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役立たず判定された俺、実は世界の仕様書を読めるだけでした  作者: 歩衣
第1章

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第3話 結界の本当の欠陥と、初めてのモンスター

夜が明け、辺境の村は薄曇りの空の下で静まり返っていた。


 俺――ケイは、昨日修正した結界を再確認するために魔法陣の周りを歩く。


《結界出力:最適化済》

《異常なし(暫定)》


 だが、ふと視界の隅に文字が浮かんだ。


《未確認挙動:境界外生物の侵入可能性あり》


 ――境界外生物?


 仕様書にない記述だ。


 次の瞬間、森の向こうから不自然な影が動いた。

 文字が赤く点滅する。


《脅威:小型魔獣/接近中》


 小型? いや、結構デカい。

 姿は狼に似ているが、背中に小さな鱗があり、目が不気味に赤い。


 村人たちは、まだ気づいていない。


「……あ、いや、これは見せないとまずいな」


 俺は急いで駆け寄る。

 村人に向かって叫ぶ。


「避難! 森側の家から離れて! あれは普通の狼じゃない!」


 しかし、狼型魔獣は結界の外側から悠々と入り込もうとしている。


 ここで仕様書が役に立つ。


《魔獣行動優先度》


1,最も弱い生物

2,次に防御力の低い生物

3,魔力供給源


 ――なるほど。

 村の人間は魔力供給源には見えないようだ。

 つまり、村を丸ごと襲うわけではない。


 俺は結界の側面に手を置き、出力を局所的に上げる。

 魔獣が最も弱い経路にしか進めないよう制御する――


 瞬間、魔獣は一歩踏み外し、転倒した。


 村人たちは驚きの声を上げる。


「なんだあれ……!」


 俺は落ち着いて言った。


「仕様に従えば、無駄な戦力を使わずに防げます」


 魔獣は数回暴れた後、結界の端に誘導され、力尽きて消滅した。


 文字が再び浮かぶ。


《評価変動》

《辺境村グラッド:信頼(中)獲得》

《技能使用ログ:魔獣対応成功》


 村人たちが近づいてくる。


「あなた……一体何者なんだ?」

「魔法使い……じゃないよな?」


 俺は肩をすくめる。


「いや、魔法は使えません。

 ただ、この世界のルールを読めるだけです」


 ――仕様書読みが、戦闘力に変わる瞬間だった。


 夕方、村長が俺を呼んだ。


「お前、これからも村を守ってくれるのか?」


 俺は少し考えて、答える。


「仕様を理解している限り、守れます」


 村人たちは口を揃えて笑った。

 しかしその笑顔の奥で、どこか不安も見えた。


 俺は文字を確認する。


《警告:村結界には、さらなる欠陥が存在します》


 ……まだ、全貌は見えていない。


 だが、もう分かっていた。


 俺の戦いは、戦闘力でなく知識で行う。

 それが、この異世界で生き残る唯一の方法だ。

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