第十三章「裏切り者」
飛んできたナイフを先生が華麗に叩き落とした。
「おや、学校一のお調子者アホ烏君じゃないですか」
「俺の名前は飛烏だ!」
また、ナイフが飛んでくる。
今の流れでなんとなく察した。
この人、特殊部隊の人だ。
「裏切り者が調子にのりやがって、生きて帰れると思うなよ」
「裏切り者?心外ですねぇ、個性が強いって言ってください」
相手が本気で切れるのが分かった。
目には見えないが、怒りのオーラが感じられる。
先生が煽りすぎたせいだろう。
「良い度胸じゃないか、落ちこぼれ!今ここでぶっ殺してやる‼」
そう言うと、相手の体の周りに数十本のナイフが出現した。
俺は先生に視線を向ける。
先生はいつもの笑みを浮かべていた。
「時雨君、逃げようか」
先生はニコリと笑い、俺の手を引いた。
次の瞬間、俺は宙を舞っていた。
「た、たかっ!?」
「逃すかぁぁぁ‼」
気づけば相手も宙にいた。
「先生!?」
「時雨君、着地したら全力ダッシュね!」
「え、ん?はい?」
考える暇もなく、俺は地面へと辿り着く。
靴のおかげかよろけることも痺れることもなく、綺麗に着地した。
「時雨君、付いてきて!」
先生が走り出す。
俺はその後を追いかけた。
「逃げるなよ、ヒロトぉぉ?」
後ろからはさっきの奴が付いてくる。
時折ナイフが飛んできたが、なんとか避けた。
「しつこいなぁ」
「どうするんだ?」
「大丈夫だよ、多分」
多分か、心配だなぁ。
アテもなく走っていると、大通りに出た。
人通りが多く、車も通っている。
ここで問題を起こすのは良くないだろう。
「ここまで来れば彼奴も追いかけては来ないよ」
後ろ振り返ると、確かに付いてきてはいなかった。
人ごみが嫌いなのだろうか。
「迷惑な奴らだよねぇ」
「先生が何かしたのか?」
裏切り者って言われてたし、何かした事には違いないんだろう。
「昔の話だよ、部隊のお偉いさんに楯突いたら裏切り者だ!
って言われちゃったのさ」
「そりゃ、そうなるな」
世の渡り方を知らない人だ。




