第四十八章「秘密基地」
学校に入ってすぐ、学校が嫌いになった。
小さい頃から他とは違うんだと言われていたせいか
学校という場所が檻のように感じられたのだ。
だから俺は学校に行くフリをして住宅街の方に遊びに行くようになった。
この場所を見つけたのはその頃で、見つけた時は別世界かと思ったくらい
この場所に心惹かれた。
初めは本当に一人だったが、ある日、彼奴が来た。
そいつは目を真っ赤にして空を眺めてた。
俺は残念な気持ちと嬉しい気持ちが入り混じって複雑な表情をしていたと思う。
でも、やっぱり嬉しかったのかも。
俺はそいつに話しかけた。
「ねぇ、何泣いてるの?」
「・・・誰?」
それが俺と彼奴の最初の会話。
「お前こそ誰だよ、ここ俺の秘密基地なのに」
「僕は、人間だよ」
「そんなこと知ってるよ」
最初、なんだこいつと思った。
話してみても、やっぱり変な奴だったけど。
「お父さんとお母さん、死んじゃったんだ」
「それで泣いてたの?」
「うん、僕、一人ぼっちになっちゃったから」
「兄弟とかいないの?」
「いない」
俺は急にそいつが可哀想になって、友達になろうと思った。
今にも死にそうな顔で空を見上げるそいつは見てられない。
「俺と友達になろうよ!」
「やめといた方がいいよ、僕変だから」
「そんな事ないって、そうだ、明日もここに来てよ。
ここを二人の秘密基地にしよう!」
それからなんやかんやでそいつと毎日会うようになった。
話していくと意外と面白い奴で一緒にいて飽きない奴だった。
それが日常になってたある日、秘密基地に奴らが来たんだ。
「なぁ、なんで名前教えてくれないの?」
「知っても、どうせすぐ会えなくなるから。
知らない方が忘れられるでしょ?」
「そんな、俺は忘れたくないのに・・・」
その時、草が揺れる音がしたんだ。
とっさに振り返った時にはすでにP2が俺に襲いかかってた。
あの時は流石に死んだなと思った。
でも、俺は生きてる。
「危ない!!」
そう言って、彼奴は俺を突き飛ばした。
「お、おい!」
P2はそいつに噛り付いた。
血が出ていいたのは覚えている。
でもP2はすぐに消えて、いなくなっていた。
「だ、大丈夫か!?」
「・・・帰らないと」
「え?」
「あの人に心配されちゃう。帰らないと」
そう言うと、そいつは立ち上がって歩き出した。
傷は浅かったみたいだけど、あの時は化け物じゃないかと思った。
「ねぇ、約束しよう」
唐突に彼は言った。
「僕が君を覚えてたらまたここに来て
あそこの木に印を残しとくから、もし君も覚えていて
それを見つけたら、返事を書いておいて欲しいんだ」
「もう来ないの?」
「来れないかも」
「じゃあ守るよ、その約束。忘れないから」
「ありがとう、君は本当に良い人だ」
あれ以来彼には会ってないし、印もない。
きっと忘れてしまったんだろうな。
「ん?そういえば・・・」
「どうしたんだ?」
神矢さんの話を思い出す。
神矢さんはP2が出たのは七年前だと言っていた。
でも俺が最初にP2に会ったのは十一年前。
随分と差があるようだが。
「なんでもないです、ちょっと昔の事を思い出して」
「そうか」
「リフレッシュできました?」
「あぁ、大分楽になったよ。ありがとう」
「それは良かったです!」
そうだ、俺が印を残しておこう。
もし、いつか彼奴が思い出した時
もう一度会えるように。




