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【暗殺者達の群像劇】F 不老不死の殺し方  作者: 愛良絵馬
第二章 ホラーストーリーは突然に。
22/62

戦闘

   *水花*


 かぁん、かぁんと、金属音が鳴り響く。一手でも受け間違えれば、大鎌はあっさりとこの身を引き裂いていくだろう。


「あはっ」


 思わずこぼれた笑みを、かき消すように固く唇を結ぶ。笑っちゃだめだ、楽しんじゃだめだ。そう思うのに、目の前で実に楽しそうに、笑いながら獲物を振るうキリクに、つい、つられてしまった。

 そんなあたしの葛藤を知ってか知らずか、底意地の悪い表情でキリクは笑い続ける。


「高校で君を見つけた時は驚いたけれど……、特に変わっていなさそうで安心したよ、水花」

「……」


 返事はうまく返せなかった。あたしは変わった。変わったはずだ。そう思うのに、言葉にすることに躊躇いが生まれた。


「一応聞くけど、なんで早瀬さんを襲っていたの?」


 代わりに口をついたのは、そんな疑問だった。答えを求めていたわけじゃない。相手の刃をかわし、こちらの刃を突きつける。そのゲームの一部としての、軽口にもならない会話。


「なんで、か」


 そのはずだったのに、返ってきたセリフには、どこか失望のような色が見えていた。

 もしかしたら、自分はとんでもない思い違いをしていたのかもしれない。

 そんな嫌な予感が、脳内でスパークする。


 あたしは、キリクも、名前を知らないヤバい奴と同じように行動しているのだ、と思っていた。どころか、先ほど見かけた河原の現場も、キリクがやった可能性もあるとすら推測していた。

 しかしそれは、どちらも大間違いだったのかもしれない。

 だとしたら……?

 いや、それならそもそもどうして? どうやって?


「っ!」


 肩先に鋭い痛みが走る。そうだ。この相手は、考え事をしている余裕なんてまるでない。

 バックステップで距離を取る。

 相手が距離を詰めようとする動きを読んで、空中で園芸用の小さなシャベルを生成し、投げナイフのような要領で、目と脚を目掛けて投げる。

 狙い通りの軌道を描いた投擲は、刃と柄でそれぞれ器用に弾かれて終わった。しかし、今のは当てるのではなく、距離をとり、仕切り直すのが目的だ。


「余計なことを考えるのは、後!」


 大きなショベルを両手で構えて、あたしは改めて、素早く間合いを詰めていく。


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