表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪視  作者: 伊藤大二郎
16/16

16.不明

 どこまでも、真っ白な世界だった。

 上は突き抜けて白く天井があるのかどうかわからない。

 下も延々と白く、果たして地面の上なのかわからない。


 ただ、上から下に赤い雪が降り続ける。

 そういう場所で。



 中学三年生の格好のままで、琴神冬子がそこにいた。

「琴神さん。どうしても言いたいことがあって、追いかけてきてしまいました」

 あれから三年。高校三年生になった清水友礼は、ずっとずっと暖めてきた言葉を、やっと、口にした。

「僕はあなたのことを憎く思う時がありましたよ。どうして寂しいときに寂しいと言ってくれないのか。どうして怖い時に僕に助けを求めてくれないのか。どうしてやればできるのに勉強を頑張ろうとしてくれないのか」

 冬子が、きょとんとした。

「人間相手に、全部好きだの全部嫌いだので構成されるわけないでしょう。僕は、あなたのいい所も悪いところも含めて、ずっと一緒にいたんです。一方的に迷惑かけてたなんて思われたら、僕が迷惑です。いいですか。僕は、僕はあなたに不幸にされた覚えは一つもない!」

 大きく息を吐きながら、友礼は続けた。

「……いや、そんな回りくどいことを言いに来たわけでもないんですけれども……」

 何なのだろう。

 もっと、簡単でわかりやすいことを言いたかったはずなのに。

 その為に、ここまで来たのに。

 うまく言葉にならない。

 どうにも不安になって、そこで初めて冬子の眼を見た。

 実に久しぶりの顔は、少しも邪まじゃなくて。

「なんだよ、そんな顔できるんじゃねーか。ずっと、ずっと、そんな顔にしたかったのに。勝手に、笑顔になりやがって」

 ちょっと、自分勝手かな、と友礼は思った。








 この世ではないどこかで、赤い雪が降っていた。



 (了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ