第十六章「影」
「時雨君、弾丸は作れるようになったかい?」
夏休みに入って一週間程が過ぎた頃だった。
俺は日々の練習のお陰か、ある程度形を作れるようになった。
「まぁ、形は」
「それはなによりだね」
「本当にこれで撃てるのか?」
「撃てるよ、なんなら今日試し打ちに行く?」
そんなちょっと乗ってく?みたいなノリで言われても困る。
試し打ちと言ってもP2が都合よくいるとも思えない。
いても困るけど。
不安は色々あったが、撃ってみたい気持ちもあったので
やるだけやってみる事にする。
いつも通り、夜中にジャージを着て立っている。
側から見たら怪しい事この上ないのだが、今のところ
見つかった事はない。
この時間、うろつかないように街が呼びかけているからだろう。
そのおかげで随分と楽に授業が行える。
「さて、時雨君。P2を呼ぼうか」
「血だよな」
「そう。あ、因みに気づいてるかも知れないけれど
僕達は粒子のお陰で普通の人より傷の回復が早い。
遠慮なく切っていいよ」
傷の回復が早いからといって遠慮なく切りたくはない。
それに、痛い事には変わりないのだ。
あまり、自傷的な行動は取りたくないのだが、仕方がない。
俺はナイフで指先を切った。
地味に痛い。
暫くすると、鈴の音が聞こえてきた。
「なんだ?」
「来たみたいだね」
先生の視線の先には、小さな灯りが浮いていた。
「灯りを使うなんて、変わったP2だね」
先生が言うと、灯りの影が人の形になった。
「私は、いらない子。
貴方達もいらない子。
自分が生きるために、生まれてきた。
だから、もう影じゃない」
「何を・・・」
「時雨君!避けて!」
先生の声に反射的にしゃがむと、頭上を何かが過ぎ去った。
前を見ると、先程のP2は姿を消していた。
「私は味には興味ない。
食べれればそれでいい。
そうすれば、きっと分かる」
後ろを見ると、P2が口を開けていた。
いつか見た大きな口だ。
「時雨君、今だよ!撃つんだ!」
「あ、あぁ!」
集中して、弾丸を作る。
焦ってはいけない。
落ち着いて、素早く行動するんだ。
P2が、動き出すのが見えた。
落ち着け、もう少しだ。
距離が徐々に近くなる。
大丈夫、最悪先生が助けてくれる。
「できた!」
弾丸を慣れない手つきでリボルバー銃に押し込み装弾した。
先生に言われたことを思い出しつつ、両手で構え、引き金を引いた。
銃声が、響き渡る。
反動で後ろに転んだ。
閉じていた目を開けると、P2が倒れ込んでいた。
死ぬと消えるはずなのだが。
「時雨君、無事かい?」
「な、なんとか」
「それにしても、しぶといP2だね」
P2に目をやると、P2は立ち上がろうとしていた。
「わ、たしたち、は、ちがう・・・。
なにかが、ちがうのだ!」
P2は必死に叫んだ。
何を意味しているのかは全く分からない。
先生は理解しているのだろうか。
「悪いけど、君らは存在しちゃいけないんだ。
生まれてきてはいけないものだったんだよ」
「なぜ!なぜだ!
ならなぜわたしはうまれた!」
「さぁね、僕が知るわけないじゃないか」
先生は銃を構えた。
ショットガンではなく、普通のピストルを。
「さようなら」
最後まで、P2は「なぜだ・・・」と呟いていた。




