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焼死
*由奈由*
その大きな黒い空洞のような瞳は、恐ろしく、身を震え上がらせるのに十分な威力があった。
ザクロくんに感じたのと同じ、いや、それ以上に、ヤバい気配。
間違いない。この男こそが、水無月さんとキリクさんが2人で退治しに行ったはずの危険な男。
そんな男と、水無月さんを取り囲むように、炎が燃え盛っている。
危ない。早くそこから逃げて欲しい。
そう思うが、彼女の背中には、ぐったりとして動かない女の人。
逃げ場の見えない状況に、一石を投じれるとしたら、私だ、とキリクさんは言った。
だから、震える手を握りしめて、拳にして、私は一歩を踏み出す。
「お前が?」
抑揚のない声が、男の口から漏れた。瞬間、水無月さんを取り囲んでいた炎が、吹き消された誕生日ケーキの蝋燭のように、フッと一斉に消えた。
次の瞬間、男が目の前にいた。
あまりに強靭なバネの脚力で、駆けてきたのだ。何が何だかわからないまま、私の体は炎に包まれる。
「〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
喉が焼けて、声が出ない。
熱い、熱い、熱い、熱い。皮膚が溶けていく感覚。嫌だ!!!!
ぷつん。




