第十章「三時間目の授業」
町から少し離れたとこにある住宅街では、夜になると人通りはほとんどない。
夜の十一時を回る頃には家の電気も消え、街灯の光だけが道を照らしていた。
そんな雰囲気とは似つかない明るい声が夜道に響いた。
「時雨君、想像力はあるかな?」
「残念ながらかなり乏しい」
今日の授業は技能教科二の俺には厳しい授業みたいだ。
「まぁ、なんとかなるよ」
そろそろこのいい加減さにも慣れてきた。
不思議なことにこの人が言うと本当になんとかなってしまうのが悔しい。
そのはずだったが、事件が起きた。
とかが無いのは嬉しいことだ。
「時雨君、君にあげたリボルバー銃の弾丸の形は知っているかい?」
「知らないけど」
普通の人間が生きていて銃弾の形なんて必要になると思わないだろう。
そんなのミリオタかサバゲーやってる人くらいだろう。
「安心して、僕も知らない」
何に安心していいのか全くわからない。
「こう、ニット帽みたいな小さな硬い物体だと思ってさ。ちょっとやってみて」
「そんな事言われてもなぁ・・・」
取り敢えず、やるだけやってみる事にした。
指先に力が集まるように意識する。
なんとなく、何かが集まってくるような気がする。
多分気のせいだが。
そのなんとなく集まった力を指から出して丸を作る。
と、意識してみると液体のような、個体のような、
不思議な物体が宙に作られた。
「その調子!」
気が散るから話しかけないでくれと言いたかったが、
そんな事を言っている余裕もなかった。
球体を、先生の言っていた形にする。
これも意識の問題だ。
徐々に形が変わっていったが、最後の最後で音もなく消えてしまった。
「あぁ、惜しかったのに」
「意外と、疲れるんだな」
これを簡単にやってのけるとは、少し尊敬した。
「慣れだよ慣れ。感覚を掴めば意識しなくても出来るようになるから」
そんな事より、と先生は続けた。
「銃の使い方、知らないでしょ」
「知らないな」
「取り敢えず、一回構えてみてよ」
言われたので、俺は漫画とかで主人公がやってるような感じで構えてみた。
「うーん、五十点」
「だから知らねぇって」
ひょいっと、俺の手から銃を取ると構えて見せた。
「初心者はちゃんと両手で持って、照準を合わせる。姿勢は低めにね、反動でブレちゃうから」
「へえ」
この人、銃の知識もあるのか。なんでもできるな。
「あんたの通ってた学校ってのはそんな事を教えているのか」
「大体はね、戦争時代の教えだと思っといて。彼奴ら皆アホだから」
「は?」
「君は歴史も知らないのかい」
なんでいきなり馬鹿にされるんだ。
今の言葉で理解できる人の方が少ないだろう。
「戦争中は国の為に命を使うのが名誉だった。
それは小さい頃からそう教え込まれていたからだ。
彼らも同じ、機関に従う事が全てのお人形さ」
思い出しただけでも吐き気がする。と言って先生は嫌な顔をした。
余程嫌いなんだな・・・。
「今の話、秘密にしといてね」
「誰に話すって言うんだよ」
「もしもの話さ」
先生はにへらと笑った。




