表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と先生のフリースクール  作者: 影峰 柚李
先生と生徒編
36/87

第三十五章「散髪」

最近、髪が伸びた。

いや、生きているから伸びるのは当たり前なのだけれど

少々日常生活に支障をきたしてきている。

「前髪、邪魔だな」

手でよけていると、谷口がヘアピンを差し出してきた。

「はい」

「え」

「使っていいよ」

水色の可愛らしいピンだ。

これをつけろというのか。

「あ、水色嫌い?」

「いや、そうじゃなくて」

谷口はいたって真面目だ。

悩みに悩んだが、断るのも申し訳ない気がする。

俺はピンを受け取り髪を留めた。

やっぱりこれは無しだと思うのだが。

「似合ってるよ!」

谷口はなんだか嬉しそうだ。

そこへ、ヒロトの餌を買いに行っていた先生が帰ってきた。

俺を見るなり吹き出す。

「な、何してるの?似合ってる、ね」

「笑うなよ」

「いやぁ、ごめん」

あまりにも似合っていたから、と言いながら先生は買い物袋を

カウンターの上に置いた。

そこへヒロトが寄ってくる。

「髪伸びたねぇ」

「かといって切るのも面倒なんだよな」

「それでいいんじゃない?」

「いや、流石にこれは・・・」

「えぇ、似合ってるのに」

谷口が残念そうに言った。

言うほど似合ってもないだろう。

「僕が切ってあげようか」

そう言って先生はハサミを取り出した。

「嫌だけど」

「安心して、下手じゃないよ」

「信用ならねぇな」

上手いよ。ではなく下手じゃないよという辺り怖い。

いや、この人なら散髪くらいできるのかもしれないけど。

人として信用ならない。

「ちゃんと道具もあるよ」

「そんなに切りたいのか」

「イメチェンしようよ、イメチェン」

「絶対嫌だ」

結局切られることになったのは

口論から三十分程経った頃だった。


イメチェン、はしなかった。

前と同じいや、それより少し短いくらいになり

視界がすっきりとした。

「うん、いい感じ」

「時雨君かっこいいー!」

「前と大して変わってないだろ」

「そうかなぁ」

雰囲気変わったけどなぁ。と谷口は笑った。

気のせいだろう。

「それにしても、この店色んなものあるな。

その棚の中何が入ってるんだ」

「僕もよく分からないけど、見てみる?」

俺は先生の方へと回り込んで棚を覗いてみた。

「うわ、何だこれ」

中は色んなものでごった返している。

手前のものを引きずり出してみると、それはスピーカーだった。

「へぇ、そんなものまで入ってたんだ」

「知らなかったのか」

「ここは元々空き家だったんだけど、前に住んでた人が色々

置いていったみたいでね。一応片付けはしたんだけど

全部は把握してないんだよね」

「そうなのか・・・」

なんだか中を漁るのが怖くなってきた。

俺はスピーカーを横によけて奥のものを引っ張り出す。

「何だこれ」

少し大きな箱のような、いや、形状的には棺桶に近い。

気の箱のようなものが出てきた。

「それは、時計かな?」

箱を開けてみると、確かにそれは時計だった。

「わぁ、鳩時計!」

「まだ使えるんじゃないかな」

そう言って先生は時計を布で拭き始めた。

「電池は流石に切れてるみたいだけど、使えそうだね」

「鳩時計じゃないよな・・・」

「まぁ、鳩ではないかな」

谷口が少し残念そうにしていた。

鳩の何処にそんな魅力があったのだろうか。

「他には何かあった?」

「ん?そうだな」

俺は更に奥のものを引きずり出す。

今度はぬいぐるみが出てきた。

かなり大きめの熊のぬいぐるみだ。

「凄いおっきいね、可愛い!」

「こんなものまであるんだな」

「ちょっと埃を被っちゃってるね」

「これ、貰ってもいいですか!?」

谷口が目を輝かせて言う。

「構わないよ。寧ろそうしてくれると嬉しいかな」

「やったぁ!」

凄い嬉しそうだな。

高校生にもなって熊のぬいぐるみか・・・。

夢見る少女かと言いたくなる。

「僕はこの空き家を見た瞬間、直感的に

喫茶店を開こうと思ったんだ。

きっと前に使ってた人も喫茶店をやっていたに違いないよ」

「それはどうだろうな」

「まぁ、どっちでもいいけど。喫茶店を始めて良かったと思うよ。

世界が広くなった。時雨君も多くの人と付き合う仕事に就くといい」

「なんだよ、親みたいなこと言って」

「あはは、僕の生徒だからね」

なんだか嬉しいような気がしたのは気のせいだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ