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異世界で道化師は笑う  作者: √3
序章
3/20

説明のお時間です 1

よろしくお願いします。


スキルに算術を追加しました。

「あれ?……」


 新たな世界への決意を胸に意気揚々と門をくぐった颯太だが、その先に待っていたのは、巨大なモンスターでもなく、ましてや自分を見つめる金髪の美女でもない。

 さっきまで颯太がいた真っ白い空間そのものであった。


「ええと……ここが異世界のなのかな?まさかそんなはずないよね?」


 あまりの出来事に、自分に言い聞かせるようにつぶやいた颯太。

 このままじゃらちが明かないので、とりあえず行動しようと思い、


「すいませーーーん!だれかいませんかーーーー?」


「あら、もう来たのね。ちょっと待っててね、今取り込み中だから」


 意外なことに返事はすぐ帰ってきた。颯太は驚きつつも急いで周りを見渡したが、声の主らしき姿は見えない。どうしたものかと思い、とりあえず待ってみることにした。


 しばらくすると、


「おまたせしました。すいません、なかなかクエストが終わらなくて」


 後ろから声をかけられた颯太が振り向くと、そこには目を疑うような美貌を持った銀髪の美女がいた。

 颯太は柄にもなく見とれてしまっていたが、その美女の言葉におかしなところがあることに気付いた。


「クエスト?」


 美女は、しまったとばつが悪そうな顔をして、


「すいません。ゲームが長引いてしまい……」


「またゲームかよ……最近はやってるのかな」


 さっきまで一緒にいた神もゲームをしていたことを思い出して、颯太はあきれたようにため息をついた。


「それで、あなたはだれなんですか?まあ、ここまでくればだいたい予想できるけど……」


「それでは、自己紹介をしましょうか。私はこの世界の輪廻を管理する神、リインです。気軽にリインとお呼びください。」


「俺の名前は霧崎颯太だ。俺のことも颯太でいい」


「では颯太さんと。あなたのことは存じております。先ほど、そちらの世界の輪廻の神から連絡がありましたので」


 別の世界同士でも連絡を取り合えるのか?と、ふと疑問に思った颯太は聞いてみることにした。


「別の世界の神様同士は連絡を取り合えるのか?」


「はい、可能です。世界はそちらで説明されている通り、人の思いからできていてその思いによってつながっていますから」


「なるほど、じゃあ他の世界の神様同士って仲はどんな感じなんだ?」


「そうですねー、それに関しては何とも言えませんね。いろんな性格の神様がいるので」

「ちなみに私の場合は、そちらの世界の輪廻の神様とは仲いいですよ。なんていったって[狩り友]ですから!!」


 また変な単語が聞こえてきたが、話が進まないので颯太は無視することにした。


「一つ質問いいか?」


「どうぞ、私に答えられることならなんでも」


 颯太は自分が死んでからずっと気がかりであったことについて質問することにした。


「俺が助けた幼馴染……雪はあの後どうなったんだ?」


「そのことですね、それなら心配ありませんよ。颯太さんが死んだ後自殺までしようとしたらしいのですが、彼女の友人たちの説得のおかげで少し立ち直ってきたとおっしゃってましたので。」


 愛されてますねえ、といった顔でリインが言ってきたが、


「ん?おっしゃってた?」


 リインの言い回しに疑問に思った颯太が聞き返すと、


「先ほどそちらの世界に連絡したときに、言われたんですよ。颯太さんが絶対に聞いてくるからと、とても楽しそうに言ってましたよ」


 颯太の脳裏にあの神様楽しそうな顔が浮かんできた。

(はあ、何もかもお見通しってわけか……)


「そういえば、俺が死んでからどれくらいたったんだ?」


 リインの話を聞く限り、結構時間がたっていると思い聞いてみた。


「そうですね……この空間では体感での時間があやふやなので、颯太さんが死んでから既に二週間程度経過していますね」


「もうそんなたったのか……雪が立ち直ってきたんならいいか」


 なんだかんだで雪のことが大切な颯太、それをリインは温かい目で見守っていた。


「そろそろ転生について説明させていただきますね」


「わかった」


「颯太さんが転生する私たちの世界は通称グローリアと呼ばれています。そちらでも言われたと思いますがいわゆる剣と魔法の世界です。」


 向こうで聞いていた通りの世界のようだ。


「それで俺はどんなふうに転生するんだ?」


「颯太さんは一度死んでしまったので生まれるところからやり直しになります。ちなみに前世の記憶の引き継ぎは任意となりますがどうしますか?その場合は生まれた時から自我がある状態になります」


「前世の記憶は残しておいてくれ。生まれた時から自我があればいろんなことができるからな」


 と、即決した。


 颯太が読んでいたweb小説でも子供のころからいろいろと試行錯誤して強くなっていくものが多かった。

 それに、何かを始めるにしても何事も早いに越したことがないと思ったためだ。


「わかりました。それでは、これからグローリアの説明をしたいと思います」


 リインの説明をまとめると、基本的にはいわゆる剣と魔法の世界であり、生き物は皆ステータスを持っている。

 さらに、レベルやスキル、職業、加護、称号といったまるでゲームみたいなシステムがある。

 職業や称号の中には魔王や勇者といったお伽噺にしか出てこないようなものもある。


「勇者や魔王ってのはどうやって決まるんだ?」


「それにはまず魔王について説明しましょう。魔王というのは、破壊の神デーヴァを信仰しているものたち、つまり魔族と呼ばれる者たちの王であり他種族に敵対している者のことを言います」


 破壊の神デーヴァ……突然すごそうな名前が出てきたので唖然とした颯太、


「魔王は約100年の周期で現れます、そして魔王が現れると自動的に人族の中から勇者の器を持つものが選ばれます」


「なんで人族なんだ?」


「それはこの世界で一番多くいる種族であり、一番繁栄している種族だからですよ」


「なるほど、なら勇者の器を持つものがいなかった場合や勇者が死んでしまった場合どうなるんだ」


 勇者が負けると思いたくないが、もしもの場合がある。

 その場合どうなるか知っておきたい。


「もし、勇者が何らかの理由で死んでしまった場合は別の勇者の器を持つものが選ばれることになります、そして勇者の器を持つものがいない場合は颯太さんがいた世界のような上位異世界から召喚されることになります」


「召喚?どういうことだ?」


「この世界に「勇者召喚術」というシステムが魔法として組み込まれているのです。その術によって勇者の器を持つ人間が異世界から召喚されることになっています」

「すなわち、勇者と魔王という存在自体がこの世界のシステムの一つなのです」


 ようするに拉致みたいなもんだな。この話を聞いた颯太は思ったが、特に何も感じなかった。

 もともと自分や自分の身内に関係ないことには非常に淡白な性格であったため、どこかで勇者として異世界に連れてかれる他人のことなんて割とどうでもよかったのである。

 でも、自分や自分の身内が巻き込まれるというなら黙っていないが……。


「どうして上位異世界からの召喚なんだ?」


「単純に上位異世界の存在は格が高いからですよ。なので、召喚された者の大半が何らかの能力を持っている可能性が高いのですよ」


「ちなみにどこの世界から召喚されるとか、召喚されるのは一人だけとかという決まりはあるのか?」


 さっきから完全に興味本位で聞いている颯太に対して、リインは嫌な顔せず答えてくれている。


「あまりにもここより上位の異世界からは呼び出すことができないので必然的に一番近い上位異世界からとなります。そしてここから一番近いのが颯太さんがいた世界、すなわち地球からなんですよ」


「なっ!?」


 颯太は不思議に思った。人がいきなりいなくなれば、大事になってもおかしくはない。

 しかし、そのような事件があったなど一度も聞いたことがないからだ。


「俺が地球にいたころそんなことは聞いたことなかったぞ?」


「こちらの世界に召喚されるときに召喚される者のに関する情報が書き換えられます。つまり、もともといなかったことにされるんです」


 あまり他人に興味がない颯太でも少し同情してしまう。それを見てリインは申し訳ないといった顔で、


「申し訳ありません、こればっかりは世界のシステムなのでどうしようもありません」


「大丈夫だ。ということは必然的に召喚された者は帰れないということか……」


「そうなりますね。そして、召喚の際に召喚される者の近くにいた者たちも一緒に召喚されます。少ないときには一人、多い時にはクラス全体、学校全体が巻き込まれたこともあります」


「それはすごいな、俺らの知らないところでそんな大事件が起こってるとはな」


「これで勇者と魔王の説明は大体終わりました。そろそろ転生についての軽い説明をしますね」


 颯太はやっとかと思っているが、ここまで質問して長引かせたのは他ならぬ颯太なので、どうしようもない。


「颯太くんには人族、つまり人間に転生してもらいます。大丈夫ですね?」


「ああ、下手に違う種族を選んで苦労もしたくないからな」


「次にグローリアにはステータスというものがあります。試しにステータスと念じてみてください」


 颯太は言われるがままにステータスと念じてみると目の前にパネルのようなものが現れた。


「おお!!本当に出た。」


 やっと出てきた異世界要素にテンションの上がる颯太。


「ステータスは文字が読めなくても情報が頭の中に入ってくるようになってます。ステータスの説明をするので可視化と念じてください。」


 可視化によって現れた颯太のステータスはこうだ。



 名前 霧崎颯太


 種族 人族(人間)


 職業 【月夜の道化師(ルナテック・クラウン)


 魔力 0


 称号 〖異世界人〗〖転生者〗〖読書家〗〖狂気願望〗〖物語を求めるもの〗〖笑いを渇望するもの〗 


 加護 輪廻の神 カルナシオンの祝福(異世界)


 固有スキル


狂気(ルナティック)


 職業スキル


仮面(ペルソナ)


 発展スキル



 基本スキル


【並列思考】【高速思考】【観察】【算術】





「魔力0……・どうなんだこれ?」


「さすがに上位異世界の方はすごいですね。ちなみに、魔力に関しては魔力のない世界から来たので0で当然ですよ。」


 よかった……と颯太は安堵した。

 これで魔法が使えないなんてことになったら異世界の醍醐味が一つ減るからだ。


「注目すべきは職業ですね。これは固有職と呼ばれるもので世界に一人しか持ってない職業のことです。ちなみに説明はパネルをタッチすると表示されますよ。」


 と、言われたのでパネルをタッチしてみると、


【月夜の道化師】


 壊れた道化師は今宵も笑いを求める……自らのために。



 ……なにこれ。


あまりにも抽象的な文章に困惑する颯太。


「ええと、意味がわからない。でもまあ、少なくとも普通の職業じゃないってことだけは分かった」


「ですね……わたしにも詳しいことは分かりませんが、固有職は基本的にはかなり強力なものが多いので心配しなくていいですよ」

「それに颯太さんは上位異世界の人なので、ステータスにはある程度理想や願望、もともと持っている技術が反映されているはずです。心当たりがあると思いますが……」


 そう言われてもう一度ステータスをじっくりと眺めてみる。

 そう言われると心当たりのある項目ばかりであることに気付いた。


「ははっ、確かに俺の理想や願望が表れてるかもな。しっかし、自分でも曖昧だった願望がここまでしっかりと表示されると納得しちゃうな。」


 確かに颯太は読書以外に人間観察という趣味を持っていた。

 さらに、月夜の道化師や狂気願望、狂気は昔から「狂ってしまったらどんな気分になるんだろう」、「狂ったように笑えたらどんなに楽しいだろうか」という颯太の秘められた願望から来たものだろう。

 ほかの項目にも大体の心当たりがある。


 そこにはまさに颯太自身が表示されているようなものだった。





感想、評価等もらえるとうれしいです。

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