王女
今回は話が短いです。
王女の笑顔に呆然としていたヨハンも慌ててあいさつを返した。
「お、お初にお目にかかります。私はエルファス公爵家当主ハインツ=エルファスの息子のヨハン=エルファスと申します。伯爵の位を王から授かっております」
どうぞお見知りおきを、と礼をする。
カルロにした時を全く同じ挨拶をした、これがヨハンのあいさつ用の定型文みたいなものなのだろう。
本人は気づいてないがヨハンはスフィアと会うのが初めてのため珍しく緊張している。
声のトーンが少し高くなっているのにクラウスは気づいた。
王女も気がついているのかふふふと微笑んでいる。
そんなヨハンを見てクラウスはいいものを見たと思いながらも続けて自分の自己紹介もをすることにした。
「お初にお目にかかります。私はヨハン=エルファスの息子のクラウス=エルファスと申します」
ヨハンと同じように礼をして前向いたクラウスはスフィアが少し驚いた顔をしていることに気付いた。
(あれ?どうして驚いてるんだ?なにか間違えたのかな……)
自分が何か間違えたのかと心配になるクラウス。
実際はクラウスのあいさつは完璧だった、そうスフィアの前で何の感情もなく平然とあいさつしたのだ。
突然だがスフィアは自分の容姿に対しての自覚がある。
子供のころから美しい美しいといわれ続けたのだ、自分の容姿がとてもいいということに自覚せざるおえない環境だったともいえる。
ソフィアの美しさは別次元にあるといってもいい、それこそ挨拶をしてくる人々が等しく挨拶を忘れて見惚れてしまうだ。
つまりソフィアを前にしてまともにあいさつをすることができた人はいままで一人もいなかった。
だが、今ソフィアの前には自分に平然とあいさつを返してきた少年がいる、驚くのも無理はないだろう。
自分の容姿ゆえの周りの態度に嫌気がさしていたソフィアにとってクラウスの態度は思わず驚きの表情をしてしまうほど新鮮なものだった。
クラウスが何か間違えたのかとずっと考えていると突然背中にこびりつくようなねっとりとした悪寒を感じた。
「ひいっ!?」
(なんだ!?敵か!?)
まるでヨハンと訓練しているときに感じる殺気にねっとりとしたものを追加したような気配を感じ慌てて出所を探すとクラウスの目の前にまるで獲物を見つけた猫の目でこちらを見ているスフィアがいた。
クラウスは周りを見回すが誰もスフィアの変化に気付いていない。
いや隣にいたヨハンだけはスフィアの変化に気づいていた。
流石元Aランク冒険者、気配の変化には敏感なのだろう、だが数々の修羅場を潜り抜けてきたヨハンでさえ顔に冷や汗をかいていた。
別次元の美しさというものは使い方次第でここまで恐ろしくなるのかとクラウスは表情には出していないものの完全に恐怖していた。
(こわっ!!父さんがマジでビビってる)
触らぬ神に祟りなしとクラウスはスフィアの変化をスルーすることに決めた。
世の中には触れてはならないものがある、そう心の中で言い聞かせながら早くここから立ち去るための策を考えた。
(そうだ!そろそろ儀式が始まるんじゃないかな)
クラウスは[にげる]を選択
「お祖父様、父様そろそろ儀式がはじま「お父様、私少しクラウス様と二人でお話がしたいわ」るのでは……」
しかしまわりこまれてしまった!
(くそっ!だが甘い!まだ逃げられる!)
「私みたいな者がスフィア様と二人で話すなど恐れおお「どうぞどうぞうちのクラウスと好きなだけ話してください」くて……」
(クソたぬきがああああああああああああああああああああ)
完全に退路が絶たれた。
「おいクラウス、絶対に粗相のないようにしろよ。お前が何かすると俺の沽券にかかわる」
ハインツがクラウスの耳にそっと忠告をしてきた。
「……わかりました。決して粗相がないように気をつけます」
完全にあきらめの表情で返事をするクラウス。
普通はスフィアと二人で話せるというだけでほとんどの人が喜ぶはずなのにクラウスには面倒事にしか思えない。
その様子がまたスフィアの希望を大きくさせる。
(完全に厄介なのに目をつけられた……こうなったら最後な頼みの綱の父さんに……)
クラウスは自分と同じように気配に気づいたヨハンに助けを求めるような目線をおくった。
ヨハンはただうなずいて中指を人差し指に重ねた。
(裏切りやがったあああああああああああああ)
「それではクラウス様あちらのほうでお話をしましょう」
「そうですね。それではいってまいります」
ソフィアはクラウスの手をつかんで強引に引っ張っていった。
「それではお話をしましょう!」
「お話といわれましても……どうして私なんかと?」
クラウスが自分がここまで執着される意味が分からなかった。
それもそうだ、クラウスをソフィアは今日が初対面でいままで全く面識がなかったのだから。
「そんなの私に対して普通にあいさつしてきたからに決まってるじゃない」
「は?」
突拍子もないことを言われて完全に素が出てしまったクラウスにスフィアも若干驚いている。
「ふふふ、私に対しては?ですって。あなた本当に面白いわね」
「すいません、全く話についていけないのですが……というかスフィア様ってそんな性格だったんですか?」
「へえ、あなたは私の何を知っているというの?」
「すいません、出過ぎたことを申しました」
クラウスの返答にくすくすと笑うスフィア。
「ごめんね、意地悪なことを聞いたわ」
(この王女様マジでめんどくせえ。どうにかして早く終わらせたい……)
「それでさっきのはどういう意味なんですか?」
「そうだったわね。ほら自分で言うのもなんだけど私の容姿って完璧じゃない?そのせいで小さいころから私とまともに話すことができる人なんていなかったのよ」
「はあ、たしかにソフィア様は美しいですね」
「なんか納得いかないわね……まあいいわ。私としゃべる人はみんなまともに会話が成立しなかったのよ。口を開けば二言目には美しい美しいと私の外見ばかり褒めて私自身、ソフィアという人間を見てくれる人はそれこそ両親しかいなかったわ」
「それはお気の毒に……」
クラウスは面倒臭くなってきたのか段々と返事が適当になってきた。
(今日の夕食何かな……)
終いには関係ないことを考え始める始末である。
目上の人への態度としては失礼なものである。
「クラウス様?私の話を聞いていますか?」
「ひいっ!!き、聞いてます聞いてます。だからそれやめてください!」
また背中を這うような悪寒を感じすぐさまスフィアに意識を戻したクラウス。
「よろしい、それじゃあ話を続けますね」
「……どうぞ」
そう言ってスフィアは話を再開した。
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