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セイケンガウガツ  作者: 柊雪葵
序章
2/76

決戦

 はじめまして、柊雪葵(ひらぎそそぎ)です。


 本日は訪問ありがとうございます。


 本作品は普段書いている作風とは違ったものに挑戦しようと思い書き始めたものです。


 また作中では様々な伏線を用意しています。

 展開を予想しつつ読んでいただけるとより楽しめるのではないかなと思います。


 知識、表現ともに拙い文章かもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです。



 以下、注意事項


・当小説は過去に実在した出来事の結果をまげた『もしもの世界』の延長線上にある近未来が舞台となっています。


 そのため矛盾回避や、作品を展開させる都合上、現在の法律や道徳、倫理観と異なる表現が存在します。


・時代設定の都合上、本来なら外国語で表現される言葉を日本語で表現しています。


 そのため聞き慣れない言葉が出てきて読みにくい恐れがあります。



それではごゆっくりお楽しみください。

 西暦2040年4月12日木曜日17時55分



 斜陽(しゃよう)に伸びる影二つ。

 人々が帰路に着き、静けさに包まれた空間で対峙(たいじ)する。



「ほう、自ら死にに来るとはな」



 声の主は至って自然体。

 先日までは桜の花弁(はなびら)を宙に(ただよ)わせいていた風が、前頭部にだけ残る白髪(しらが)をなびかせる。



 その右手には2(めーとる)を優に超える大鎌。

 左手には使い古された懐中時計。

 そして得物(えもの)を使うために鍛えられたのであろう、老人には似つかわしくないまでに隆起した筋肉。



 全てが異様なまでに研ぎ澄まされていた。



「私は売られた喧嘩(けんか)は買う主義なのよ。何処(どこ)の誰かは知らないけれど、地獄で行いを反省することね」



 相対する少女は抜刀する。



 華奢(きゃしゃ)な身体に一振りの日本刀。

 髪は神々しい程の金色。

 背中で主張する純白の翼。

 その姿はまるで御伽草子(おとぎぞうし)から出てきた天使のよう。



 暖かな春の陽気──



 否、妖気と殺気に満ちた視線の攻防。

 お互いの力量を推し量るようにただただ無言で睨み合う時間が過ぎていく。



 開幕の合図は少女が一瞬集中を切らした瞬間。

 言い得て妙な死神と天使の戦いの火蓋は切られた。



「隙だらけじゃ。まだまだ青いの小童(こわっぱ)



 先に仕掛けたのはもちろん(おきな)

 一瞬にして背後に回り一閃(いっせん)を放つ。



 その弧を描いた切っ先が当たる直前、少女は瞬時の判断で飛翔する。

 危機一髪のところでの回避だった。



「ふう、化物退治は油断大敵のようね」



「天空を舞うお主には言われたくない言葉じゃの」



「ふっ、戯れ言ね」



 少女は上空から切っ先を翁に向ける。

 その視線も挑発的で、決して常人には詰めることができない上下の優位をまざまざと体現していた。

 それもそのはず。

 二人の距離はおよそ9(めーとる)程は離れている。



「聖剣一の型。雲斬(くもきり)



 剣筋が宙を斬る。

 生み出された剣閃(けんせん)は宙を断つ。



「見事なものじゃ。()ればこそ興が()めてしまい口惜しいの」



 翁の頬から血が一筋流れ落ちる。

 鎌によって振り払われた衝撃波は地を(えぐ)っていた。



「あら、この状況を打開する方法でもあるのかしら?」



 攻撃はかわされた。

 しかし少女の優位が変わるわけもなく、余裕に満ちた表情で翁を見下ろす。



「──流石(さすが)に空は飛べぬからの。この鎌を投げるほかになかろう」



「意外と(いさぎよ)いのね。最期に言い残すことはあるかしら?」



「そうじゃの……無意味かも知れぬが獲物を前に舌舐りをしているようじゃまだまだ青い。さあ、(とき)は満ちた」



 翁が鎌を投げる動作に入る。



 それに呼応するように少女は身体を(ひるがえ)し、剣閃を放とうとする──



 その刹那(せつな)のこと。



「南無」



 翁は目を閉じ、合掌する。

 その合わせた手からこぼれ落ちる得物。

 その禍々しい刃先は鮮血で彩られている。



 一体何が起こったのか?



 おそらく少女が理解できたことは、自分が敗けたということだけ。

 頭と身体が分断されたことで意識は遠く、その反面地面は近くなる。



 そんな地に()ちるわずかな時間で少女は思う。

 出来ることならもう一度やり直したいと──



 わずか5分間での命のやり取り。



 天使が地を()い、息を引き取った時、勝者の死神を祝福するかの様に18時を知らせる鐘が鳴り響いた。




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