プロローグ
物心ついた時からだったと思う。
今では日常的になってしまって違和感を覚える事もなくなった。
それでも、やっぱり周りとは違う。
それだけははっきりとわかった。
世間でいう〝妖怪〟というものだろうか
それとも〝幽霊〟というものなのか。
詳しい事はよく分からない。
だが、確実に彼らは存在していた。
今現在、俺の前に立っている。
そして、彼らは他の人には見えていないらしい。
学生や主婦が俺の横を通り抜けては不審な目を向けてくる。
俺は彼らを見つめて動けずにいた。
それは何故か。
目があってしまったのだ。
夏だというのに嫌に寒い。
早く行かなければ学校に遅れてしまう。
そんな事を考えている場合ではなかったが
この場を離れなくてはと直感的に思った。
彼らから目を離し全力で走り出す。
学校へ行っていいものか分からず、適当に走った。
途中、誰かにぶつかった気もする。
夢中で走っていると行き止まりに突き当たってしまった。
ここはどこだろう。
彼らの姿は見えない。
そう思っていた時、後ろから声がした。
「逃げるって事は一般人だな」
振り向くと、彼らは彼となってそこにいた。
「久々のご馳走だ。彼奴らにはやらねぇ」
ご馳走。その言葉で俺は固まった。
俺は食べ物に見られている。
「さて、彼奴らが来る前に戴いちまうか」
そういうと彼は大きな口を開けた。
俺なんて一飲みにできるくらい大きな口を。
俺は今日ここで死ぬのだと悟った。
死を意識した事は無かったが、こうも突然来るものなのかと
俺は絶望した。
「ふぐぅっ⁉」
急に、彼の動きが止まる。
そして、倒れて消えた。
あまりに一瞬の出来事で理解が追いつかなかったが
人が立っている事だけは認識できた。
「こんにちは、生きてる?って、見りゃわかるか。
君人にぶつかっておいて走り去るなんて失礼だよ」
「え、あぁ、す、すいません」
男の人はにこやかに近づいてきた。
さっきぶつかった人だ。
クリーム色の髪の毛で、髪色と似たジャケットを着ている。
夏なのに長袖長ズボンと暑苦しい格好だ。
「あ、違う違う。そうじゃなかった」
男の人はそういうと俺の手を握った。
「僕の生徒にならない?」
その一言で俺の思考は完全に止まった。




