えない」
即答だった。
「ふーん、じゃあ狐って呼ぶね」
「じゃあ、貴方は馬鹿ね」
「それはないだろ!?」
結局、狐と僕はそんな仲のまま別れた。




