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海の粒子たち  作者: -Azuyama-


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1/1

プロローグ

 たとえば、こう思ってしまう時がある。

 もし、自分は「誰かによって“作り変えられた”存在」だと、知られてしまったら。

 自分は、「求めること」が許されなくなるんじゃないか、って。

 もし、自分が“何か”を求めすぎて、誰かを傷つけてしまったら。

 自分は、ずっと遠い距離に取り残されるんじゃないか、って。

 もし、一番身近な人に、「すべて」を求めたくなった時。

 自分が「本当の自分」になったら。

 自分の「思考」は──、どこに行ってしまうんだろう、って。

 ……それは、きっと(すご)く怖くて、凄く不安で、凄く消えてしまいそうで。

 でも、きっと乗り越えたら、それは美しい過程で、美しいカタチで、美しいつながりで。

 美しい──〈愛〉であると。

 認識できるんじゃないか、って。


 ……そんな確証すら持てるかどうかもわからない幻想を抱えては、いつも何処(どこ)かに溶けて消えていく。

 自分は、周りとは違う。

 周りの普通の「カタチ」とは違って、自分の「カタチ」は普通じゃない。

 自分の「すべて」を、文字通り「作り変えられて」。

 今でも一番近くにいる人に、「すべて」を伝えられる感情の予感すらも、起きそうにできないのだ。

 ここで暮らしている場所の景色が、どんなに青くて、穏やかで、静かでも。

 自分自身の「すべて」を恐れるこの気持ちが、細胞の(すみ)まで穏やかでいさせてくれない。

 それでも、いつか遠い未来のうちに、その人と“何か”を結んでいくかもしれない──と、今日も夢見ている。


 ──これは友情なのか。それとも……。


    ×


 ガラス張りの外側に見える、深い藍色(あいいろ)の海底の光景(すがた)

 その暗い光に包まれた広い空間の中で、金属同士がぶつかり合う、機械の冷たい音が鳴り響いていた。

 ある目的のための準備だろうか。その金属の音は、異様に騒がしく聞こえる。

 そんな中、ガラス越しの遊泳する魚類たちを(なが)めながら(たたず)む、一人の人物がいた。

 白髪の混じった人物の(そば)に、ショートボブの女がやってくる。白衣姿の女は、何やら報告をしているようだ。

 報告を聞いた人物は、しばし黙ったあと、振り返らずに命令した。

「──例のモノを準備しろ」

 そのきっぱりとした声は、この瞬間でも、ある目的を(かな)えようとしていた。

 海底の(ごと)く広い、この空間で。

 その目に、(まみ)れた欲望を抱えながら。

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