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【暗殺者達の群像劇】F 不老不死の殺し方  作者: 愛良絵馬
第四章 終幕に至る細い道筋。
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逃げて

   *由奈由*


「驚いた、まるでフェニックスだな」

「早瀬さん! 逃げて!」


 ぼんやりとした意識の私に、二つの言葉がほぼ同時に飛び込んでくる。目の前には黒いローブの男。

 猛烈な恐怖が身体を駆け抜ける。

 私は、覚えていた。

 自分の体が燃えていく過程を。


「あ。あ。あ。あ」


 唇がうまく動かせない。そんな私を、面白い生物を見つけた子供のような目で男は見つめてくる。

 視界の端で、水無月さんが、背中から女の人を下ろすのが見えた。そのままこちらに駆けてくる。黒い粒子が集まって彼女の右手に集結していく。

 男に右手首を掴まれた。はずそうともがくが、びくともしない。そのまま体を持ち上げられた。


「ッ!」


 締め上げられた手首が悲鳴を上げる。人間一人分の体重を、こんなふうに持ち上げられるなんて、普通じゃない。

 苦痛に歪んだ視界の中で、水無月さんがシャベルを片手に、男と対峙するのが分かった。しかし炎に牽制され、近づけない。


「ヘェ。見つけたって言う話はガチだったんだなァ。普通に殺すのはそっちもいくつか試してるんだろ? 炎で焼くのもダメだとなると……ま、このまま引きわたしゃ良いだろ」

「……離して、ってお願いしても、完全に無駄よね」

「そりゃそうだろ、頭お花畑の性善説か?」


 対峙したまま、男と水無月さんが言葉を交わす。ギリギリと手首が痛む。引きちぎれそうな痛みだ。炎に焼かれた記憶と合わせて、狂いそうになる。歯を食いしばり、痛みに耐える。そして叫ぶ。


「逃げて!!」


 来なければ良かったとは思わなかった。

 だって、行くと決めた瞬間に、分かっていた痛みだったから。


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