第二十四章「五時間目の授業」
「時雨君!」
もうそれは口癖と化しているような気がする。
何かある度に俺の名前を呼ぶのはやめて欲しい。
「なに」
「今日は授業やるよ!」
いつになく元気な気がするのは気のせいだろうか。
いや、気のせいではないな。
「まだ何かあるのか」
「当たり前じゃないか」
当たり前ではないだろう。
充分戦闘に必要な事は教わった気がする。
「でも、基礎は終わり。これからは応用だ」
どうせ実践授業だろうな。
そういえば、特殊部隊の人に全く会わないのだが
彼らは住宅街の方にはいないのだろうか。
「結構派手にやってるけど、特殊部隊に見つかるんじゃないのか」
「それはないよ、彼奴らは街からほとんど出ない」
「それってどうなんだ」
「さぁ、僕は別に構わないけどね」
街は守られて、住宅街は見捨てられる。
おかしな話ではないだろうか。
何の為の特殊部隊だ。
一般市民を守れよ。
「あ、でも僕みたいなのがいるから
一応平和は保たれてるよ、安心して」
「他にもいるのか」
「まぁ、一応ね」
なんだ、仲間がいたのか。
というか、この人が平和を守っているようには見えないのだが。
P2って意外と数が少ないのか。
「そんなことより時雨君、外行くよ」
そう言って、ジャージを投げられた。
「さて、時雨君。今日は複数の敵を想定した授業だ」
想定じゃなくて実際にやるんだろうな。
「それで、どうやるんだ」
「勿論、P2を呼ぶ」
都合よく複数集まるとは思えないんだがな
先生は見てて、と言ってナイフを取り出した。
何をするのだろうと見ていると、いつも通り手に刺した。
手から血が出ることなど気にせずに
持っていたナイフを空へと投げた。
次の瞬間、ナイフが消えた。
「来たね」
後ろを見ると、三匹くらいのP2がナイフを眺めていた。
鳥のような姿をしているが、飛んできたのだろうか。
「飛行型のP2は複数で行動している事が多い。
彼らを釣るにはこれが一番さ」
「へぇ、危ねぇな」
三匹だったから良かったが、もっと集まってたらどうなってた事か。
「さて、時雨君。ゆったり話している暇もないのだけど」
「ちょっと、飛んできてないか。大丈夫なのか」
「避けながら聞いてね」
相変わらず無茶苦茶なことを言う。
悪態を吐こうと思ったが、P2が邪魔して何も言えなかった。
「時雨君!大人数相手にはまず相手を見るんだ!」
相手を見ろと言われてもな。
三匹が全く違う動きをしているようにしか見えない。
「よく見て!」
先生は随分と簡単そうに避けている。
なんなんだあの人。
ポケットから手出せよ。
「違う動きをしていてもきっと一本につなげる事が出来るはず!」
「はぁ!?意味分かんねぇよ!」
「どういう順序で倒すか考えるんだ!」
順序って言われても彼奴ら皆同じ顔してるから
一度動くともうどれがどれだか分からない。
「頑張れ時雨君!僕はちょっと避けとくね」
「あ、逃げんな!」
気づくと先生は姿を消していた。
「ったく、なんだよ繋ぐって」
相手をもう一度見る。
それぞれが違う動きをしていて、攻撃が予測できない。
「あぁ、もうお前!」
一つのP2を指差す。
「お前からやってやる」
P2は嘲笑うかのようにこちらに突っ込んできた。
「舐めるなよ」
練習のおかげで大分早く弾丸を作れるようになった。
この程度のスピードなら間に合う。
俺は弾を装填し引き金を引いた。
弾は見事P2に当たり、P2は消滅した。
「よし、次はお前だ!」
また、違うP2を指差す。
一点に集中すれば一対一と変わりない。
一気に二つの弾を作る。
さっきの奴に集中して狙いを定める。
よし、いける。
順番に弾を撃ち込む。
一匹には当たったが、もう一匹は外した。
当たるとは思ってない。
一回避けて間合いを取った、はずだったんだが
相手を見失った。
「しまった・・・!」
いつの間にか後ろに回り込まれていた。
避けきれない!
「くそ、来るな!」
前回の防衛術がここで役に立った。
間一髪で回避する。
「終わりだ!」
弾を装填した記憶はないのだが、発砲準備が整っていた。
引き金を引いただけで発砲する。
「あ、危ねぇ・・・」
今のは先生が弾を作ってくれたのか?
「時雨君凄い!やっぱ才能あるよ」
「いや、助かった。先生の援助が無かったら危なかった」
「え?僕は特に何もしてないけど」
軽々と塀を乗り越えながらそう言った。
なら、さっきのは?
「なんだ、無意識だったのか。
てっきり装填をマスターしたのかと思ってたよ」
そうか、さっきのは自分でやったのか。
でもどうやってやったのか自分でも分からない。
「まぁ、出来たんならそのうちマスター出来るさ」
「そうか」
「って事で今日の授業終了!良くできました」
そう言うと、先生は俺の頭を撫でた。
その手を軽く振り払う。
「やめろ、鬱陶しい」
「傷つくなぁ」
先生は笑いながら、そう言った。




