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俺と先生のフリースクール  作者: 影峰 柚李
特殊部隊編
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第五十一章「助ける理由」

おかえり時雨君。そして…

月曜日、俺は先生と一緒に喫茶店で話をしていた。

何の意味もない、世間話。

先生の元で学び始めて随分と経った。

そろそろ教わる事もない。

この人の元を離れる時が来る。

それは遅くも早くも来ることなのだ。

「僕はここにいてくれてもいいけどね」

そう言ってはくれるが、いつまでも世話にはなれない。

夏休みが終わった頃には、俺もまた一人で生きていくべきだろう。

本当にいつまでもいたらきっと俺は離れることが辛くなってしまう。

「でも、この恩は返したい。俺に出来ることなら何でもする」

「何でもかぁ、僕は君が生きててくれればなんでもいいんだけどなぁ」

眠そうにあくびをすると先生は目を閉じてしまった。

その時、店のドアが開いた。

閉店の札を掛けておいたのに誰だろうと思ったら遠藤だった。

「こんばんは」

「もう閉店だ。ちゃんと見ろ」

「ちゃんと見て入ってきたんだよ」

「そうか、帰れ」

俺の言葉を無視して遠藤はカウンターに座った。

何でこいつこんなに図々しいんだ。

「マスターさん寝てるんですか?」

「起きてるよ、眠いけど」

「動けないんですか?」

「何でそんなこと聞くんだい?」

遠藤はいつも変な質問をする。

その度先生は必要なのか聞いているが

遠回しに答えたくないと言っているんだろうな。

「何となくですけど」

「何となく、か。帰ってくれないかい。

今日は機嫌が悪いんだ」

「それは無理ですね」

遠藤がニヤリと笑った瞬間、電気が消えた。

「停電!?」

それと同時に店に何者かが入ってきた。

突然の事に脳が追いつかない。

「時雨君!逃げろ!!」

突き飛ばされて尻餅をつく。

暗闇に目が慣れず何が起こっているのか分からない。

ただ、先生が応戦していることは音でわかった。

「ふふふふ、弟子を庇うとは美しい愛ですねぇ」

遠藤の笑い声が聞こえる。

「は、はは、やっぱりそうだったか・・・。

何だか怪しいと、思ってはいたんだ・・・・」

先生の声は随分と苦しそうだ。

目が慣れてきて俺が最初に見た光景は悲惨なものだった。

遠藤の持つ凶器が先生を貫いている 。

「先生!?」

「だい、じょうぶ・・・、時雨君は、逃げて・・・」

「そんな事・・・!」

「そう、そんなことさせるわけ無いじゃないか!」

遠藤がそう叫ぶと俺の目の前が〝燃えた〟

「君は火が苦手なんだっけ?まぁ、誰でも焼かれるのは嫌だよねぇ。

ふふ、こいつは貰っていくけど。精々生き延びてみなよ」

笑って、遠藤が去っていく。

「遠藤っ!!てめえっ・・・!!」

「ふふふ、じゃあねぇ」

遠藤の姿が消えた。

「ちっ、あっつ・・・」

まだ火は弱い。

今のうちなら駆け抜けて行ける。

そう頭では思っていても体が動かない。

「くそっ、こんな所で・・・!」

死ねない。

先生を助けなければ。

行ける、今しかないんだ。

動け、動くんだ!

足を動かす、それだけを考えて走った。

一瞬、熱さを感じたが本当に一瞬だった。

俺は外へと出る事に成功した。

「火を、消さないと・・・」

そう思ったが、俺の意識は遠のいてしまった。


「おい、起きろ」

水をかけられた。

寝耳に水とはこの事か。

目を開けると狐の姿があった。

「外傷はない。ストレスと疲労だろう」

「お前が助けてくれたのか?」

「いや、私は場所を提供しただけだ。

お前を見つけて連れ出したのはそこにいる男だ」

狐の指差す方を見ると、見覚えのある男が立っていた。

確か、特殊部隊の・・・。

名前なんていったっけな。

「えっと、ありがとうございます・・・」

「助けを求めに行ったのに助ける事になるなんてな」

助けを求めに・・・?

あぁ、先生に会いにきたのか。

「そうだ、先生!助けに行かないと!」

「落ち着け、まずは話を聞かせてくれ」

「おい、教え子君。一つ聞きたいのだが、あの猫はどうした」

狐が俺の服を持って聞いてきた。

取り敢えず服を受け取る。

「・・・分からない。喫茶店が燃える前まではいたと思うが」

「そうか、なら大丈夫だろう。病気を患っているとはいえ彼奴は強い」

それと猫となんの関係があったのだろう。

「少し、ここで待っていろ」

そう言うと狐は部屋を出てった。

今更だが、ここは何処だろう。

お寺のような場所だが。

「そういえば、自己紹介をしていなかったな」

男は俺の方へ歩いてくると俺の前に座った。

「俺は神矢だ。神矢研二」

そういえばそう言っていた気もする。

「俺は、時雨だ」

苗字は正直好きではない。

呼びづらい事は自分でも知っている。

「実は、俺の部下も捕まってしまったんだ」

「あぁ、この前横にいた奴か」

「それで、ヒロトさんも連れて行かれたんだろう?」

「ああ、俺を庇って・・・」

「そうか、俺も同じだ」

そこで二人とも黙ってしまった。

その静寂を破ったのは神矢だった。

「なぁ、お前はどうしてあの人を助ける?

一緒にいた時間だって長くはないはずだ そんな奴のために命を張れるのか?」

確かに、俺と先生が出会ってから一ヶ月ほどだ。

信用を築くにはあまりに短い期間と言える。

だが、それでも俺は助けに行かなくてはならない 。

「確かに、命を張る関係でもないのかもな」

「じゃあなぜ、お前はあの人を助けに行く」

「俺が生徒だからだ」

あの人の生徒である。

それ以外に理由はいらないと思った。

「逆に聞くが、お前も部下のために命を張れるのか」

「当たり前だ」

「へぇ、なんでだ?」

「大切な〝相棒〟だからな」

どうやら俺とこの人は気が合うらしい。

手を差し出す。

相手は意図を察して手を握った。

「よろしく」

「あぁ、よろしく」

「仲良くしているようで何よりだ」

いつの間にか狐が帰ってきていた。

狐の手にはお面が二つ握られている。

狐の被っているものとは違って目の部分のみのものだ。

「これを付けろ」

そう言って投げてきた。

「これは?」

「それは一種の増強剤のようなものだ」

「へぇ、そんなものがあるのか」

「それと、お前」

狐が神矢を指差す。

「道案内をしろ。私も手伝う」

「あぁ、任せてくれ」

「三人で、乗り込むぞ」

三人でやれるのだろうか。

あまりのも少なすぎじゃないか。

でも、やるしかないのか。

「ああ。行こう」

先生、絶対に助けるからな!


さようなら。

次は先生のターン。

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