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異世界で道化師は笑う  作者: √3
第一章 狂気
20/20

出来損ない

遅くなって申し訳ありません。

言いたいことを文章にできなくて書いては消してを繰り返してました。

あと、この話から文をいちいち改行するのをやめることにしました。他の話に関しては後々修正しておきたいと思います。

 ハインツについていくと明らかに周りと雰囲気の違う小部屋に入った。


「お待ちしておりました」


 最初に会った時の白い服ではなく青を基調とした祭服を身にまとうカルロが待っていた。

 青い祭服を身にまとったカルロは第一印象の優しげなお爺さんという雰囲気が消えており、どこか神聖さを感じさせる雰囲気を漂わせている。


「神父様、どうか宜しく頼みます」


「ええ。儀式とは大げさに言ってはおりますが、ここにある【看破】のスキルが付与された水晶でステータスを確認するだけなので何も心配することはありませんよ」


 どこか不安げな顔をしていたクラウスにカルロは優しく話しかける。


「それを聞いて安心しました。それではお願いします!」


 さっきの不安そうな顔とは打って変わって笑顔になったクラウスに安心したカルロは儀式を始めることにした。


「それではこれよりクラウス=エルファスの“寵愛の儀式”を始めます。クラウス=エルファスよ、前に出なさい!」


 カルロのまとう雰囲気が変わり、辺りは一気に緊張に包まれた。例え形だけの儀式だとしてもしっかりと体裁は整えるらしい。

 ちなみに“寵愛の儀式”とはステータス確認の儀の正式名称であり、個人の能力は神の寵愛の大きさによって決まるという考えに基づき、神が与えてくださった寵愛を確認する儀式という意味が込められている。


 クラウスは言われた通り一歩前に出てカルロの前に立つ。


「ステータスとは神が与えてくださったものであり、寵愛です。それを受け入れる覚悟はありますか?」


「はい。私、クラウス=エルファスは神が与えてくださった寵愛を受け入れ、感謝することを誓います」

「よろしい。それでは水晶の前まで移動しなさい」


 クラウスは言われたとおりに水晶の前まで移動した。

 水晶自体は特に変わったところはなく、一見普通の水晶玉にしか見えない。

 クラウスはカルロたちが自分の目が見えない位置にいることを確認し、【神眼】で水晶玉を見てみることにした。


(【神眼】で魔道具を見ると付与されてるスキルが確認できるみたいだな)


 クラウスの眼には目の前にある水晶玉に【看破】のスキルが付与されていることがしっかりと映っていた。


「それではクラウス=エルファス。水晶に手を当て、【看破】と念じなさい」


 言われるがままに【看破】と念じる。すると、水晶玉の上に【神眼】を使用したときと同じようなウインドウのが現れ、クラウスのステータスを表示した。

 ウインドウは【神眼】で表示されるものとは違い、後ろで待機しているカルロ達からでも数値が見えるほど大きなものだった。


「レベル1に魔力100だと……これはどういうことだクラウス!!」


「魔力100なのは予想できたが、まさかレベルまで1だとは……いや待てよ、クラウスはレベル1で俺の修行についてきたとでもいうのか……」


「……」


 クラウスの欠陥のあるステータスを見てその場にいた三人はそれぞれ違う反応をしていた。

 ハインツは怒りが抑えきれないのか神聖な儀式の最中にもかかわらず顔を真っ赤にし、拳を握りしめ、歯ぎしりの音まで聞こえてくる始末だ。

 ヨハンはある程度予想できていたのかステータスについてはあまり驚いていない様子だが別のことに気を取られているのか、俯いて何かぶつぶつとつぶやいている。

 カルロはステータス画面を見てなにやら困惑しているようだ。


(はあ、ステータスばれっちゃったな。やっぱりみんな驚いてるな~)


 当の本人はというと三者三様の反応をしている三人を見ながらあきらめたようにそんなことを考えていた。






 しばらくすると、最初にカルロが我に返った。取り繕うようにゴホンと、咳をすると他の二人も儀式の途中だったことに気付き真剣な表情に戻るとまた辺りは緊張に包まれた。


 時折クラウスの耳にはハインツがいる方から歯ぎしりが聞こえたりもしたが、特に触れることもなく淡々と儀式は進んでいった。


「これでクラウス=エルファスの寵愛の儀式を終了する!これからは神への感謝を怠ることなく生きなさい」


「わかりました」


 そう言ってクラウスだけが部屋から退出した。

 寵愛の儀式は部屋を出るまでが儀式のため、彼より先に誰も部屋から出てはいけないのだ。他の三人はクラウスが出ていくのを見届けると、案の定ハインツが口を開いた。


「ヨハン。屋敷に戻ったら話がある」


 さっきとは違い表情に変化こそないがその声色には苛立ちが見え隠れしている。それに対してヨハンはただ無言ではハインツを睨めつけるとクラウスの後を追うように部屋を出ていった。


「神父様。クラウスのステータスのことはどうかご内密に」


 ヨハンが出ていくのを確認すると、ハインツはその場に残っていたカルロに脅すかのようにお願いをしていた。


「わかっております。教会が個人のステータスの情報を勝手に漏らすことはありませんのでご心配なさらず」


 カルロは慣れている様子でハインツの脅迫じみたお願いなど意に返していないような優しげな笑みで答えた。

 ハインツはカルロの態度に満足いかなそうな顔をしたが、すぐに表情を戻すと部屋を出ていった。


「あのステータスではこれから多くの苦労をすることになるでしょう……あの子に神のご加護があらんことを」


 その神父のつぶやきは誰にも聞かれることもなく宙に溶けていった。














 儀式が終わり外に出たクラウスは通路の先に座れるところを見つけたので今後のことを考えることにした。


「本当にどうしようかな~」


 正直なところクラウスにはほとんど手がない。

 いくつかの選択肢はあげられるがどれも妙案とは言えない。


 このまま何もせずに家に戻るにしろ、勝手に出ていって行方をくらませるにしてもクラウスの前に立ちはだかるのは魔力とレベルの問題である。この世界で生きてきた十年間で魔力とレベルの重要性を嫌というほどクラウスは学んできた。

 それこそ魔力が上がらないだけで生活に支障が出るほどである。エルファス家の屋敷にある魔道具は魔石に宿る魔力を使用して動くタイプのものだったのでクラウスでも使うことができたが、世間で流通している日常用魔道具は使用者の魔力を使うものばかりなので魔力が初期値では使うことすらできない。

 それに戦闘関係のほうでも苦労することになる。クラウスの場合はスキルの補正でレベル1でもある程度戦うことはできるが、あくまでもそれはある程度の範囲だ。いくら多種多様なスキルがこの世界に存在しているといっても、能力向上系のスキルにも限りがある。

 ゆえに、スキルで能力を上げるのにも限界が来る、ならば技術を鍛えよう。だが、技術というものはある程度の身体的能力が伴って初めて戦闘に耐えるレベルで行使できるものである。


(改めて考えると状況的につんでるよな……)


 クラウス自身ステータスの欠陥の原因はなんとなく予想はできている。といってもクラウスのステータスで明らかにおかしいのは固有スキルの【狂気】である。


 クラウスは改めて【狂気】の説明文を表示させる。


【狂気】


 非覚醒状態。

 一定以上の感情の高ぶりで解放される。


(絶対これが原因だよな。てかこれ以外おかしなところ見つからないし。それに称号に〖非覚醒者〗なんてものまで増えていたからほぼ確実だよな……)


 説明文には一定以上の感情の高ぶりで解放と書いてあるがクラウスの場合【仮面】のせいで生半可な感情の高ぶりでは自動的制御されてしまう。それこそ神がかった美しさを持つスフィアを初めて見た時でさえ、たった一瞬、感情の高ぶりが【仮面】制御下を離れた程度だ。

 つまり、日常生活において【狂気】を解放するほどの感情を高ぶりを得ることはほとんど不可能だといってもいい。


「ここにいたのね」


 考え事をしていたクラウスに突然後ろから声がかかる。振り向くと、そこには笑顔でこちらを見ているスフィアが立っていた。心なしか頬が赤くなっているようにも見える。スフィアはクラウスの隣に腰を下ろした。


「これはこれは聖女様。私めに何か御用ですか?」


 恭しくそう返すとスフィアはムッと、した表情になりクラウスをにらんだ。


「周りに誰もいないときには名前は呼び捨てって決めましたよね?まさかもう忘れてしまったんですか?」


 スフィアが不機嫌そうな顔のままグイッと、顔を近づけてくる。


(この王女様周りの目がないと感情豊かだよな……てかここまで感情を出せるほど俺に好意を持ってること自体が謎だよな。案外ちょろいのか?)


「すいません忘れてい……って!?冗談ですから泣こうとするのはやめてください!誰かに見られてら大変なことになるんですから」


「私との約束を忘れた、なんて言うあなたなんか大変なことになってしまえばいいのよ!」


 そう言ってスフィアはペロッと、舌を出し相手を魅了するような笑みを浮かべている。

 十歳とは思えないその笑顔はその辺の男なら一発で落としてしまえるほどの威力を秘めている。


(あざといなー実にあざとい。そういえばこの王女様【魅了】持ってるんだよな……)


 実際スフィアは【魅了】を現在進行形で使っている。だが、残念なことに基本スキル程度の【魅了】ではクラウスの【仮面】を破ることはできない。

 それに、仮にスフィアが【魅了】の発展スキルを習得し、使いこなせるほどになったとしよう。そして、クラウスにその神々しいまでの美貌と【魅了】を行使して迫ったとしても【仮面】を破ることはできないだろう。

 これが発展スキルと固有スキルとの圧倒的な差である。


 ゆえにクラウスはスフィアが【魅了】を自分に使っていること気づくことすらできない。【仮面】によって自動的に無効化されてしまっている。


(しっかり【魅了】発動してるわよね?全く効いてる様子がないんだけど……)


 まったく【魅了】が効いていない様子のクラウスにスフィアは怪訝な顔をするがすぐに誤魔化すよう顔を離しにさっきの笑顔に戻る。


 だが、そんな些細な表情の変化に目ざとく気づいたクラウスは少し悪戯してやることにした。先ほど、スフィアが顔を近づけてきたように今度はクラウスから顔を近づける。


「ひいっ!?いっ、いきなりどうしたのよ!?」


「さっきスフィアが変な顔をしていたので、調子でも悪いのかと。そういえば少し顔が赤くなっていますね。熱があるかもしれません」


「少し失礼」と片手でスフィアの前髪を丁寧にあげ、自らの額をスフィアの額にくっつける。


「ひうっ!?」


 クラウスの思い切った行動にスフィアは言葉にならない声を上げ、顔を真っ赤に染めて固まる。誰かに見られたら不敬罪で一発で捕まるような行為だが、この場には二人だけしかおらず、クラウスがスフィアの気持ちを知っているからこそできるとっておきの悪戯だ。

 ちなみに、スフィアが顔がゆでだこのよう真っ赤になって固まっていることにクラウスも気づいている。だが、残念なことに本人にはいたずらを中断する意思はない。


(いや~眼福眼福。普段の凛とした表情とは違ってこういう顔もいいね。なるほど、こういうのをギャップ萌えっていうのかな。っていうかこの距離でまったく興奮しない俺って……)


 しかも、互いの息づかいが聞こえてくるような距離まで顔を近づけているというのにのんきなことを考えている。

 クラウスが満足して額を離すと、目の前には普段の姿からは想像できない顔をしているスフィアが焦点の合わない目でぼーっと立っている。


「熱はなさそうですね。……スフィア?」


「はいっ!!」


「大丈夫ですか?ぼーっとしていたみたいですけど」


「だっ、だだ大丈夫よ。それより、いきなり顔を近づけてくるなんてびっくりするじゃない!それに!」


「それに?」


「突然おでこをくっつけてくるなんて……心臓が止まるかと思ったじゃない」


 最後のほうを小声で誤魔化しているつもりなのだろうが、残念ながらクラウスにはばっちり聞こえている。

 だが、そこは空気が読める男クラウス。あえて聞こえなかったふりで通す。


「最後何か言いましたか?」


「なっ、何でもないわよ!それよりステータスはどうだったのよ?」


「あー、ステータスですか」


 クラウスは遂に聞かれたか、と微妙な顔をする。だが、今日の目的がステータス確認のため、スフィアがステータスのことを聞くことは当たり前だともいえる。むしろ遅すぎる質問だ。というのも、この話題にならないようにクラウスは最初から話題をそらし続けていたからである。しかし、追い詰めすぎてしまったため強引に話題転換するための口実にされてしまったのだ。


「そうよ。私のステータスだけ知られてるなんて不公平じゃない。あなたのも教えなさいよ」


「スフィアのステータス、というか職業はこの場にみんなが知ってるじゃないですか」


 クラウスは別にステータスを言うのが嫌なわけではない。ステータスに対する負の感情はすでに消え去っているため特に抵抗はないのだ。ならなぜ言い淀んでるのか、それは単純に言い方に困っているからだ。レベルも魔力も上がっていないなんて知られたらこの場の雰囲気が確実に悪くなってしまう。クラウス本人は別に自分のステータスをどう思われようが構わないが、知られた後どんなに雰囲気をよくしようと思っても確実に河合が不自然なものになってしまうことが想像できるため、それは面倒臭いと思っている。


「なに?そんなに悪いステータスだったの?なら、なおさら知りたいわね。さっきは好き勝手してくれたけど今度は私の番よ!さあ、吐きなさい」


「スフィア。王女がそんな下品な言葉を使ってはいけませんよ」


「別にこの場には私とクラウスしかいないから大丈夫よ。それに、さっきから話を逸らそうとしてるみたいだけど、そうはいかないわよ!」


(こいつ~自分が有利になったからっていい気になりやがって)


「別に話を逸らそうとなんてしてませんよ。そういえば聖女のあなたがこんなところにいても大丈夫なんですか?」


「大体のことはお父様がやってくれているから、城に帰る準備が終わるまで暇なのよ。あなたの質問には答えたわ。さあ、今度は私の質問にも答えなさい」


「はあ~わかりました。私もスフィアの職業しか知らないので職業だけでいいですか?」


「だめよ。ステータスも教えなさい。さっきあなたと目があった時、あなたの目の色が変わっていたのに気づいてないとでも思ってるの?」


 スフィアの言うさっきとはクラウスが【神眼】でスフィアのステータスを覗き見た時のことだろう。【鑑定】や【看破】などの鑑定系のスキルも魔眼に属されるため目の色が変わる。スフィアはそれのことを言ってるのだろう。


(あちゃ~やっぱりばれてたか……もういいや、あんまり嘘はつきたくなかったんだけど)


「見間違いじゃないですか?おかしいですね。私のステータスに鑑定系のスキルはおろか魔眼のスキルはありませんでしたよ」


 しれーっと嘘をつき誤魔化す。【仮面】のおかげでスフィアには本当に知らないように見えていることだろう。


「そうなの?なら私の見間違いかしら……なら職業だけでいいわ」


「それなら問題ないです。たしか【中級剣士】でしたよ」


「そう、なんか普通ね」


「あんなに聞いておいてその反応ってなんかひどくないですか?一応この年で中級ってすごいんですよ」


「私の【聖女】に比べたら、言っちゃ悪いけど普通の範囲じゃない?」


「さすがに固有職と比べられたらどんな職業だって霞んでしまいますよ。それが有名な【聖女】だったらなおさらですよ」


 クラウスが呆れて苦笑いをしているとこちらに近づいてくる気配に気づいた。通路のほうを見るとちょうど曲がってこちらに来るところだったようで鎧をつけた騎士のような人が向かってきていた。


「王女様。帰宅の準備が整いました。陛下が待っておられるのですぐにお戻りください」


「わかりました。すぐに向かいます。それではクラウス様、お話につき合っていただきありがとうございました」


 すぐに世間用の口調と雰囲気に戻ったスフィアはクラウスにドレスの裾を上げ礼をした。


「おっお礼なんてとんでもない!!王女様が少しでも楽しんでいただけたならこちらとしてもうれしい限りでございます」


 クラウスは照れるように頬を染め、世間用の口調で答える。


「王女様、こちらの方は?」


「警戒しなくても大丈夫よリーナ。こちらはエルファス公爵のお孫さんよ」


 どうやらその騎士はリーナというらしい。名前からして女だと思われるが、ヘルムをかぶっているため判断できない。

 リーナはエルファス公爵と聞いて一瞬殺気だったがすぐに収まった。だが警戒は続けるらしい。


(お~こわ。てかあのハゲ狸めちゃくちゃ信用ねえな)


「ご紹介に預かったエルファス伯爵家の長男、クラウス=エルファスと申します。どうぞお見知りおきを」


「伯爵?さきほど王女様が公爵と言っていましたがどういうことですか?」


「詳しいことは聞いていないのでわかりかねますが、どうやらお祖父様とお父様は同じ家名ですが爵位が異なるみたいです」


 そう言うとリーナの警戒は少しおさまった。公爵家ではないということで大丈夫だと判断したのだろう。


「なるほど……っとすいません、こちらの自己紹介がまだでしたね。私は王国騎士団所属三番隊隊長、リーナ=ローレスと申します」


 どうやら家名があるみたいで、リーナは貴族のようだ。といっても騎士団は実力主義なので貴族だからといって優遇はされないのだが。


「王女様。そろそろ行きますので」


「わかりました。それではクラウス様、また機会があればお会いしましょう」


「ええ、ぜひまた機会があったら」


 スフィアは再度優雅に礼をするとリーナを連れて帰っていった。スフィアたちの姿が見えなくなるのを確認するとクラウスは気が抜けたようにため息をつく。


「機会があったらねえ~、はたして次があるのだろうか……」


 クラウスは通路を見つめて疲れたようにつぶやいた。




一応確認用にクラウスの偽装ステータスを載せておきます。


名前 クラウス=エルファス


 レベル 1


 種族 人族


 職業 【中級剣士】


 魔力 100


 称号 〖伯爵家〗〖読書家〗


 加護 輪廻の神 リインの祝福


 固有スキル




 職業スキル




 発展スキル


【剣術】【身体強化】【縮地】


 基本スキル


【算術】【魔力操作】

【身体強化】【危険察知】【速読】【剣術】【闘気】

【高速移動】【直感】


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