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【暗殺者達の群像劇】F 不老不死の殺し方  作者: 愛良絵馬
第四章 終幕に至る細い道筋。
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大丈夫

   *由奈由*


 近くなっていたと思っていた、水無月さんの声が、再び遠くに行った気がした。

 座っている椅子の感触が、急に座り心地の悪いものに感じる。


「髪の毛が戻らなかったことも、それを裏付けているような気がする。髪の毛は、死んだ細胞だから。それを作る臓器は闇粒子でも、それで作ったものは消えないっていうのは不思議だけど……。まあ、そもそも、生物を作ることが、初めての発見って感じだけど」


 ぱちぱちぱちと、下手くそな拍手の音。視線を向けると、グラスを持ったままのキリクさんが手を叩いていた。そんな彼を、水無月さんが鋭い視線で睨みつける。


「やっぱり、知ってたの?」

「知ってるとは言えないな。ボクだって確信の持ちようが無いんだから。だから、君がボクと同じ結論に至るのか、は気になっていた」

「なるほど」


 どこか呆れたように水無月さんが言った。


「あたしを確かめ算に使ったってわけね」

「あの」


 私は思わず2人の会話を遮った。青い目と闇色の黒い目が、それぞれ私を見つめてくる。


「あの。……私の体が、そのシャベルと同じように出来てるって……そんなこと、あり得ない……と、思うんだけど」


 私の言葉に、水無月さんはどこか困ったような顔を浮かべる。


「うん、そうだよね。普通に考えたらあり得ない。……けど、あたしは早瀬さんの腕の傷が、さっきみたいに、闇粒子が形成されて戻っていったところを見た」

「…………」

「あと、思い出したくない事かもしれないけれど……。ザクロは何か、言ってなかった?」


 ザクロくん。

 身体が震えた。ついさっき、私の部屋で起きた出来事。

 殺されたと言うその瞬間は覚えていない。けれどそれを何度も繰り返されれば、その前後を何度も見せられれば、嫌でもわかる。

 私は、やっぱり死んでいる。けど。


「……闇粒子、だとか、そんな話は……一度も」

「ほんとに? じゃあ気づいてないのかな……。……何か、少しでも覚えていることはない?」

「……えっと。ピッキングで鍵を開けた、とか。……切れた首が、ゴロンゴロンって転がって体に戻った、とか。……感動を分かち合いたい、とか」

「うわぁ、ザクロらしいというかなんといか」


 水無月さんは、呆れたような笑顔を見せる。それから、ハッとした顔をして、「首がゴロンゴロン?」と繰り返した。


「……すみません、みてないです」

「ややや、そりゃ見れるわけないよねっ!」


 わざとらしいくらい明るい声でそう言った。


「ありがと。話を戻すね。

 さっき言った通り、闇粒子は、使用者が一番しっくりくる形を取る。多分、早瀬さんにとっては、早瀬さんの身体こそが、一番しっくりとくるものだ……ってことなんだろうけど、訓練もせずに、闇粒子を凝縮させるのは簡単なことじゃないの。かなり強烈な、強い意志が必要かな。

 何か、大きなきっかけがあった。あたしはそれが、自動車事故だった……と、思っているんだけど」


 自動車事故。

 動揺は、あの時、カフェで感じたほどではなかった。一度同じように水無月さんから指摘されていたから、耐性ができたのかもしれない。


「…………」

「話しては、くれないかな?」


 下唇を薄く噛み、俯いた私の姿勢から、水無月さんは何かを汲み取ってくれたらしい。いいよ、というように、ゆるく首を振る。


「とりあえず、今の状況の説明はこんなところかな。あなたは、闇稼業の人間に狙われている。原因はその体が、不老不死であること。すぐに飲み込めっていうのは無理かもしれないけど……」


 どこか子供に言い聞かせるような口調だった。

 わかる? と問うような調子に、空元気で答える。


「……ううん、なんとか、大丈夫……」


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