願い
*???*
少女はなんて事のない地方都市の夜景を、空虚な目で見下ろしていた。
この短い間に、人類は灯を手に入れて、それを自由自在に使いこなすようになった。
暗闇を切り裂くようにして、細く長い光が、大きな音を立てて進んでいく。
電車だ。
この街で一番明るく見える場所にそれは止まった。
少女の瞳には見えないが、大勢の人が一日の疲れを吐き出すようにホームに降りて、それぞれの帰路に着くのだろう。
そして向かうのは、やはり、この街のどこかの灯の下だ。
この灯のあちこちに、儚い命がある。
少女はそれを思い、特に何の感慨もなく目を伏せた。
どこか、汚いゴミを見るような瞳だった。
人間はいつも、死を忘れたように生を生きる。それを思い出すと、寝られないから。
だから、それを忘れて友を作り、恋をして、子を産む。
自らの子孫を、自ら死の沼に突き落としているとも知らずに。呑気に。
人は生まれた瞬間に死刑宣告をされている。
そう言い残したのは、どこの誰だったか……。
そこまで考えて、この思考の原因が、羨ましさからだと気づいて辞めた。
死を忘れるように生きる事と、無限の生にうんざりすること。
そのどちらがより孤独で醜悪かなんて、意味のない問いだ。少女はため息をつく。
「……何か、面白いことが起こるはず」
祈るように呟いて、少女はただ、暇つぶしを求めた。