表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【暗殺者達の群像劇】F 不老不死の殺し方  作者: 愛良絵馬
第二章 ホラーストーリーは突然に。
23/62

判断

   *由奈由*


 2人の姿が完全に見えなくなっても、ザクロくんは走り続けた。

 息を切らし始めた彼が、ゆっくりとスピードを落としていく。自慢じゃないが、私の体重はそれなりに重い。そんな私を抱えて小柄な彼がここまで走れたと言うのは驚異的だ。

 そんな、無尽蔵かと思えた力とスタミナが、落ちていく。

「いたた!」

 ドサッと、唐突に降ろされた。片手でアスファルトを押しながら、立ち上がる。荷物をおろすように雑だった。痛む腰をさする。

「まー、ここまで来ればひとまず安心だろ!」

 街灯が辺りをかすかに照らしている。アパートのような住宅が連なっている。人気はない。

「ぅん……」

 まだ状況が理解できないまま、相槌を打つ。しかし、キリクさんに刃を向けられていたことは事実だし、危険だったというのは間違いない。

「それで……いったい、さっきのはどういうこと……なのかな」

「え? あー……うーん」

 ザクロくんは頭を抱え、腕を組み、頬に手を当てる。やがて、ガリガリと大きな動作で頭を掻いた。

「あーーーー! わっかんねぇ。どこまで話していいんだ? ってか」

 不意に動作を止めたザクロくんの瞳が、私の瞳を捉える。すかさず視線を逸らしたが、深い闇を抱えたような黒い瞳が、脳裏に残る。


「…………え」


 呟きが漏れ出る。視界の端であり得ない事が起きたから。慌てて視線を向ける。

 ザクロくんの右手の周辺で、黒い粒子が蠢いていた。明確な意志をもった一つの生き物のように。

「もしかしたら……そうだよな? キリクの野郎のことだから。あー畜生! あいつら戦闘力じゃほぼ互角なんだよなぁ……。自分で判断するしかねぇか……」

 やがてそれは、一本の、日本刀という形を形成した。

「え……と」

 理解が追いつかないのは同じ。

 けれど、先ほどまであった緊張感が、咄嗟に『逃げろ』と命令する。

 背を向けて、駆け出す。

「悪いな早瀬」

 なのに、すぐ耳元で声がして。


 ぷつん、と私の意識は消失した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ