スタバ
*由奈由*
おかしくなってしまった髪型が気になり続けたものの、無事に今日1日の授業が終わった。
放課後、すかさずやってきたなつきちゃんが、一緒に帰ろうと声をかけてくれる。
「う、うん」
立ち上がり、そろそろと教室を抜け出す。幸い無駄に絡んでくる気はないようで、山口さん達は教室の中心で談笑をしていた。
「とりあえず、美容院いく?」
「う、うん」
「よっし、じゃあ駅ビルだねっ!」
「き、昨日と同じところは……ちょっと……」
なつきちゃんは不思議そうな表情で、「そう?」と首を傾げた。しかし、いくら腕が良かったからといって、昨日の今日で、こんな髪型で、髪を切りに行けるわけがない。
「じゃあ何処に行く?」
「……いつものとこかな」
いつもの、おばあちゃんがやっている美容院。そこなら、おしゃれじゃないし、馴染みもある分、入りやすい。
「そっか、じゃあ案内してもらおう」
「え……? なつきちゃんも一緒に来るの」
「うん、行くよっ! 護衛だね!」
「護衛……?」
なんだその、不穏な単語は、と問いただそうとしてハッとする。そうだ。たしか、朝のニュースで近所で女子高生が殺されたという報道があった。
「ご、護衛って、なつきちゃんも気をつけなきゃでしょ?」
「え」
意外なことを言われた、という表情だった。
「だ、だって普通に、女子高生だし……。ほ、ほら、殺人事件、あったでしょ?」
むしろ、私よりも身長が低くて小柄だし、可愛いし……胸も大きいので気をつけたほうが良いと思う。
何が悲しくて、こんな散切り頭の分厚いメガネ女子を狙うんだ。
「普通に、女子高生……」
水無月さんは、なぜか私が言った言葉を、噛み締めるようにつぶやく。
そうしている彼女を見て、思い出した。昨日の、明らかに普通じゃない戦闘。
確かに彼女は、心配する事などないのかもしれない。
「うん。由奈由ちゃん、とりあえず、髪の毛整え終わったら、時間もらえる?」
「良いけど……なにかな?」
「うー……ん、今は混乱させたくないし、秘密かな。あ、カフェ行こうよカフェ。行ってみたかったんだ」
「は、はあ……。行ってみたいカフェって、何処?」
「え? どこでも良いけど。行ったことないから……。あ! あの、なんとかフラペチーノ? みたいなの飲んでみたい!」
そこから、どんなものを飲むか、どんなものを食べるか、ネットで調べつつ話していたら、あっという間にいつもの美容院についた。
私の髪をみて、目を丸くするおばあちゃんにオーダーをして、席に着く。この店でここまで短くカットをしたことはないから不安だったが、出来上がった髪型は案の定、どこか昭和の匂いを感じさせる丸っとしたショートカットだった。
というか……完全におかっぱ頭である。
どうですか? と尋ねてくるおばあちゃんに、い、良い感じです……と曖昧に答える。お会計を払って、椅子に腰掛けていたなつきちゃんと共に外に出た。
昨日髪を切った後は、自分が自分じゃないようで、どこか浮かれた気分だった。しかし、今日は憂鬱だ……。髪が伸びるまで、しばらくこのまま過ごさなければならない……んだよね。
なつきちゃんは髪の毛のことには何も触れずに、カフェに向かうべく、駅ビルの方へと歩き出した。
……まあ、朝の散切り状態や、ゴムで止めただけの状態よりはましなので、それで納得するしかない。
昨日も訪れた駅ビルの、地下一階へと向かう。ここにカフェがあることは知っていたが、私も来るのは初めてだった。夕方の時間帯は盛況らしく、私たちと同じく学生達の姿もあった。
2人とも、季節限定のメロンフラペチーノを注文し、混雑をかき分けて席に着いた。
「いただきますっ」
ストローを一口含んだなつきちゃんは、目を丸くする。
「お、美味しい……っ!」
どうやらお気に召したようで、瞳を輝かせながらぐいぐいと飲んでいく。私も一口。少し甘すぎる気がしたが、しっかりメロンの味がして、美味しかった。




