第十八章「火傷」
突然、視界が真っ赤になった。
熱くて、息が苦しくて、必死に助けを求めた。
両親の姿は見えない。
逃げようにも足が動かない。
自分は死ぬんだ。
そう思った時、誰かに抱きかかえられた。
そのまま、火から離れていき、助かった。
「大丈夫?」
そう言いながら青年は微笑んだ。
朝起きると、身体中が筋肉痛で起き上がるのに苦労した。
昨日は先生に死ぬ程特訓されて、怪我も多い。
痛む身体に鞭を打ち着替えて部屋を出た。
「時雨君、おはよう。よく寝れたかい?」
「あぁ、あんたのお陰でぐっすりだったよ」
皮肉を込めて言ってやると、
そりゃ良かったね。と笑いながら返された。
相変わらず適当な人だ。
「嫌な夢を見た」
「へぇ、どんな夢?」
「事故にあった時の夢だ」
実際に記憶があるわけではない。
だから本当にあんな感じだったのかは分からないが
なんとなくあんな感じだったのだろうなとは想像がつく。
「一緒に事故に遭ったのかい?
よく生きていたね」
「あぁ、夢の中では誰かに助けてもらった」
実際は消防隊員とかに助けてもらったのだと思うが
夢の中では黒髪の青年だった。
まぁ、所詮夢だもんな。
「そういえば、腕に火傷の痕があったが、それはどうしたんだ?」
「見られてたのかぁ。恥ずかしいなぁ、見えないように長袖着てたのに。
昔、ちょっと色々あってね。大したことじゃないんだ」
「あぁ、なるほどな」
多分特殊部隊関係だろうな。
この人本当に世渡り失敗してるよな。
「あれ、時雨君は火傷痕残らなかったの?」
「まだ小さかったからな、新陳代謝のお陰か全然残らなかった」
「若いっていいねぇ」
若いというより幼いだろう。
先生だって若いに分類される年齢だっただろうに。
年齢知らないけど。
「僕なんかもう四捨五入したら三十路だもんなぁ」
「微妙な表現するなよ」
別に年齢なんてどうでもいいけど。
「そんな事より時雨君、今日は水曜日だよ」
一瞬、だから?と思ったが、そうか、谷口が来るのか。
今日は賑やかな一日になるだろうな。




