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ハロウィンの悪魔

作者: 冲田
掲載日:2025/11/07

アレックス

「トリックオアトリート!」


ベイリー

「やあ、アレックス。今日はハロウィンでしたっけ? 残念ながら何も持ってなくて」


アレックス

「ええ! 他の人はみぃんな、お菓子くれましたよ? じゃあベイリーにはイタズラですね」


ベイリー

「えぇ……何されんの…?」


アレックス「さあ……どうしよっかな?」


ベイリー

「それよりも、そろそろ休憩終わりますよ。午後は一緒に巡回(じゅんかい)ですよね?」


アレックス

「そのとおりだね。なのに、忘れてるんだもんなぁ」


ベイリー

「仕事のことは覚えてますよ。トリックオアトリートみたいなノリを忘れてただけ」


アレックス

「じゃあ、ベイリーもノってよ。ハロウィンのお祭りに」


ベイリー

「んー……トリックオアトリート?」


アレックス:

「はい、どうぞ! 私はちゃんとお菓子用意してますからねー!」


ベイリー

「ははは。ありがとう」


アレックス

「さて、ランチが終わったのなら、午後の打ち合わせをしましょう。 このお菓子でも食べながら」


ベイリー

「はい、やりましょう。

 本当、今日は我々警官にとっては厄介(やっかい)な日ですね。総出で一日中、街の巡回をしないといけないのだから」


アレックス

「迷子の子供、羽目(はめ)を外しすぎた若者たちの大騒ぎ、酔っ払いのトラブル、それから……」


ベイリー

「ハロウィンの悪魔──“ジャック”」


アレックス

「指示書を見ると私たちがジャックの担当みたいだね」


ベイリー

「ジャックのことは知っていると思うけど、一応、振り返っておこう。

 彼あるいは彼女は、ハロウィンの夜に現れる殺人鬼だ。被害者は、“人間ジャックオランタン”とでも言いたいのかというような、(むご)い姿で発見されている。四年前から、毎年一人ずつ……」


アレックス

「毎回、現場から多くの押収物(おうしゅうぶつ)はあれど、犯人に結びつくものはなく、被害者の共通点も特になし、ですよね」


ベイリー

「うん、お互いに良く知っているようだし、詳細の確認はもういいだろう。 私たちの今日の仕事はジャックの犯行を未然に防ぐことだ」


アレックス

「未然に防ぐなんてこと、できますかね……。あ、いや、もちろん頑張りますけど!」


ベイリー

「現場になりそうなところを警戒しているだけでも、多少犯行はやりにくくなるだろうし、ともかく今日、奴が動くということはわかっているのだから。最悪でも、現行犯逮捕ができれば……。

 ──さあ、出発しよう」




 

アレックス

「街の中は、本当、ハロウィン一色ですねぇ。ほら、仮装している子供たち、可愛いなぁ」


ベイリー

「大人も今日は被り物や特殊メイクをしていますからね。素顔(すがお)を隠すにはもってこいだ」


アレックス

「あー……確かにそうとも言えるのか……」


ベイリー

「この中にひょっとしたら殺人鬼が(まぎ)れているのかも」


アレックス

「そう思うと……呑気(のんき)にハロウィン楽しんでいる街の人たちは、ジャックが怖くないんですかね?」


ベイリー

「どこか、自分だけはターゲットにならないという気持ちがあるんでしょうよ、きっと。

 ジャックに限らず殺人事件なんて年間で何百件と起きているけど、ほとんどの人には関係がないように思えるんですから」


アレックス

「ところで、ジャックの犯行現場って見たことある?」


ベイリー

「いえ、写真だけです。心底、現場にいなくてよかったと思いましたよ。写真見ただけで吐きそうでしたもん……。アレックスは現場、行きました?」


アレックス

「行ったよ。一件目の時は、首から上のない遺体が自分の頭を抱えていて、その頭はカボチャのように中がくり抜かれて、まるでジャックオランタンのように、光っていた。

 二件目は腹の部分がランタンになってて……。カボチャのランタンで言うところの目と口に当たるところだけご丁寧に肉が()がれて中から光が()れるように…」


ベイリー

「んぐぅ……。ちょっとまって。思い出して昼のサンドイッチが逆流してきそう……」


アレックス

「今からそんなんで、現場に踏み込めます?」


ベイリー

「被害者がこの状態になる前に、ちゃんと助けられるタイミングで踏み込めば問題なし!」


アレックス

「あ! ここ、リストアップされてる場所ですね」


ベイリー

「よし、気をつけて、一度確認しよう」

 

 



アレックス

「──……まあ、そんなに簡単に当たりってわけにはいきませんよね」


ベイリー

「ハズレのほうが多いだろうことは覚悟の上だよ。今までのジャックの傾向から“現場になりそう”で予測してるだけなんだし。次、行きましょうか」



※※※



アレックス

何箇所目(なんかしょめ)かですけど……、ここは、どうですか?」


ベイリー

「……もしかしたら……今までで一番怪しいかもしれない」


アレックス

「怪しい、というと?」


ベイリー

「今までのところはただ、“犯罪に使えそうな場所”という感じだったけれど……。ここは、なんだか“ハロウィンっぽさ”がある」


アレックス

「なるほど……。 誰か人は……いなさそうですね」


ベイリー

「隠れているかもしれないから、注意を(おこた)らないで」


アレックス

「一応、鍵、かけときますね」


ベイリー

「見れば見るほど、確信が持てる。怪しい雰囲気に飾り付けられた室内。遺体の損壊(そんかい)に使うであろう道具も部屋の(すみ)(そろ)ってる。

 高輝度(こうきど)のライトも……これで人間ジャックオランタンを作るってわけか? 気持ちの悪い……」


アレックス

「それで、この場所が当たりだったとして、どうするつもりです?」


ベイリー

「指示書には何て書いてあったかな?」


アレックス

「確認しますね。えっ……と……。全ての通信機器は切って、武器と一緒にひとまとめに」


ベイリー

「え? 本当に?」


アレックス

「ほら、書いてますよ。じゃあ、私のぶんは、ここに置いときますね。ほらベイリーも」


ベイリー

「ああ……うん。 ──それで?」


アレックス

「はい、これ、持ってください」


ベイリー

「へ? クラッカー?」


アレックス

「はい、(ひも)引っ張って! せーの! ハッピーハロウィーン!!」



ベイリー

「ははははは!! びっくりした! なにかと思った! なんだ、そういうこと?

 イタズラに手間かけすぎですよ。勤務中になにやってるんですか!」


アレックス

「ははははは! ようこそ! ベイリー! パーティ会場へ! 楽しいのはこれからだよ!」


ベイリー

「ん……あれ? アレックス……?」


アレックス

「ささ、動けるうちにここに座って! 電気椅子モチーフにしたんだけど、どうかな?」


ベイリー

「身体、うまく動かないんだけど……」


アレックス

「ようやく効いてきましたね。お菓子の魔法」


ベイリー

「いったい、これは……え? え?」


アレックス

「もう、ここまできたらわかるでしょう?」


ベイリー

「まさか……まさか……アレックス、君が……」


アレックス

「大丈夫ですよ、ちょっとしか痛くはしませんから。あ、あ、でも、意識はちゃんとありますから安心してくださいね! ちゃんと一緒に、ランタンになる過程を楽しめますから!

 なので、もうすこし“魔法をかけます”ね! ちょっとちくっとしますよ!」


ベイリー

「待って! なんで⁉︎ 本当に? 本当に君が“ハロウィンの悪魔”だったの?」


アレックス

「そう呼ぶ人は多いみたいですねぇ」


ベイリー

「やだ、やだやだやだやだ! やめて!

 お願いだから、お願いだから、どうか、助けてよ!

 なんで、なんで、なんで!? だって、いままでずっと、ずっと同僚(どうりょう)で……! どうして、私にこんなことを……!」


アレックス

「トリックオアトリート。

 こう問いかけた時、あなたはお菓子をくれなかったじゃないですか。

 さあ、トリートの時間です」




END


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― 新着の感想 ―
 くりぬき被害の惨状を何度も思い出して吐き気などに苦しまないよう、仮装観賞や決まり文句を通して極力明るく振る舞おうとしてるのかと思いきや、まさかのラスト……。  電気椅子モチーフ語りや魔法云々すら朗ら…
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