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俺と先生のフリースクール  作者: 影峰 柚李
先生と生徒編
38/87

第三十七章「大丈夫」

「何も雨の日に来なくても」

先生が紅茶を出しながら言った。

狐は紅茶を受け取ってもお面を外そうとしない。

どうやって飲むのだろうか。

「たまたまだ。文句ならお前の教え子に言え」

「そういえば時雨君どこか行ってたの?」

「ちょっと、散歩に。そしたらP2に襲われて助けてもらったんだ」

「なるほどねぇ」

紅茶を飲もうとして眼鏡が曇っている。

先生は思い出したかのように眼鏡を外した。

付けてること忘れてたんだな。

「あ、そうだ時雨君。さっき本棚を漁っていたら良い物を見つけたんだ」

そう言って先生が取り出したのは一冊の本だった。

「図鑑?」

「そう、いろんな武器が載ってるから参考にしなよ。

そろそろ武器も作れるようになった方が便利でしょ?」

パラパラとページをめくる。

見たことのない銃やナイフ、ハンマーなども載っていた。

「細部まで覚えておけば弾丸と同じように作れるはずだよ」

「これを覚えるのか・・・」

時間がかかるだろうな。

初めはナイフとか簡単なものからにしよう。

「絵に描けば良い。それが一番の近道だ」

狐は近くに置いてあった紙をとりさらさらと描いて見せた。

普通にうまい。

「俺は絵なんて描けない」

「大切なのは覚えることだ。見た目は問うまい」

そう言うと、俺に紙とペンを渡してきた。

渋々描いてみる。

絵なんて描いたことはない。

見て描いているのにどこか違ってくる。

でも確かにこれは覚えるかもしれない。

「こんな感じか」

「ふむ、悪くない」

「へぇ、意外と描けてるじゃん」

「バカに比べたら何倍も上手い」

「絵が下手なのは否定しないけど、馬鹿じゃない」

狐は先生の名前を呼ばない。

そういえば先生も狐の名前を呼ばない。

暗黙の了解でもあるのだろうか。

そもそも知らないという事もある。

「いいや、今も昔もお前は馬鹿だ。

病気は良くなったのか?」

狐が言うと、先生は言葉に詰まった。

「治ってないけど・・・」

「だから馬鹿だというのだ。

自分の体を守れない奴が人を守るなんて出来るわけがない」

「うっ、言葉もありません・・・」

先生が圧倒されてる。

珍しい事もあるものだな。

「あまり無理をするな、死ぬぞ」

「あはは、そうだね。僕もまだ死にたくない」

「まだ、か」

そう言うと狐は立ち上がった。

「そろそろ行くとしよう、紅茶美味かったぞ」

カップの紅茶は無くなっていた。

いつの間に・・・。

「何か分かったら教えてね」

「お前が生きてたらな。教え子君、馬鹿をよろしく」

「あ、ああ」

狐はまだ雨の降っている外へと出て行った。

結局濡れるのか。

「人の揚げ足をとるのが上手いなぁ」

先生は、俺が思っているより苦労している。

「無理、するなよ」

「時雨君まで老人扱いする」

大丈夫、と先生は言う。

「僕は元気だよ」

そう言って笑う。

大丈夫という言葉こそが一番心配を誘うのだと気づいて欲しい。


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