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【暗殺者達の群像劇】F 不老不死の殺し方  作者: 愛良絵馬
第四章 終幕に至る細い道筋。
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少女

   *水花*


「いいの? 彼女、1人にしておいて」


 ホテルを出た瞬間、隣を歩くキリクが言った。


「一緒に行く方が危ないでしょ。……ていうか、都合よく物事を進めたいだけなのに、心配しているような言い方はずるいからね?」

「そんなことはない。ボクは純粋に、彼女を心配しているよ」

「はいはい」


 向かう先を示し合わせてはいないけれど、歩調は合う。おそらく、昨日とそう変わらない場所を犯行現場にするだろう、という予想があった。

 日はすっかり落ちていて、ひときわ明るい光を放つ駅からは、人が溢れていた。

 あの人たち一人一人に、それぞれの思考があり、人生がある。


 やろうと思えば、一瞬で消し去ってしまうことができるその生命を、あたしは、意識して愛しく感じてみた。

 あたしと同じように、いろいろなことを考え、悩み、努力し、そして今ここで歩いている。

 今からの鬼退治は、そんな一般の人たちを、その生活を、守ることにもつながるんだ。


「なんかさ、正義の味方になった気分だね」

「そう?」


 こんなやつに共感を求めるのは間違いだった。

 それからあたし達は歩きながら、適当な話をした。好きな食べ物、嫌いな食べ物、今まで受けた依頼、驚いたこと、最近始めた趣味。


 こんな時間をコイツと持ったのは初めてで、昔からの友人のような気さえしてくる……。我ながら、単純すぎるな。

 ふと、ザクロのことを考えた。


 今頃、あいつは何をしているだろう。あのホテルにいるとは、バレていないと思うけど。あたし達を探し回っているかな? ……いや、諦めて、面倒臭くなって、あたしに怒って、イライラしているに違いない。

 ストレス発散に、シタさんのところで呑んでいるかもな。


 全部終わったら、謝りに行かなきゃ。あたしが気づいたことを、大事にしたいと思ったことを、ザクロが大事にしなきゃいけない理屈はないのだから。

 殺人現場へと辿り着くと、昼間見た報道陣や警察官の姿はなかった。


 あたし達は遠巻きに黄色いテープを眺めて、何もいうことなく、どちらともなく、道をわかれた。

 手分けして探す方が効率的だし、敵が食いつくとしたら『少女』のあたしだ。

 あたしは1人、暗い夜道を歩き始める。


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